[S22P-08] 令和6年(2024年)能登半島地震の特性化震源モデルの構築とパラメータ推定
気象庁マグニチュードで7.6を示した2024年能登半島地震は、日本の近代以降では1891年濃尾地震(M8.0)に次ぐ最大規模の内陸地殻内地震である。余震分布から推定される震源断層の長さは約150 kmに達し、各機関により求められた地震モーメントの大きさは、強震動予測レシピに採用されている震源スケーリング則において、地震モーメントが断層面積の2乗に比例するLモデルと1乗に比例するWモデルの境界付近に相当する。強震動予測問題においては、想定地震の特性化震源モデルを既往のスケーリング則に基づいて構築し、波形合成を行う。能登半島地震の特性化震源モデルを求めて、特性化震源パラメータの既往スケーリング則との整合性を検証することは、データの少ない大規模内陸地震の強震動予測精度向上のために重要であると考えられる。
前報(JpGU2024)では、経験的グリーン関数を用いた震源インバージョン解析により同地震の震源すべり分布モデルを推定した。今回、さらに震源断層直上のF-NET輪島など、複数の観測点を追加し、インバージョン再解析を行った上で、得られたすべり分布に基づき震源の特性化を行った。SMGAの抽出は基本的にSomerville et al. (1999)の基準に従うものとし、結果として北東端の共役断層を除く3枚の断層面上に6個のSMGAを設定した。トリミング後の断層面積に対するSMGA総面積の比は22.4%で、Somerville et al. (1999)の平均的な関係とほぼ同等である。ただし、ここではインバージョン解析の初期モデルで仮定したMj5.9の前震の断層面は除外している。その後、バンドパスフィルターの周波数帯域を0.1‐10Hzに広げたデータセットを用いて、各SMGAの応力降下量、立ち上がり時間、破壊開始時刻、並びに破壊伝播速度を焼きなまし法によって推定した。このとき、SMGAの破壊伝播は、震源直近の点から同心円状に一定速度で伝播するものとし、また破壊開始時刻の初期値はインバージョンモデルの値を用いている。解析の結果、各SMGAの応力降下量は10MPaから30MPa程度、ライズタイムは0.2から0.9秒程度の値が得られ、加速度震源スペクトルの短周期レベルは、強震動予測レシピで用いられる壇・他(2001)の経験式の平均値に対して約1.48倍の大きさを示した。これは、芝(2008)に示されている2007年新潟県中越沖地震(M6.8)の短周期レベルとほぼ同様の関係になる。ただし、能登半島地震の地震モーメントは、壇・他(2001)の回帰区間外であるという点について留意が必要である。
なお今回のベースモデルとして用いた前報(JpGU2024)の震源インバージョン解析では、本震の破壊開始点からS波が到達するよりも早い時刻に有意な振幅の地震波が観測されている点を考慮し、本震の約13秒前に発生した前震の発生時刻を起点に通常の解析よりも探索区間を広く設定して、断層面上各点の破壊時刻を最適化した。これにより、輪島沖セグメントでは空間的に異なる2つのSMGAが近接した時刻に破壊する結果が得られており、震源近傍の強震動に影響を与えた可能性がある。
前報(JpGU2024)では、経験的グリーン関数を用いた震源インバージョン解析により同地震の震源すべり分布モデルを推定した。今回、さらに震源断層直上のF-NET輪島など、複数の観測点を追加し、インバージョン再解析を行った上で、得られたすべり分布に基づき震源の特性化を行った。SMGAの抽出は基本的にSomerville et al. (1999)の基準に従うものとし、結果として北東端の共役断層を除く3枚の断層面上に6個のSMGAを設定した。トリミング後の断層面積に対するSMGA総面積の比は22.4%で、Somerville et al. (1999)の平均的な関係とほぼ同等である。ただし、ここではインバージョン解析の初期モデルで仮定したMj5.9の前震の断層面は除外している。その後、バンドパスフィルターの周波数帯域を0.1‐10Hzに広げたデータセットを用いて、各SMGAの応力降下量、立ち上がり時間、破壊開始時刻、並びに破壊伝播速度を焼きなまし法によって推定した。このとき、SMGAの破壊伝播は、震源直近の点から同心円状に一定速度で伝播するものとし、また破壊開始時刻の初期値はインバージョンモデルの値を用いている。解析の結果、各SMGAの応力降下量は10MPaから30MPa程度、ライズタイムは0.2から0.9秒程度の値が得られ、加速度震源スペクトルの短周期レベルは、強震動予測レシピで用いられる壇・他(2001)の経験式の平均値に対して約1.48倍の大きさを示した。これは、芝(2008)に示されている2007年新潟県中越沖地震(M6.8)の短周期レベルとほぼ同様の関係になる。ただし、能登半島地震の地震モーメントは、壇・他(2001)の回帰区間外であるという点について留意が必要である。
なお今回のベースモデルとして用いた前報(JpGU2024)の震源インバージョン解析では、本震の破壊開始点からS波が到達するよりも早い時刻に有意な振幅の地震波が観測されている点を考慮し、本震の約13秒前に発生した前震の発生時刻を起点に通常の解析よりも探索区間を広く設定して、断層面上各点の破壊時刻を最適化した。これにより、輪島沖セグメントでは空間的に異なる2つのSMGAが近接した時刻に破壊する結果が得られており、震源近傍の強震動に影響を与えた可能性がある。