一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター7

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-37] COVID-19感染症の外出自粛規制により口腔機能低下症に陥った前期高齢者に対して, 義歯新製および口腔機能訓練により口腔機能向上を認めた症例

○外山 理沙1、柏﨑 晴彦2 (1. 九州大学病院 口腔総合診療科、2. 九州大学病院 高齢者歯科・全身管理歯科)

【緒言・目的】
 高齢者のフレイル予防には地域活動に参画し,健全な口腔機能を保つことが重要である。しかし,COVID-19により長期的に通院していた高齢患者の歯科受診が途絶えたケースは少なくない。今回,義歯不適合を主訴に再来院した高齢者に対し,口腔機能低下症やフレイルのリスクを認め,義歯新製および口腔機能訓練を継続的に行うことで口腔機能改善が得られ,QOLが飛躍的に向上した症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 69歳,女性。既往歴:高血圧
 2010年~2019年まで当科を定期的に受診しており,受診が途絶えるまでの数年間は3か月メインテナンスで通院されていた。2019年より自宅での転倒を繰り返されたこととCOVID-19の影響により受診が途絶えた。2022年4月, 義歯が緩く疼痛もあり食事が取りにくいことを主訴に当科再初診。 初診時の口腔内所見として,上顎顎堤粘膜に褥瘡性潰瘍,下顎部分床義歯クラスプの緩みを認めた。さらに,咀嚼能力を「内田らの摂食状況調査表」にて評価したところ,食品摂取可能率は85%だったが,口腔機能検査を行ったところ5項目が該当し口腔機能低下症を認めた。上顎顎堤の吸収が著しく,咬合平面の不整,咬耗による咬合高径の低下を認めたためフレンジテクニック応用と咬合平面,咬合高径を考慮した義歯新製を行った。また,並行して歯周基本治療,口腔機能訓練,一日2回の全身の筋力トレーニングを行った。新義歯装着から約3か月後に口腔機能検査の再評価行った結果,各項目において数値改善が認められた。また, QOL質問評価表を行ったところ,「機能的な問題」「痛み」で改善を認め,さらに「転倒がなくなり外出時の不安もなくなった」と患者より発言があった。 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】  
 外出自粛制限でフレイルが進行した高齢者が多いことは社会問題になっている。今回,長期間継続通院の患者が,COVID-19や全身的な問題で通院が途絶えたことにより,口腔機能低下を認めた。義歯新製によって口腔機能が回復したことにより,食事に対する意欲が向上しQOL向上がみられた症例であった。また,筋力トレーニングが全身機能維持のモチベーション向上にも繋がったと考える。今後はフレイル予防にも努めていく。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)