[P27] 喉頭全摘出後の咽頭停滞感を解決する一法
~口腔機能低下へのアプローチ~
【諸言・目的】
喉頭全摘適応患者は,術後誤嚥のリスクがないことから,摂食嚥下リハビリテーション(リハ)を行わず経過することが多い。一方,術後に「固形物が喉に詰まりやすい」と訴える患者は多い(渡邉ら,日がん看会誌,2021)。その原因として下咽頭腔の閉創が考えられ,咽頭の停滞感が食欲低下やサルコペニア,さらには低栄養に繋がるとされる。そこで我々は,下咽頭の食物停滞を解決する一法として口腔機能に注目した。喉頭全摘患者の術前後の口腔機能を計測し,術前から口腔機能訓練を行うことで咽頭停滞感を改善し3食常食摂取可能となった症例を報告する。
【症例および経過】
71歳男性。既往歴:脳梗塞,肺化膿症,糖尿病。現病歴:2022年10月に呼吸苦の訴えより入院。声門上癌T4aN1M0 stageⅣaと診断され,同年11月に喉頭全摘出術,右頸部郭清術を受けた。術前の口腔機能検査では,口腔清掃状態不良(TCI:67%),咀嚼機能低下(グルコセンサー:87mg/dl),嚥下機能低下(EAT-10:21点)などの5項目が該当し,口腔カンジダ症も認めた。術前より,口腔衛生管理,口腔機能訓練,口腔カンジダ症への対応を行った。術後の口腔機能検査では,術前と同様5項目が不良や低下に該当し,口腔乾燥がより低値を示した(ムーカス:26.1→15.3)。嚥下造影検査では,米飯にて下咽頭~食道停滞・逆流を認め,本人の停滞感もみられた。第41病日に五分粥,軟菜食,水分とろみなしより経口摂取開始,口腔機能訓練を実施した。第51病日の口腔機能検査では,2項目が不良や低下に該当し,口腔清掃状態(TCI:0%),咀嚼機能(グルコセンサー:109mg/dl),嚥下機能(EAT-10:2点)は改善を認めた。摂取状況を確認し食形態を段階的に上げていき,咽頭停滞感の軽減とともに,3食常食摂取可能となり第65病日に退院となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では術前から介入し,術後に下咽頭~食道停滞・逆流と口腔機能低下を認めたが,経時的に評価,訓練することで3食常食摂取まで回復した。過去の報告から,今後も下咽頭~食道停滞および停滞感が出現する可能性は高いため,常食摂取を継続するには,定期的な評価と口腔機能の維持・向上が必要と考える。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)
喉頭全摘適応患者は,術後誤嚥のリスクがないことから,摂食嚥下リハビリテーション(リハ)を行わず経過することが多い。一方,術後に「固形物が喉に詰まりやすい」と訴える患者は多い(渡邉ら,日がん看会誌,2021)。その原因として下咽頭腔の閉創が考えられ,咽頭の停滞感が食欲低下やサルコペニア,さらには低栄養に繋がるとされる。そこで我々は,下咽頭の食物停滞を解決する一法として口腔機能に注目した。喉頭全摘患者の術前後の口腔機能を計測し,術前から口腔機能訓練を行うことで咽頭停滞感を改善し3食常食摂取可能となった症例を報告する。
【症例および経過】
71歳男性。既往歴:脳梗塞,肺化膿症,糖尿病。現病歴:2022年10月に呼吸苦の訴えより入院。声門上癌T4aN1M0 stageⅣaと診断され,同年11月に喉頭全摘出術,右頸部郭清術を受けた。術前の口腔機能検査では,口腔清掃状態不良(TCI:67%),咀嚼機能低下(グルコセンサー:87mg/dl),嚥下機能低下(EAT-10:21点)などの5項目が該当し,口腔カンジダ症も認めた。術前より,口腔衛生管理,口腔機能訓練,口腔カンジダ症への対応を行った。術後の口腔機能検査では,術前と同様5項目が不良や低下に該当し,口腔乾燥がより低値を示した(ムーカス:26.1→15.3)。嚥下造影検査では,米飯にて下咽頭~食道停滞・逆流を認め,本人の停滞感もみられた。第41病日に五分粥,軟菜食,水分とろみなしより経口摂取開始,口腔機能訓練を実施した。第51病日の口腔機能検査では,2項目が不良や低下に該当し,口腔清掃状態(TCI:0%),咀嚼機能(グルコセンサー:109mg/dl),嚥下機能(EAT-10:2点)は改善を認めた。摂取状況を確認し食形態を段階的に上げていき,咽頭停滞感の軽減とともに,3食常食摂取可能となり第65病日に退院となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では術前から介入し,術後に下咽頭~食道停滞・逆流と口腔機能低下を認めたが,経時的に評価,訓練することで3食常食摂取まで回復した。過去の報告から,今後も下咽頭~食道停滞および停滞感が出現する可能性は高いため,常食摂取を継続するには,定期的な評価と口腔機能の維持・向上が必要と考える。 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)