日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[D] 生理学・生化学・分子生物学

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:30 D会場 (白橿2)

09:15 〜 09:30

[D-35] ミカン科食アゲハ幼虫におけるフラノクマリン応答性cytochrome P450遺伝子の機能解析

◯宇賀神 篤1、宮下 怜1,2、尾崎 克久1 (1. JT生命誌研究館、2. 阪大院・理)

Papilio属アゲハチョウは世界に200種以上が分布し,そのうち約80%はミカン科植物を幼虫の食草として利用する。一部,セリ科食のグループがおり,それらは食草をミカン科から転換して生じたと考えられている。セリ科とミカン科は系統的に離れているものの,二次代謝産物として有毒なフラノクマリン類を共通して含む。そのため,フラノクマリン代謝能とミカン科からセリ科への食草転換との関連性が指摘されてきた。しかし,フラノクマリン代謝の分子機構の研究は専らセリ科食アゲハでなされてきており,その進化的保存性は不明である。
 ミカン科食のナミアゲハ(Papilio xuthus)においてフラノクマリン応答性のcytochrome P450-6B遺伝子を同定し,ゲノム編集G0幼虫を用いた解析から,フラノクマリン摂取時に発育が有意に低下することを明らかにした。同定した遺伝子の一部はセリ科食種における先行研究でフラノクマリン代謝能が報告されたもののオーソログであった。ミカン科植物に対抗するためのフラノクマリン代謝機構が毒性の似たセリ科への食草転換に寄与した可能性を支持する結果である。