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[VIII29-03] 筋幹細胞分泌因子Sema3Aによる遅筋型筋線維形成誘導:ヒラメ筋の損傷・再生実験による実証
【目的】筋再生において,衛星細胞(筋幹細胞)は活性化・増殖・分化・融合して幼若な新生筋線維を形成するが,筋線維型(速筋・遅筋型)を決定する機構は不明である.私達はこれまでに,分化初期特異的に衛星細胞から合成・分泌される Sema3Aにより遅筋型筋線維の形成が誘導されることを提起した(Tatsumiら, 2017).本研究では,この新奇制御機構を更に追究するため,衛星細胞特異的 Sema3A-cKOマウスのヒラメ筋 (遅筋型筋線維が優勢)を用いて,遅筋型筋線維の再生に及ぼす影響を調べた.【方法】10週齢のSema3A-cKOマウスおよび対照マウスのヒラメ筋にCTXを注入し筋損傷・再生を誘導した.損傷後5日目にヒラメ筋を採取し,各ミオシン重鎖(MyHC)アイソフォームおよびSema3A依存的シグナル伝達因子の発現量を比較した.また,筋切片をMyHCアイソフォームの多重蛍光免疫染色に供試した(Sawano ら, 2016).【結果】Sema3A-cKOにより,遅筋型MyHCのmRNA発現量が有意に低下し,速筋型MyHCⅡaの代替的な増加,シグナル伝達軸を構成するmyogeninとMEF2Dの発現低下が認められた.また,MyHC多重蛍光免疫染色により,遅筋型新生筋線維の減少も確認された.これらの結果より,衛星細胞由来のSema3Aは遅筋型筋線維の形成を誘導する重要な因子であることが明確になった.