一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター5

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-27] 廃用症候群が進行し口腔機能低下症と摂食嚥下障害を伴う高齢者に対し多職種連携治療で機能回復を行った症例

○小林 琢也1、古屋 純一2 (1. 岩手医科大学歯学部補綴・インプラント学講座摂食嚥下・口腔リハビリテーション学分野、2. 昭和大学歯学部口腔健康管理学講座口腔機能管理学部門)

【緒言・目的】
 高齢者は廃用が生じやすく,フレイルの進行を食い止めるには様々な観点からの介入が必要となる。今回,廃用症候群の進行により,口腔機能低下を伴う摂食嚥下障害が惹起されて低栄養状態となった高齢者に,家族を含めた多職種連携医療とケアによって摂食嚥下機能の回復を行い,低栄養とADLを改善した症例を報告する。
【症例および経過】
 90歳の男性。廃用症候群の既往あり。2022年2月に医科より口腔機能回復の依頼があり当科外来を受診した。2018年より医科で廃用症候群に対する治療が開始され,嚥下機能評価(兵藤スコア9点)がされていたが積極的治療は行われていなかった。初診時の診察から摂食嚥下障害と口腔機能低下症を認めた。食形態は全粥刻み食で,ADLはC1程度であった。口腔内は上顎無歯顎,下顎は臼歯部喪失の両側遊離端欠損で義歯の使用はなかった。当科では咀嚼・嚥下機能低下に対して義歯を製作し,準備期,口腔期,咽頭期の間接訓練を実施した。しかし,歯科的介入のみでは十分な効果が得られず,主治医に多職種の関わりの必要性を提案し,歯科では口腔・摂食嚥下機能の回復,理学療法士と作業療法士は全身機能の回復,管理栄養士は患者と家族への栄養指導,医師は全身管理と役割を設定し,家族を含めた多職種連携医療によるアプローチを行った。その結果,2022年6月には口腔と嚥下および全身機能の回復を認め,食形態も全粥一口大食に改善することができ,体重も増加し,ADLもB1程度には改善できた。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 患者が使用しなかった義歯は,口腔機能が低下した状態に咬合高径をやや高く設定したことで咀嚼障害と送り込み障害が生じたと考えられた。新製した義歯は,嚥下法と最大咬合力法を用いて患者の機能に合わせた咬合高径を設定し装着し,機能訓練も行ったが治療効果が得られないことから,主治医に多職種連携治療をお願いした。その結果,連携治療を開始してからは,患者の全身機能回復に関することのみではなく介護で疲弊した家族の課題に関する対策も多職種から多面的に提案がなされ,患者・家族中心の効果的なケアが実現できた。他職種が専門とする領域への治療提案はハードルが高く感じるが,これからは歯科医師の視点を積極的に多職種に伝え,連携医療に参加する必要性があると感じた。
(COI開示:なし)