[PD061] 小中学校における気になる子への対応に関する実態調査(2)
特別支援教育の負担感と実施状況の関連
Keywords:特別支援教育, 教員, 連携
近年,特別支援教育の広まりとともに,小・中学校の通常学級における教師による個別の支援の在り方がさまざまな領域で検討されている。教員を対象とした各種研修,あるいは各学校での校内委員会やケース検討会など,教師が知識を深め,さらに意見や知識を交換して連携する機会は設けられてはいる。しかし,日々の支援について,教師が迷ったり苦慮したりする姿に遭遇することは依然として多く,支援における教師の負担感も大きいと考えられる。
土屋(2010)は,教師を対象とした発達障害児に対する意識調査を行った結果,支援ニーズのある児童・生徒に対し,十分に支援ができていないと感じているという教師が多くみられ,理由としては支援時間がないことを挙げる者が多いことを指摘した。また,その環境によっても意識に違いがあり,クラス規模が大きいほど,発達障害児への支援に前向きな姿勢を持ちにくいことを明らかとしている。したがって,教師の意識向上とともに,校内の支援体制の充実や環境整備の必要性を提案している。そこで,本研究では,支援と連携の状況が教師の負担感にどのように影響を与えているかについて検討する。
方 法
発達障害に関する研修会に参加し,研究の趣旨に同意した教師を対象とした質問紙調査を行った。
調査対象者 幼稚園,小中学校および特別支援学校の教師47名を対象とした(小学校33名,中学校14名)。性別の内訳は男性16名,女性31名であり,年齢は平均44.41歳(SD =5.88),教育歴の平均は19.87 (SD=7.4880 )であった。現在担任を持っているものは30名,持っていない者が17名で,担任を持っている者のうち,通常学級が29名,特別支援学級が1名であった。
質問項目 質問紙の構成は①回答者の属性(性別,年齢,学校種,教育歴,担任の有無) ②学級における支援ツールの実施状況尺度(吉橋ら, 2012)13項目,5件法 ③保護者との連携の状況尺度6項目, 5件法(吉橋ら, 2012)④特別教育負担感尺度(高田, 2009)5件法,であった。
結 果
まず,支援ツールの実施状況尺度と保護者との連携状況尺度,特別教育負担感尺度の2つの下位尺度のそれぞれについて項目得点を加算し,尺度得点を求めた。支援ツールの実施状況尺度についてはα係数が.89,保護者との連携尺度についてはα係数が.70,特別教育負担感尺度下位尺度である「不安および負担」のα係数が.86,「やりがいのなさ」のα係数が.76であり,十分な信頼性が認められた。
次に,各尺度間の相関係数を算出したところ,支援ツールの実施状況と保護者との連携の間には有意な正の相関が認められた(r =.69, p <.01)。また,支援ツールの実施状況とやりがいのなさの間には有意な負の相関が認められた(r =-.30, p <.05)。保護者との連携とやりがいのなさの間には有意な負の相関がみられた(r =-.33, p <.05)。
考 察
環境的配慮等の特別支援教育における支援の実施状況と保護者との連携の間には高い正の相関がみられ,支援ツールを多く活用している教員は保護者との連携についても多く行うことができており,一方で時間がないといった理由から活用ができていない場合,保護者との連携も不十分であると同時に,負担感が大きく,やりがいも小さくなっている傾向が明らかとなった。
引 用 文 献
高田純 2009 障害のある児童の担任教師のバーンアウト傾向,職場環境ストレッサー,特別支援教育負担感,自己効力感,学校メンタルヘルス 12
土屋(2010)は,教師を対象とした発達障害児に対する意識調査を行った結果,支援ニーズのある児童・生徒に対し,十分に支援ができていないと感じているという教師が多くみられ,理由としては支援時間がないことを挙げる者が多いことを指摘した。また,その環境によっても意識に違いがあり,クラス規模が大きいほど,発達障害児への支援に前向きな姿勢を持ちにくいことを明らかとしている。したがって,教師の意識向上とともに,校内の支援体制の充実や環境整備の必要性を提案している。そこで,本研究では,支援と連携の状況が教師の負担感にどのように影響を与えているかについて検討する。
方 法
発達障害に関する研修会に参加し,研究の趣旨に同意した教師を対象とした質問紙調査を行った。
調査対象者 幼稚園,小中学校および特別支援学校の教師47名を対象とした(小学校33名,中学校14名)。性別の内訳は男性16名,女性31名であり,年齢は平均44.41歳(SD =5.88),教育歴の平均は19.87 (SD=7.4880 )であった。現在担任を持っているものは30名,持っていない者が17名で,担任を持っている者のうち,通常学級が29名,特別支援学級が1名であった。
質問項目 質問紙の構成は①回答者の属性(性別,年齢,学校種,教育歴,担任の有無) ②学級における支援ツールの実施状況尺度(吉橋ら, 2012)13項目,5件法 ③保護者との連携の状況尺度6項目, 5件法(吉橋ら, 2012)④特別教育負担感尺度(高田, 2009)5件法,であった。
結 果
まず,支援ツールの実施状況尺度と保護者との連携状況尺度,特別教育負担感尺度の2つの下位尺度のそれぞれについて項目得点を加算し,尺度得点を求めた。支援ツールの実施状況尺度についてはα係数が.89,保護者との連携尺度についてはα係数が.70,特別教育負担感尺度下位尺度である「不安および負担」のα係数が.86,「やりがいのなさ」のα係数が.76であり,十分な信頼性が認められた。
次に,各尺度間の相関係数を算出したところ,支援ツールの実施状況と保護者との連携の間には有意な正の相関が認められた(r =.69, p <.01)。また,支援ツールの実施状況とやりがいのなさの間には有意な負の相関が認められた(r =-.30, p <.05)。保護者との連携とやりがいのなさの間には有意な負の相関がみられた(r =-.33, p <.05)。
考 察
環境的配慮等の特別支援教育における支援の実施状況と保護者との連携の間には高い正の相関がみられ,支援ツールを多く活用している教員は保護者との連携についても多く行うことができており,一方で時間がないといった理由から活用ができていない場合,保護者との連携も不十分であると同時に,負担感が大きく,やりがいも小さくなっている傾向が明らかとなった。
引 用 文 献
高田純 2009 障害のある児童の担任教師のバーンアウト傾向,職場環境ストレッサー,特別支援教育負担感,自己効力感,学校メンタルヘルス 12