日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 系統・生物地理・進化・種分化

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:30 G会場 (小会議室8)

11:00 〜 11:15

[G-30] テナガショウジョウバエのオスに特徴的な前脚巨大化に関する研究

◯平石 拓海1、坂井 貴臣1、朝野 維起1 (1. 都立大院・理)

カマキリやバッタなど脚の特殊化は多くの昆虫で見られるが、分子生物学・遺伝学的レベルでの脚の特殊化に関する研究はほとんど行われていない。本研究はテナガショウジョウバエ(Drosophila prolongata)で見られる巨大化したオス前脚が、脚が特殊化するメカニズムやその進化過程を調べる有用なモデルになると考え、研究の初期段階として前脚形状や蛹期における前脚発生の観察などを行った。
 本種のオス前脚はオス中脚やメス前脚よりも太く、かつ白黒模様も明瞭であるが、まずこれを計測・数値化後、評価・比較した。続いて先行研究に倣い、囲蛹殻形成から羽化までの蛹期を20のステージに分けた。オス前脚の巨大化はstage 4からstage 6にかけて明瞭になること、及びstage 15で白黒の模様が視認できることなどが観察された。また、蛹期はオスの方が長いという結果を得た。羽化後の成虫前脚を切片にして観察したところ、オスはメスに比べクチクラが厚く、筋束も多いことが分かった。これらと並行し、ロングリードとショートリードのデータを組み合わせゲノムアッセンブルも行い、性決定遺伝子の配列も取得した。今後は、前脚形成期に発現する遺伝子の解析、及びオス前脚の特殊化に関わる遺伝子を特定するなどしたい。