第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

一般演題

ポスター発表

[P2] 神経系(上肢)

[P2-15] 認知課題と客観的筋力評価のフィードバックが筋収縮感覚向上と代償運動の是正につながったKeegan型頚椎症の一例

*新田 麻美1、壹岐 伸弥2、矢野 恵夢3、山根 将弘1、片岡 義明1 (1. 北海道医療大学病院リハビリテーション室、2. 医療法人香庸会川口脳神経外科リハビリクリニックリハビリテーション科、3. 医療法人孟仁会摂南総合病院リハビリテーション科)

【はじめに】
 Keegan型頚椎症は脊髄前根の圧迫による上肢の近位部筋萎縮が顕著で感覚障害が少ない頚椎症である。今回、筋収縮感覚認識課題に客観的指標によるフィードバックの併用が機能改善の自覚に繋がった経過を報告する。

【症例】
 右Keegan型頚椎症と診断された70歳代男性であった。外来リハビリ実施後3か月が経過していた。機械修理の仕事に従事し、主訴は「右手で金槌を持って作業が困難」であり、疼痛や感覚障害は認めず三角筋の筋力低下が顕著であった。評価(初期→3か月後)はHand held dynamometer(HHD)を用いた三角筋筋力(右3.9kgf→10.0kgf/左7.6kgf→11.2kgf)は改善していたが、「良くなっている実感がない」と内省した。Neck Disability Index(NDI)による能力障害は7.5%(加点項目:仕事、運転)であった。自主練習では代償運動を認識できないまま高頻度に運動することによる疼痛を生じるようになっていた。

【病態解釈】
 筋収縮感覚の認識や健側との比較が困難なことで、客観的評価では筋力が向上したにもかかわらず代償運動を是正できないまま運動学習し、また、筋力向上を自覚できずに経過していると考えた。

【介入】
 肩関節運動覚認識課題と三角筋筋収縮感認識として重量覚識別課題を実施したが、知覚仮説は視覚情報を参照し体性感覚情報の予測が不十分であった。そこでHHDを用いた右三角筋筋力の客観的数値の提示とその際の筋収縮感覚認識課題を行った。

【結果】
 介入開始6か月目、三角筋筋力は右13.0kgf/左13.1kgf、NDIは0%、右手で金槌の使用が可能となった。「右は数字が上がると一緒に肩甲骨もあがっていた」「力の入れ方に気づけるようになった」と筋力向上の自覚や代償運動の是正が可能となった。

【考察】
 運動認識が乏しく現在の身体機能を正しく把握することが困難な場合、客観的指標と体性感覚を関連付ける介入は現在の機能を知るための手がかりとして有効な可能性がある。

【倫理的配慮(説明と同意)】
 症例に本発表に関する説明を口頭で十分に行い,同意を得た。