[SY13-2] 在宅療養中の筋萎縮性側索硬化症患者に対する歯科としての関わり
【略歴】
猪原光 (工学士・歯科医師・歯学博士)
2000年 東京都立大学 工学部 応用化学科卒業
2005年 東京医科歯科大学 歯学部 学士編入学・同卒業
2009年 東京医科歯科大学大学院 高齢者歯科学分野修了 博士(歯学)
国立感染症研究所細菌第一部 研究員
2010年 カナダ ミザリコーディア病院 摂食嚥下リハビリテーション分野 留学
2011年 猪原歯科・リハビリテーション科 訪問診療部部長
現在 グロービス経営大学院 MBA在籍中
(現職)
日本老年歯科医学会 在宅歯科医療検討委員会 委員
東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科 非常勤講師
九州歯科大学歯学部 口腔保健学科 非常勤講師
猪原光 (工学士・歯科医師・歯学博士)
2000年 東京都立大学 工学部 応用化学科卒業
2005年 東京医科歯科大学 歯学部 学士編入学・同卒業
2009年 東京医科歯科大学大学院 高齢者歯科学分野修了 博士(歯学)
国立感染症研究所細菌第一部 研究員
2010年 カナダ ミザリコーディア病院 摂食嚥下リハビリテーション分野 留学
2011年 猪原歯科・リハビリテーション科 訪問診療部部長
現在 グロービス経営大学院 MBA在籍中
(現職)
日本老年歯科医学会 在宅歯科医療検討委員会 委員
東京医科歯科大学歯学部 口腔保健学科 非常勤講師
九州歯科大学歯学部 口腔保健学科 非常勤講師
【抄録(Abstract)】
当院は、2012年からこれまでの約10年間に、23名の在宅療養中の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対し、歯科訪問診療を実施してきた。 ALSは、四肢型と球麻痺型の2つに大別される。四肢型は上肢の筋力低下や下肢の痙攣から進行が始まり、摂食嚥下機能は比較的保たれていることが多い。
一方、球麻痺型は、構音障害や摂食嚥下障害が強く表れる。病期の進行は後者の球麻痺型が最も早いとされ、人工呼吸や人工栄養を選択されない場合は、発症から3ヶ月程度で亡くなるケースもあり、演者も実際にそのような患者を数例、経験してきた。
また、人工呼吸器と人工栄養の導入を選択されたり、四肢型で嚥下や呼吸機能が保たれているケースでは、発症から10年以上の経過を辿る場合もあり、当院でもこのような患者に対しては、長期にわたって支援を続けている。 このように、ALSの進行や経過は様々であるため、歯科としての関りも分けて考えていく必要がある。
短期間であっという間に進行してしまうタイプの場合、本人や家族が病気を受け入れる時間的余裕が全くないまま、コミュニケーションと栄養摂取の手段が奪われてしまい、誤嚥性肺炎、呼吸停止へと進んでいってしまう。もちろん早期の、気管切開・人工呼吸や、胃ろう等の選択といったAdvance Care Planning (ACP)が最重要ではあるが、病気を受け入れられていない状態でのACPは非常に難しい。
そのような中で、栄養摂取や誤嚥性肺炎予防が重要であると歯科がいくら言ったとしても、厳しい選択に直面している患者・家族に歯科の必要性が理解され、受け入れられることはほとんどない。「もう少し落ち着いてからにして下さい」と言われたまま、歯科介入がなされることなく、亡くなられたケースが多いのが実情である。
これらの課題は、診断医がもう少し早めの歯科への紹介を行うことで、一部の解決が可能になるかもしれない。病期の進行が速いとは言っても、診断時にすぐに歯科に繋がることは稀であり、どうしても嚥下機能が低下してから歯科に紹介されるケースが多いと感じている。 これらの解決のために、当院では、診断を行う難病診療分野別拠点病院の中に歯科を設立して協力を行ったり、入院中の診断段階からの難病カンファレンスに参加するなどしてきた。
一方、長い経過の場合は、徐々に嚥下機能が低下してくるが、それに伴い、水を使用した歯科治療が難しくなってくる。そのため、早い段階で歯科治療を行うことが必要となる。 またこのような場合も、患者・家族は大きな不安を抱えることとなるが、それを支えるためには、関わる医療と介護の多職種で情報を共有することが必須となる。こまめな電話連絡や、医療情報共有サービスの利用が必要であり、ケアマネジャーの役割も大きい。本演題では、具体例を交えつつ、在宅におけるALS患者に対する歯科としての関りがどうあるべきか、考えていきたい。
当院は、2012年からこれまでの約10年間に、23名の在宅療養中の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対し、歯科訪問診療を実施してきた。 ALSは、四肢型と球麻痺型の2つに大別される。四肢型は上肢の筋力低下や下肢の痙攣から進行が始まり、摂食嚥下機能は比較的保たれていることが多い。
一方、球麻痺型は、構音障害や摂食嚥下障害が強く表れる。病期の進行は後者の球麻痺型が最も早いとされ、人工呼吸や人工栄養を選択されない場合は、発症から3ヶ月程度で亡くなるケースもあり、演者も実際にそのような患者を数例、経験してきた。
また、人工呼吸器と人工栄養の導入を選択されたり、四肢型で嚥下や呼吸機能が保たれているケースでは、発症から10年以上の経過を辿る場合もあり、当院でもこのような患者に対しては、長期にわたって支援を続けている。 このように、ALSの進行や経過は様々であるため、歯科としての関りも分けて考えていく必要がある。
短期間であっという間に進行してしまうタイプの場合、本人や家族が病気を受け入れる時間的余裕が全くないまま、コミュニケーションと栄養摂取の手段が奪われてしまい、誤嚥性肺炎、呼吸停止へと進んでいってしまう。もちろん早期の、気管切開・人工呼吸や、胃ろう等の選択といったAdvance Care Planning (ACP)が最重要ではあるが、病気を受け入れられていない状態でのACPは非常に難しい。
そのような中で、栄養摂取や誤嚥性肺炎予防が重要であると歯科がいくら言ったとしても、厳しい選択に直面している患者・家族に歯科の必要性が理解され、受け入れられることはほとんどない。「もう少し落ち着いてからにして下さい」と言われたまま、歯科介入がなされることなく、亡くなられたケースが多いのが実情である。
これらの課題は、診断医がもう少し早めの歯科への紹介を行うことで、一部の解決が可能になるかもしれない。病期の進行が速いとは言っても、診断時にすぐに歯科に繋がることは稀であり、どうしても嚥下機能が低下してから歯科に紹介されるケースが多いと感じている。 これらの解決のために、当院では、診断を行う難病診療分野別拠点病院の中に歯科を設立して協力を行ったり、入院中の診断段階からの難病カンファレンスに参加するなどしてきた。
一方、長い経過の場合は、徐々に嚥下機能が低下してくるが、それに伴い、水を使用した歯科治療が難しくなってくる。そのため、早い段階で歯科治療を行うことが必要となる。 またこのような場合も、患者・家族は大きな不安を抱えることとなるが、それを支えるためには、関わる医療と介護の多職種で情報を共有することが必須となる。こまめな電話連絡や、医療情報共有サービスの利用が必要であり、ケアマネジャーの役割も大きい。本演題では、具体例を交えつつ、在宅におけるALS患者に対する歯科としての関りがどうあるべきか、考えていきたい。