第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

ポスター

脳・脊髄-拡散基礎

脳・脊髄-拡散基礎2

2014年9月19日(金) 09:30 〜 10:12 ポスター会場 (5F ロビー)

座長:酒井晃二(京都大学医学研究科 人間健康科学系専攻先進医療機器開発学)

[P-2-150] 拡散テンソル画像法を用いたDraxin欠損マウス脳標本における神経走行の異常の検出

日隈達也1, 吉永壮佐1, 新明洋平2, 荒木力太3, 田中英明2, 寺沢宏明1 (1.熊本大学大学院生命科学研究部 構造生命イメージング分野, 2.熊本大学大学院生命科学研究部 神経分化学分野, 3.ブルカー・バイオスピン株式会社 アプリケーション部)

【背景】脳の神経線維は、発生過程において個々の神経細胞が一つずつ細胞間相互作用を積み重ねることにより形成される。田中らのグループは、既知のガイダンス分子とは全くホモロジーの無い反発活性を持つ新規の軸索ガイダンス分子を発見し、Draxin と名付けた[1]。さらに、Draxin 欠損マウスの海馬では神経細胞死が誘導され海馬が委縮することから、栄養因子的な働きもしていることが報告されており[2]、きわめて重要なガイダンス分子であると考えられる。【目的】本研究の目的は、拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Imaging : DTI)法を用いて非侵襲的に Draxin 欠損による脳内における神経走行の異常を検出することである。【方法】健常マウス及び Draxin 欠損マウスから脳を摘出し、パラホルムアルデヒドにて灌流した。その後 10 mL シリンジに脳標本を入れ、シリンジ内を Fomblin で満たしたものを撮像試料とした。MRI 装置は 7.0 T Biospec と 2ch Cryo Coil (ともに Bruker 社製) を用い、撮像シークエンスは DTI Standard_bas を使用した。Motion Probing Gradient (MPG) は 30 軸を用い、b value は 1000 s/mm2 にて撮像した。DTI の解析には TrackVis を用いた。【結果・考察】Draxin 欠損マウス脳標本では、脳梁を通る神経線維の見える範囲が尾側から鼻先にかけて狭いことが観察された。さらに神経線維の平均長が Draxin 欠損マウス脳標本では短かった。本研究において観察された異常が Draxin 欠損による神経線維の伸長における異常であることが示唆された。Draxin が欠損したマウス脳切片のヘマトキシリン・エオジン染色実験により、その左右の大脳を連結する 3 つの交連神経(脳梁、海馬交連、前交連)に形成不全が生じることが報告されており、本研究において観測された異常が Draxin 欠損によって発生した異常であることが考えられた。【展望】今後は P0(生後 0 日)の Draxin 欠損マウスの DTI 解析や、行動解析を組み合わせた生体マウスの DTI による評価に繋げていきたい。【参考文献】 [1] Islam, S. M. et al., Science, 388-393 (2009) [2] Zhang, S. et al., Neurosci. Res., 53-61 (2010)