第6回日本在宅医療連合学会大会

講演情報

一般演題(口演)

01-1:ACP・意思決定

一般演題(口演)8 ACP・意思決定 ほか

2024年7月20日(土) 15:35 〜 16:25 第8会場 (会議室103)

座長:竹田 幸彦(ひだまり診療所)

15:55 〜 16:05

[O-1-33] 死に対峙する患者に対して、死の先輩として寄り添うターミナルケア~宗教家との同行訪問の体験を通して、死に向きあう患者へのアプローチを考える~

*中田 賢一郎1、近藤 健治1、松枝 啓1、宝田 忠子2、板倉 光夫3、佐々井 秀嶺4 (1. 医療法人社団さくらライフ さくらライフ錦糸クリニック、2. 医療法人社団育陽会 練馬さくら病院、3. 医療法人社団彩優会 栗橋病院、4. インドラ ブッダ ビハール)

【はじめに】ガン末期患者など、意識が清明な状態で余命宣告を受け、そこから徐々に死に向かって歩んでいく患者は、「死に向き合う事への苦しさ」を感じ、服薬量が増加したり在宅医療自体が中止となる事もある。我々はその苦しさへの対応として宗教家との同行訪問を行い一定の成果を得た。また私自身も僧侶として活動するに至り、非宗教家でも可能な患者アプローチのヒントを得たためその内容について報告する。
【活動】病棟と比べ、在宅医療では患者と医師との心理的距離が近くなり、患者はより医師に対して心を開くことは多くの医師が経験している事である。死んだ経験のない私が、実際死に直面している年長者に「死に対しての助言」を求められることに困惑していたが、牧師の友人に相談し、共に訪問を開始したところ患者や家族から喜ばれる経験をした。これは‥と思い、仏教を始めとして各宗派の専門職8人にターミナル患者62人のメンタルケア、カウンセリングを担当していただいた。患者の臨床所見やデータに加え、患者本人とご家族にアンケートを取り集計した。そうしたところ、抗不安薬、睡眠導入剤の減量が可能となった患者が61パーセント(対照群では12パーセント)、オピオイドに関しては12.5パーセント(対照群では0パーセント)という結果であった。また、家族に対してのグリーフケアでも大きな効果が得られた。
【考察】私自身が3年前に僧侶となり、昨年からは出家僧侶としてインドでも同様の活動を行っている。宗教的アプローチに対する受け取り方は国民性により様々である。今回、日本において一定の効果を認めた理由として、「日本人は無宗教者が多く、死はタブーであり、死について考える機会がなかったこと。他者から死についての明確な答えをもらう機会がなかった」事が考えられた。今後は各宗派での差異、国民性、元々の死生観なども視野に入れて、診療活動を続けていきたいと思っている。
なお、報告に当たっては個人情報保護に十分配慮し、各種倫理指針に則り行う。