[摂食審査P-6] 摂食嚥下障害を認める下顎癌術後患者に対し、多職種連携による摂食嚥下訓練を行うことによりスムーズに食形態の改善ができた一症例
【緒言・目的】
摂食嚥下障害を認める下顎歯肉癌術後患者に対し、多職種連携をとり嚥下訓練を行うことで、スムーズに入院から外来診療への移行が可能となり、食形態が改善した 1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
85 歳,男性。既往歴は遠位弓部大動脈瘤,Ⅱ型糖尿病,高血圧症、脳梗塞、膀胱癌であった。令和 3 年 7 月に右側下顎臼歯部に違和感を認め、近医の耳鼻科受診。下顎歯肉癌を疑われ、同年 10 月本学頭頸部腫瘍センターを紹介受診。下顎歯肉癌の診断の下、右側下顎区域切除術のみが施行された。術前より口腔衛生管理、嚥下訓練依頼で当科受診。術前の VE 検査では、遠位弓部大動脈瘤圧迫による左声帯麻痺、左食道入口部通過障害を認めた。術後嚥下障害を考慮し、術前から喀出訓練、代償姿勢として体幹右傾斜頸部左回旋の指導を行った。術前の体重は 53 ㎏であった。口腔内は無歯顎で、術後は義歯も装着困難なため、入院中の経口摂取目標をゼリー食とした。訓練計画は医師、歯科医師、言語聴覚士(以下 ST)が協議して立案し、評価は医師、歯科医師、ST が行い、訓練は歯科医師、ST が実施した。術後の口腔機能は、瘢痕拘縮による舌運動障害を認めた。術後 12 日目の VE 検査および術後 21 日目の VF 検査で送り込み障害、遠位弓部大動脈瘤の圧迫による左声帯麻痺、術後の感覚閾値上昇による不顕性誤嚥、左食道入口部通過障害、咽頭貯留を認め、経口摂取困難と判断し、術後 31 日目に胃瘻が造設された。嚥下訓練は、唾液嚥下訓練、喀出訓練、代償姿勢を再度指導し、ゼリーを用いた直接訓練を行った。術後 43 日目、嚥下後の湿性嗄声も改善され、ゼリー食を開始した。術後 49 日目に退院。退院後は、歯科医師が嚥下機能を評価し、適宜訓練内容を変更した。術後 5 か月、徐々に舌運動障害の改善や代償姿勢の習得が十分となり、食形態はペースト食とした。術後 9 か月で全粥軟菜刻み食まで改善した。栄養状態も改善し、術後 47kg まで低下した体重は、術後6か月で術前と同程度の 53kg に回復した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
術前からの多職種での情報共有により、入院から外来まで効果的な嚥下訓練が可能となり、スムーズに食形態の改善ができた。多職種での多角的なアプローチは、指導内容の深い理解にも有効であったと考えられる。
(倫理審査対象外)
(COI 開示:なし)
摂食嚥下障害を認める下顎歯肉癌術後患者に対し、多職種連携をとり嚥下訓練を行うことで、スムーズに入院から外来診療への移行が可能となり、食形態が改善した 1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
85 歳,男性。既往歴は遠位弓部大動脈瘤,Ⅱ型糖尿病,高血圧症、脳梗塞、膀胱癌であった。令和 3 年 7 月に右側下顎臼歯部に違和感を認め、近医の耳鼻科受診。下顎歯肉癌を疑われ、同年 10 月本学頭頸部腫瘍センターを紹介受診。下顎歯肉癌の診断の下、右側下顎区域切除術のみが施行された。術前より口腔衛生管理、嚥下訓練依頼で当科受診。術前の VE 検査では、遠位弓部大動脈瘤圧迫による左声帯麻痺、左食道入口部通過障害を認めた。術後嚥下障害を考慮し、術前から喀出訓練、代償姿勢として体幹右傾斜頸部左回旋の指導を行った。術前の体重は 53 ㎏であった。口腔内は無歯顎で、術後は義歯も装着困難なため、入院中の経口摂取目標をゼリー食とした。訓練計画は医師、歯科医師、言語聴覚士(以下 ST)が協議して立案し、評価は医師、歯科医師、ST が行い、訓練は歯科医師、ST が実施した。術後の口腔機能は、瘢痕拘縮による舌運動障害を認めた。術後 12 日目の VE 検査および術後 21 日目の VF 検査で送り込み障害、遠位弓部大動脈瘤の圧迫による左声帯麻痺、術後の感覚閾値上昇による不顕性誤嚥、左食道入口部通過障害、咽頭貯留を認め、経口摂取困難と判断し、術後 31 日目に胃瘻が造設された。嚥下訓練は、唾液嚥下訓練、喀出訓練、代償姿勢を再度指導し、ゼリーを用いた直接訓練を行った。術後 43 日目、嚥下後の湿性嗄声も改善され、ゼリー食を開始した。術後 49 日目に退院。退院後は、歯科医師が嚥下機能を評価し、適宜訓練内容を変更した。術後 5 か月、徐々に舌運動障害の改善や代償姿勢の習得が十分となり、食形態はペースト食とした。術後 9 か月で全粥軟菜刻み食まで改善した。栄養状態も改善し、術後 47kg まで低下した体重は、術後6か月で術前と同程度の 53kg に回復した。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
術前からの多職種での情報共有により、入院から外来まで効果的な嚥下訓練が可能となり、スムーズに食形態の改善ができた。多職種での多角的なアプローチは、指導内容の深い理解にも有効であったと考えられる。
(倫理審査対象外)
(COI 開示:なし)