日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

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健康福祉研究部会 » 【課題C】 運動不足(不活動)に伴う心身機能の低下をいかに予防するか

健康福祉研究部会【課題C】口頭発表①

2022年9月1日(木) 14:00 〜 15:03 第1会場 (3号館3階301教室)

座長:田中 愛(明星大学)

14:48 〜 15:03

[健康福祉-C-04] コロナ禍における児童の運動頻度および運動時間が心理・社会的側面に及ぼす影響(測)

*冨士本 有希1、大坪 健太2,3、春日 晃章4 (1. 岐阜大学大学院、2. 兵庫教育大学院、3. 日本学術振興会特別研究員(DC2)、4. 岐阜大学)

本研究は、コロナ禍における児童の運動頻度および運動時間と心理・社会的側面との関係を検討することを目的とした。対象は、G県の公立小学校に通う児童2042名(低学年1、2年生613名、中学年3、4年生667名、高学年5、6年生762名)であった。
 研究方法は、運動習慣に関して、運動頻度および運動時間の2項目(4件法)を、心理・社会的側面の測定項目として、肯定的感情、否定的感情、社会性および集中力の4項目(5件法)をそれぞれ質問紙により調査した。
 運動習慣2項目を独立変数、心理・社会的側面をそれぞれ従属変数とする一元配置分散分析を適用し、有意な主効果が認められた場合には多重比較検定を行った。分析は低学年・中学年・高学年に分けて行った。
 分析の結果、全ての学年において運動頻度と肯定的感情、否定的感情、社会性および集中力との間に運動頻度の違いによる有意差が認められた。運動時間について、肯定的感情との間には高学年においてのみ、否定的感情では低学年と高学年においてそれぞれ有意な差が認められた。社会性については全ての学年において運動時間による有意差は認められなかった一方で、集中力においては全ての学年において運動時間の多寡による有意差が認められた。
 これらのことから、コロナ禍における児童の運動習慣を心理・社会的側面との関係は運動時間よりも運動頻度がより強く、運動頻度が高い児童ほど心理・社会的側面は安定していることが示唆された。また、学年に関わらず運動時間が短い児童は集中力に欠ける傾向にあることが推察された。高学年における運動頻度および運動時間との関係が強かったことから、発達レベルが高い高学年児童の運動習慣は、心理・社会的側面に影響を及ぼすことが推察された。コロナ禍により運動機会および運動時間が減少している中で、まずは短い時間であっても運動頻度を高めることが心理・社会的側面の観点から見ても重要であることが考えられた。