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[VIII29-34] 脱分化脂肪細胞に由来する肝細胞は中心静脈周辺領域の肝細胞の特徴をもつ
我々は,種々の動物の脂肪組織から単離した成熟脂肪細胞を体外培養すると,自発的に脱分化し,多分化能をもつ脱分化脂肪細胞(DFAT)になることを明らかにした.第124回大会において,肝幹細胞および肝細胞の遺伝子発現プロファイルの網羅的解析によって抽出した遺伝子をDFATに導入すると,AlbおよびTat遺伝子を発現する肝細胞様細胞へ分化することを報告した.一方,肝細胞は肝小葉内の領域(門脈周辺 zone1,中心静脈周辺 zone3,それらの中間 zone2)によって異なる機能をもつことが知られているが,DFATに由来する肝細胞がzone1〜3のいずれの特徴をもつのかについては明らかではない.本研究では,DFAT由来の肝細胞(DFAT-Hep)におけるzone特異的な機能を明らかにする目的で行った.DFAT-Hepを肝分化誘導し,肝細胞特異的遺伝子および機能の発現を調べた結果,Afp,Tdo2遺伝子の発現や,アルブミンおよびグリコーゲンの合成が認められた.zone特異的遺伝子の発現を調べた結果,zone3特異的遺伝子であるCyp1a2,Cyp2e1,Cyp2a4,Cyp7a1およびLgr5の発現が認められた.以上の結果から,DFAT-Hepはzone3の肝細胞であることが示唆された.zone3の肝細胞は高い薬物代謝能をもつことから,DFAT-Hepは創薬研究への応用展開が期待される.