日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[E] 化学生態学・生理活性物質

2024年3月29日(金) 13:30 〜 16:15 E会場 (小会議室1)

15:30 〜 15:45

[E-09] クワ耐虫タンパク質MLX56の毒性影響に対するカイコの非感受性について

◯西森 敬晃1、今野 浩太郎1 (1. 農研機構)

クワ(Morus alba)はカイコ(Bombyx mori)の餌として有名である。クワに含まれる耐虫タンパク質MLX56は摂食した昆虫の囲食膜に吸着して異常に肥大化させ、消化を抑制する。その消化抑制は成長阻害となり継続摂取した昆虫を最終的に致死に至らしめる。一方でクワのスペシャリストであるカイコはクワを摂食可能でMLX56の消化抑制に伴う成長阻害を受けていないことが予想される。しかしながら、クワに対するカイコの適応に関する情報は少ない。
 本研究ではカイコのMLX56に対する非感受性を基礎的な試験にて調査した。まず、カイコおよびコントロールのエリサン(Samia ricini)に人工餌(シルクメートL4M )へMLX56を含ませて摂食させたところ、エリサンの囲食膜と比較してカイコのそれにわずかなMLX56の吸着が確認された。次に、両昆虫の囲食膜を解剖によって摘出し、PBS溶液内でMLX56の吸着の有無を確認した試験でも同様の結果が得られた。カイコの囲食膜にほとんどMLX56の吸着が確認できない要因として、カイコの消化液にMLX56の分解能力が予想された。消化液内でのエリサンの囲食膜へのそれの吸着試験では、カイコの消化液がMLX56の吸着阻害および分解を行っている可能性が示唆された。