日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS02] ポスター発表(学生B:コアタイム2)

2024年3月30日(土) 12:30 〜 13:30 桜(学生) (桜)

[PS02-104] ナミハダニの休眠を誘導する光周性の分子機構

◯大迫 朋寛1、武田 直樹1、鈴木 丈詞1 (1. 農工大院・BASE)

光周性とは,季節的に変化する光周期に応答し,環境への適応形質が誘導される生物現象である.鋏角類のモデル生物の一つであるナミハダニ(Tetranychus urticae Koch)では,長夜の光周期によって生殖停止,体色変化および各種環境耐性を伴う休眠が誘導される.しかし,休眠を誘導する光周性の分子機構は不明である.そこで本研究では本種の休眠および非休眠系統(それぞれ,DおよびND系統)を用い,遺伝学的比較からその分子機構に迫った.まず,両系統間での戻し交配の結果,ND系統の非休眠形質は顕性遺伝し,その責任遺伝子は連鎖する単一の遺伝子座に存在することが判明した.次に, D系統で全ゲノムリシークエンスを行い,両系統間の変異箇所を解析した.最後に,Bulked segregant解析によって,両系統間の休眠性に関連している遺伝子座は,第一染色体上の88遺伝子が座乗する領域であることが判明した.このうち,翻訳上の変化を伴う変異を含むと推測された遺伝子は46であった.他方,休眠誘導因子候補である6つの概日時計関連遺伝子について,両系統における発現パターンを解析した.今後は,これら46遺伝子や概日時計関連遺伝子の機能解析を進め,休眠制御遺伝子の同定に迫る.