日本体育・スポーツ・健康学会第72回大会

講演情報

ポスター発表(専門領域別)

専門領域別 » 体育心理学

体育心理学(偶数演題) ポスター発表

2022年9月2日(金) 11:00 〜 12:00 第一体育館バレーボール1 (第一体育館バレーボール)

[03心-ポ-02] 身体部位のメンタルローテーションからみた児童期の身体認知

*成瀬 九美1 (1. 奈良女子大学生活環境学部心身健康学科スポーツ健康科学コース)

メンタルローテーション(以下MR)は対象物を心的に回転する認知的活動である。図形を対象とした場合は、回転方向の影響を受けず、正立状態(0度)からの傾き角度の大きさに因ってMR時間が変化し180度を最長とする左右対称グラフとなるが、手や足の身体部位を対象とした場合、回内/回外の制限を受ける角度でMR時間が延長する。手背・手掌を比較した実験では手掌のMRは手背より遅延し、右回転60度や120度で顕著であった(成瀬ら、2019)。本研究では小学校1年生から4年生の児童を対象として、手足・裏表を組み合わせた4部位のイラストを用いてMR活動を調査した。6角度(0、60、120、180、240、300)×左右の合計12種類をランダムに配置した調査用紙(B4)を作成し、制限時間(2分間)内に利き手/利き足のイラストを選ぶことを課題とした。練習問題(図形)、文字問題(ひらがなや漢字)、手足問題(足裏は3,4年生のみ使用)の順に学級ごとに集団実施した。本調査は本学研究倫理審査委員会の承認を得て実施し、保護者の承諾を得た1年生65人、2年生65人、3年生64人、4年生59人が参加した。正答数および正答として選択された順位を刺激間で比較した。1年生は「文字」の正答数が「手背」「手掌」「足甲」より有意に多いが、2~4年生は「文字」と「手背」「足甲」の表面部位との差がみられなかった。手部位は全ての学年で「手背」の正答数が「手掌」よりも有意に多く、足部位は4年生のみ「足甲」の正答数が「足裏」より有意に多かった。3年生の「手掌」において男女差がみられ、男子の正答数が有意に多かった。身体部位のMR活動は当該部位を客体化し空間的・視覚的に処理する側面と、自身の身体感覚を動員し処理する側面があり、手掌や足裏といった視覚的経験の少ない部位に対する後者の処理は3年生から4年生の時期に行われ始めると考えられる。