[SY13-1] ALS患者に対する歯科の取り組み
【略歴】
1997年3月 九州大学歯学部歯学科 卒業
1997年4月 九州大学歯学部歯科補綴学第二講座 入局
1999年4月 福岡大学医学部歯科口腔外科学講座 助手
2007年4月 福岡大学医学部歯科口腔外科学講座 講師
2019年1月 福岡大学病院摂食嚥下センター センター長
2019年4月 福岡大学病院歯科口腔外科 准教授(兼務)
1997年3月 九州大学歯学部歯学科 卒業
1997年4月 九州大学歯学部歯科補綴学第二講座 入局
1999年4月 福岡大学医学部歯科口腔外科学講座 助手
2007年4月 福岡大学医学部歯科口腔外科学講座 講師
2019年1月 福岡大学病院摂食嚥下センター センター長
2019年4月 福岡大学病院歯科口腔外科 准教授(兼務)
【抄録(Abstract)】
神経変性疾患は長期的な管理を行うにあたり、確定診断と外来通院、在宅療養とレスパイト入院、施設や入院下での長期療養と各時期に応じた治療や処置を行う環境を専門医療機関で調整する必要がある。近年ではエンドオブライフを含めた在宅医療が重要視されているが、在宅医療を支えるための環境は十分に整っていないのが現状である。演者らは、神経変性疾患患者の摂食嚥下に関するサポートを、通院可能期間は福大病院で、長期療養期間はNHO大牟田病院で行ってきた。
2020年4月~2023年3月にかけての3年間に福大病院で評価を行った筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者は41名(年齢69.7±10.5、男女比18:23)であった。経過観察中の最終BMIは19.3±3.3、体重減少率は7.9±8.9%、10%を超える体重減少を示した患者は41名中12名(29.3%)であった。最終評価時の舌圧は18.9±13.3 kPaであり、10 kPa未満の患者は29名中14名(34.1%)、嚥下調整食または経管栄養管理となったものは41名中16名(39.0%)であった。予後に大きな影響を及ぼす体重管理へのサポート体制には課題を残している。
神経筋疾患患者の嚥下障害には、舌機能が大きな影響を及ぼす。神経筋疾患患者の多くは進行過程で舌圧が低下するが、デシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のように舌が肥大する疾患もある一方で、ALSは舌萎縮の進行が経口摂取の継続困難に直結する。
演者らは、ALS、DMD、筋強直性ジストロフィー(DM1)の3疾患の舌圧と超音波エコーを用いた舌厚みの経時的変化を比較した。DMD群は脂肪組織の増加によって舌が肥大するため、舌厚みは舌圧に関連しないが、ALS群は舌厚み低下に伴って舌圧が低下し(R=0.476、p<0.01)、舌萎縮が舌筋力低下に影響することが裏付けられた。経時的には、DM1群とDMD群に変化は認められなかったが、ALS群は舌厚み(p<0.05)、舌圧(p<0.01)ともに低下し、急速な舌萎縮と舌圧低下が示唆された。また、ALSの四肢麻痺群は球麻痺群よりも舌圧低下幅は大きく、観察期間前に球麻痺群は既に舌機能低下が進んでいた可能性が考えられた。
神経変性疾患患者、特にALS患者の病状進行を把握し、体重維持と栄養管理を行うためには、適切な時期に経口摂取の継続可否と経管栄養の導入を判断する必要がある。嚥下機能に加え、舌機能の客観的評価はその重要な判断材料となると考えられる。
神経変性疾患は長期的な管理を行うにあたり、確定診断と外来通院、在宅療養とレスパイト入院、施設や入院下での長期療養と各時期に応じた治療や処置を行う環境を専門医療機関で調整する必要がある。近年ではエンドオブライフを含めた在宅医療が重要視されているが、在宅医療を支えるための環境は十分に整っていないのが現状である。演者らは、神経変性疾患患者の摂食嚥下に関するサポートを、通院可能期間は福大病院で、長期療養期間はNHO大牟田病院で行ってきた。
2020年4月~2023年3月にかけての3年間に福大病院で評価を行った筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者は41名(年齢69.7±10.5、男女比18:23)であった。経過観察中の最終BMIは19.3±3.3、体重減少率は7.9±8.9%、10%を超える体重減少を示した患者は41名中12名(29.3%)であった。最終評価時の舌圧は18.9±13.3 kPaであり、10 kPa未満の患者は29名中14名(34.1%)、嚥下調整食または経管栄養管理となったものは41名中16名(39.0%)であった。予後に大きな影響を及ぼす体重管理へのサポート体制には課題を残している。
神経筋疾患患者の嚥下障害には、舌機能が大きな影響を及ぼす。神経筋疾患患者の多くは進行過程で舌圧が低下するが、デシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のように舌が肥大する疾患もある一方で、ALSは舌萎縮の進行が経口摂取の継続困難に直結する。
演者らは、ALS、DMD、筋強直性ジストロフィー(DM1)の3疾患の舌圧と超音波エコーを用いた舌厚みの経時的変化を比較した。DMD群は脂肪組織の増加によって舌が肥大するため、舌厚みは舌圧に関連しないが、ALS群は舌厚み低下に伴って舌圧が低下し(R=0.476、p<0.01)、舌萎縮が舌筋力低下に影響することが裏付けられた。経時的には、DM1群とDMD群に変化は認められなかったが、ALS群は舌厚み(p<0.05)、舌圧(p<0.01)ともに低下し、急速な舌萎縮と舌圧低下が示唆された。また、ALSの四肢麻痺群は球麻痺群よりも舌圧低下幅は大きく、観察期間前に球麻痺群は既に舌機能低下が進んでいた可能性が考えられた。
神経変性疾患患者、特にALS患者の病状進行を把握し、体重維持と栄養管理を行うためには、適切な時期に経口摂取の継続可否と経管栄養の導入を判断する必要がある。嚥下機能に加え、舌機能の客観的評価はその重要な判断材料となると考えられる。