[認定P-26] 経口摂取困難であった高齢患者に対し多職種連携のチームによる診療が有効であった症例
【緒言・目的】 高齢期の口腔機能は栄養状態やQOLと密接に関わっており,口腔機能低下に対する適切なリハビリテーションの確立は重要であり,多職種との情報共有や連携が必要である。われわれは,腎移植後、肺炎を契機とした敗血症と診断され経口摂取困難であった高齢入院患者に対し歯科的介入として口腔ケアや口腔機能訓練に取り組み,摂食嚥下機能の改善を目的とした治療を行い改善した一例を経験したので報告する。 【症例および経過】 75歳,男性。耳鼻咽喉科より口腔機能評価及び口腔衛生管理依頼により歯科介入が開始された。医師,歯科医師,看護士,歯科衛生士,言語聴覚士(ST)による多職種連携のチームで摂食嚥下機能の改善を目的とした治療を行った。歯科介入前のVEでは挙上期型誤嚥が見られ,口腔機能精密検査では舌圧検査の数値が4.2kPaと低値であり意識レベルも低下していたため経口摂取は困難と診断された。口腔内の清掃状態は不良,上下顎に部分的欠損があり義歯はあるが使用していない状態であった。 耳鼻咽喉科医師,STと相談し口腔内清掃,口腔機能訓練を歯科衛生士と訪室し行った。口腔機能訓練は口腔期の改善を目的として特に舌可動性訓練に重点を置き指導を行った。介入後のVE施行では誤嚥を認めず,意識レベルも改善を認めたため,経口摂取を開始した。また義歯を調整し摂食嚥下リハおよび構音訓練の支援を行った。入院後3週間目の口腔機能精密検査では8.4kPaと数値の改善を認めた。 なお、本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。 【考察】 本症例は経口摂取困難であった高齢患者に対し多職種連携の摂食嚥下専門のチームが摂食嚥下機能改善という共通の目的を持ち,患者に働きかけることができたことが,口腔機能管理と包括的ケアの遂行を可能にし,結果的に患者の摂食嚥下機能の改善,QOLの向上に結びつけることができたと考える。また口腔ケアや口腔機能訓練,義歯の調整など歯科の介入は誤嚥性肺炎などの感染予防,口腔機能障害の改善に寄与することは明らかであり,本症例においても最適な口腔環境のもとで適切なリハを行うことの重要性を示唆している。今後の高齢者歯科医療においても全身フレイルや寝たきり状態の前段階であるオーラルフレイルの状態を防ぐための適切な歯科的対応が患者のQOLの維持,改善に貢献できると考察する。 COI開示:なし 倫理審査対象外