[PD042] 親密な友人関係における性格の認知(4)
3種の評定の差からみる友人間の類似性
キーワード:擬態語性格尺度, 友人関係, 類似性
「類は友をよぶ」「朱に交われば赤くなる」など友人間の類似性に言及する言葉は多数ある。小松ら(2013)は,擬態語性格尺度(小松ら2012)を用いて大学生の親密な友人ペアに,調査協力者の自己評定(以下A評定),調査協力者による親しい友人の評定(B評定),親しい友人による自己評定(C評定)の評定を求め,その関連を検討した。友人間の類似性を反映するであろうA評定とB評定の相関(調査協力者による自分と友人との類似性の認知を反映)と,A評定とC評定の相関(調査協力者と友人の自己評定による類似性を反映)は,r=-.05-.30と高くはなかった。この相関係数を用いた類似性で,相関係数が示すのは分布の形態であり,評定そのものがどの程度一致するかを示すわけではない。そこで,本研究では,評定そのものの差異を反映する,3つの評定の差の絶対値を用いて,友人間の類似性の認知を検討する。
A-C評定間の差(以下dAC)は調査協力者と友人の自己評定の差であることから,両者の自己認知に基づいた友人間の類似性を表わすと考えられる。A-B評定間の差(dAB)は調査協力者による個人内での自身と友人との類似性の認知を表し,B-C評定間の差(dBC)は調査協力者による友人の性格に対する自他の認知のズレを表わすと考えられる。これらの差の絶対値を示すとともに,各下位尺度での相関を分析し,たとえば「調査協力者が『自分と友人はあまり似ていない』と認識している(評定値が異なる)とき,実際にその友人も協力者とは似ていない自己認知を回答するか」(dABとdACの相関)などについて検討する。
方法
調査協力者:大学生345名。うち,上記3種の評定がそろっている等の条件に合致した215名(男性23名,女性192名)のデータを分析対象とした。
調査内容と方法:小松ら(2012)による擬態語性格尺度(臆病さ・緩やかさ・几帳面さ・不機嫌さ・淡白さ・軽薄さの6下位尺度×10項目,語順の異なる2種類)を用いて上記の3種の評定(A,B,C)を,「対象となる人物にどのくらい当てはまるか」について5件法で評定するように求めた。調査協力者の親しい友人には,高校時代から現在までに付き合いのある(あった),同年代,同性のよく知る人物を選ぶよう求めた。友人には調査協力者を介してCの評定(封筒入り)を依頼した。なお,本発表を含む研究は倫理審査を受け実施した。
結果と考察
自他の類似性の認知を測定するために,各下位尺度のdAB,dAC,dBCの値を求めた。表1に各下位尺度のdAB,dAC,dBCの平均値とSDを,表2にこれらの間のピアソンの相関係数を示した。
表1各下位尺度のdAB,dAC,dBCの平均とSD相関では,緩やかさ・几帳面さ・不機嫌さ・軽薄さで見られ,自身と友人の類似性の認知と,実際の両者の自己認知の類似性との間に関連がある。これらの下位尺度では,目的で例示したような認知の差における関係がある程度存在するようである。また,dACとdBCの相関が淡白さで見られ,自己認知の類似性が高い友人ペアでは,相手が淡白であるか否かを正確に評価できるようである。
引用文献
小松孝至・酒井恵子・西岡美和・向山泰代(2012)自他の性格評定に使用可能な擬態語性格尺度の構成 心理学研究 83(2)82-90.
小松孝至・酒井恵子・西岡美和・向山泰代(2013)親密な友人関係における性格の認知(1)日本教育心理学会第55回総会 287.
A-C評定間の差(以下dAC)は調査協力者と友人の自己評定の差であることから,両者の自己認知に基づいた友人間の類似性を表わすと考えられる。A-B評定間の差(dAB)は調査協力者による個人内での自身と友人との類似性の認知を表し,B-C評定間の差(dBC)は調査協力者による友人の性格に対する自他の認知のズレを表わすと考えられる。これらの差の絶対値を示すとともに,各下位尺度での相関を分析し,たとえば「調査協力者が『自分と友人はあまり似ていない』と認識している(評定値が異なる)とき,実際にその友人も協力者とは似ていない自己認知を回答するか」(dABとdACの相関)などについて検討する。
方法
調査協力者:大学生345名。うち,上記3種の評定がそろっている等の条件に合致した215名(男性23名,女性192名)のデータを分析対象とした。
調査内容と方法:小松ら(2012)による擬態語性格尺度(臆病さ・緩やかさ・几帳面さ・不機嫌さ・淡白さ・軽薄さの6下位尺度×10項目,語順の異なる2種類)を用いて上記の3種の評定(A,B,C)を,「対象となる人物にどのくらい当てはまるか」について5件法で評定するように求めた。調査協力者の親しい友人には,高校時代から現在までに付き合いのある(あった),同年代,同性のよく知る人物を選ぶよう求めた。友人には調査協力者を介してCの評定(封筒入り)を依頼した。なお,本発表を含む研究は倫理審査を受け実施した。
結果と考察
自他の類似性の認知を測定するために,各下位尺度のdAB,dAC,dBCの値を求めた。表1に各下位尺度のdAB,dAC,dBCの平均値とSDを,表2にこれらの間のピアソンの相関係数を示した。
表1各下位尺度のdAB,dAC,dBCの平均とSD相関では,緩やかさ・几帳面さ・不機嫌さ・軽薄さで見られ,自身と友人の類似性の認知と,実際の両者の自己認知の類似性との間に関連がある。これらの下位尺度では,目的で例示したような認知の差における関係がある程度存在するようである。また,dACとdBCの相関が淡白さで見られ,自己認知の類似性が高い友人ペアでは,相手が淡白であるか否かを正確に評価できるようである。
引用文献
小松孝至・酒井恵子・西岡美和・向山泰代(2012)自他の性格評定に使用可能な擬態語性格尺度の構成 心理学研究 83(2)82-90.
小松孝至・酒井恵子・西岡美和・向山泰代(2013)親密な友人関係における性格の認知(1)日本教育心理学会第55回総会 287.