[PF055] 総合評価ツールを用いた中高生の学習の縦断的検討(1)
自律的動機づけと動機づけ方略の相互関係
Keywords:動機づけ, 学習方略, 縦断調査
問題と目的
方略とは学習者が物事を学習する際に能動的に用いる手続き的な知識を指す(Alexander et al., 1998)。学習者は,学習内容の理解に向けた認知方略(Entwistle & Ramsden, 1983)だけでなく,自身の動機づけの調整に向けた動機づけ方略を使うことも知られる(Wolters, 2003)。本邦では学習者が用いる動機づけ方略について,外発・内発の特徴からの分類が試みられている(伊藤・神藤, 2003; 梅本・田中, 2012)。自己決定理論(Ryan & Deci, 2000)では,動機づけの外発・内発は相互に変わり得るものとされる。こうした動機づけの変化は動機づけ方略の外発・内発の変化とも関連すると考えられる。そこで本研究では,中高生の縦断データ(Time1, 2, 3)を分析し,動機づけと動機づけ方略との時間的な相互関係を検討した。
方 法
分析対象データ (株)ワオ・コーポレーションより個人が特定されないよう匿名化された上で提供を受けた「ワオ!ヤル気診断」(以下,評価ツール)の受検者データのうち,Time 1(2012年5月),Time 2(2012年11月),Time 3(2013年5月)の3時点のデータが欠損なく揃っている827名(Time 1時点で中学生340名,高校生487名; 女性435名,男性392名)を分析対象とした。
分析項目 1. 動機づけ(評価ツール上の呼称はモチベーション・タイプ):自己決定理論で仮定される外的・取り入れ・同一化・内的の4つの動機づけと他者志向を測定する4件法25項目の尺度(安藤ら, 2008;藤田・佐藤, 2010;速水ら, 1996;伊藤, 2007, 2009 を参考に作成)。本研究では他者志向は扱わない。また,外的と取り入れを統制動機,同一化と内的を自律動機として合成して扱う(cf. Gagn? et al., 2013)。2. 動機づけ方略(評価ツール上の呼称はモチベーション・スキル):動機づけを高める7つの学習方略(想像方略・計画方略・努力方略・環境方略・援助方略・負担軽減方略・報酬方略)を測定する4件法28項目の尺度(藤田・岩田(2001)と伊藤・神藤(2003)を参考に作成)。なお,時点間で異なる項目もあるため,内容が異ならない項目のみを分析に用いた(動機づけ12項目,動機づけ方略19項目)。
結果と考察
まず,両尺度について多母集団での確証的因子分析を行い,時点間での測定不変性が確認された。続いて,動機づけ方略の下位尺度得点(評定値の加算平均)について主成分分析を行った(主成分負荷量は図1の散布図を参照)。第1主成分は,種類に関わらない「方略の使用」と解釈した。第2主成分は伊藤・神藤(2003)を参考に「方略の外発性」と解釈した。
動機づけの自律動機・統制動機と,動機づけ方略の第1・第2主成分を用いて,前の時点の変数を独立変数,後の時点の変数を従属変数とした重回帰分析を行った(Time 1 ? Time 2は表1(a),Time 2 ? Time 3は表1(b))。2つの分析に共通の結果から,1)動機づけ方略の外発性が高いと自律動機が低下し,2)自律動機・統制動機は後に使用する動機づけ方略の外発性に影響することが示唆された。
方略とは学習者が物事を学習する際に能動的に用いる手続き的な知識を指す(Alexander et al., 1998)。学習者は,学習内容の理解に向けた認知方略(Entwistle & Ramsden, 1983)だけでなく,自身の動機づけの調整に向けた動機づけ方略を使うことも知られる(Wolters, 2003)。本邦では学習者が用いる動機づけ方略について,外発・内発の特徴からの分類が試みられている(伊藤・神藤, 2003; 梅本・田中, 2012)。自己決定理論(Ryan & Deci, 2000)では,動機づけの外発・内発は相互に変わり得るものとされる。こうした動機づけの変化は動機づけ方略の外発・内発の変化とも関連すると考えられる。そこで本研究では,中高生の縦断データ(Time1, 2, 3)を分析し,動機づけと動機づけ方略との時間的な相互関係を検討した。
方 法
分析対象データ (株)ワオ・コーポレーションより個人が特定されないよう匿名化された上で提供を受けた「ワオ!ヤル気診断」(以下,評価ツール)の受検者データのうち,Time 1(2012年5月),Time 2(2012年11月),Time 3(2013年5月)の3時点のデータが欠損なく揃っている827名(Time 1時点で中学生340名,高校生487名; 女性435名,男性392名)を分析対象とした。
分析項目 1. 動機づけ(評価ツール上の呼称はモチベーション・タイプ):自己決定理論で仮定される外的・取り入れ・同一化・内的の4つの動機づけと他者志向を測定する4件法25項目の尺度(安藤ら, 2008;藤田・佐藤, 2010;速水ら, 1996;伊藤, 2007, 2009 を参考に作成)。本研究では他者志向は扱わない。また,外的と取り入れを統制動機,同一化と内的を自律動機として合成して扱う(cf. Gagn? et al., 2013)。2. 動機づけ方略(評価ツール上の呼称はモチベーション・スキル):動機づけを高める7つの学習方略(想像方略・計画方略・努力方略・環境方略・援助方略・負担軽減方略・報酬方略)を測定する4件法28項目の尺度(藤田・岩田(2001)と伊藤・神藤(2003)を参考に作成)。なお,時点間で異なる項目もあるため,内容が異ならない項目のみを分析に用いた(動機づけ12項目,動機づけ方略19項目)。
結果と考察
まず,両尺度について多母集団での確証的因子分析を行い,時点間での測定不変性が確認された。続いて,動機づけ方略の下位尺度得点(評定値の加算平均)について主成分分析を行った(主成分負荷量は図1の散布図を参照)。第1主成分は,種類に関わらない「方略の使用」と解釈した。第2主成分は伊藤・神藤(2003)を参考に「方略の外発性」と解釈した。
動機づけの自律動機・統制動機と,動機づけ方略の第1・第2主成分を用いて,前の時点の変数を独立変数,後の時点の変数を従属変数とした重回帰分析を行った(Time 1 ? Time 2は表1(a),Time 2 ? Time 3は表1(b))。2つの分析に共通の結果から,1)動機づけ方略の外発性が高いと自律動機が低下し,2)自律動機・統制動機は後に使用する動機づけ方略の外発性に影響することが示唆された。