日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS02] ポスター発表(学生B:コアタイム2)

2024年3月30日(土) 12:30 〜 13:30 桜(学生) (桜)

[PS02-14] 無変態昆虫マダラシミにおける成虫化誘導遺伝子E93のノックアウト解析

◯稲田 圭1、峯村 俊儀1、大出 高弘1、大門 高明1 (1. 京大院・農)

昆虫の変態は「究極の成功戦略」とも称され、昆虫の著しい種分化と適応放散の原動力となった。エクジステロイド誘導性の転写因子Eip93F (E93)は、昆虫の成虫化を誘導する機能を持つ。E93の機能は不完全変態・完全変態昆虫の両者において高度に保存され、成虫の形態形成を行う時期に特異的かつ高度に転写される。一方、無変態昆虫においてはE93が構成的に発現しており、その機能は不明であるため、我々は無変態昆虫マダラシミにおいてE93のノックアウト解析を行った。
野生型雌は、10齢または11齢になると産卵管が十分に伸長し、卵巣が成熟することで成虫化を迎える。一方、11齢のE93ノックアウト雌は卵巣が未成熟であり、産卵管が短いことが確認された。さらには、体サイズ、齢期間、生存率の異常が10齢以降で顕著に見られることがわかった。しかし、E93ノックアウト雌の一部は最終的に性成熟し、野生型雄と交配して正常に卵を産むことができた。これにより、不完全変態・完全変態昆虫とは異なり、無変態昆虫であるマダラシミではE93が成虫化に非必須であることが明らかになった。以上のことから、E93の制御変化と機能拡張によって、一度の脱皮で大きく形態的・生理的変化をもたらす変態の進化が促進された可能性が示唆される。