The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PG

(501)

Sun. Nov 9, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PG095] 世代性関心の発達的変化についての検討

青年期・成人期前期・中年期の横断調査から

田中美帆1, 齊藤誠一1 (神戸大学)

Keywords:世代性, 成人期

問 題 と 目 的
Erikson (1950 仁科訳 1977) は,世代性について次世代を確立させて導くことへの関心と定義している。丸島・有光 (2009) は,世代性について,中年期において突出した発達であるが,成人期全体に通じる心理社会的な課題であると指摘している。とりわけ成人期前期においては,Erikson (1959) において第一義的に定義された親になるという役割を担う。このような親となることにより形成される世代性の感覚が中年期に形成されるものと異なるのか,また成人期にわたり,世代性がどのような発達的変化をするのかについては,これまで十分に検討されていない。そこで本研究は,青年期である大学生,成人期前期にある妊娠期男女,中年期にある男女を対象に,世代性のうち世代性関心の発達的変化について検討する。
方 法
調査協力者 関西在住の大学生102名 平均年齢19.06歳, SD = .83),第一子妊娠中の女性およびそのパートナー42名 (平均年齢30.48歳, SD = 6.70),中年期男女112名 (平均年齢51.41歳, SD = 3.91)。
倫理的配慮 調査にあたり,神戸大学大学院人間発達環境学研究科における人を直接の対象とする研究審査会に承認および病院長の許可を受けた (番号87, 102)。
調査期間と手続き 2013年11月から2014年1月。質問紙と返信用封筒の入った封筒を,産科医院および知人・友人を介して配布し,郵送で回収。
調査内容 ①フェイスシート:調査協力者の属性 (性別・年齢) ②世代性:世代性関心と世代性行動尺度 (丸島・有光, 2007) のうち世代性関心尺度20項目。創造性 (8項目),世話 (7項目),世代継承性 (5項目)について,「全くあてはまらない (1点)」から「非常にあてはまる (5点)」までの5件法で尋ねた。
結 果
1. 世代性関心尺度の信頼性の検討
本研究の対象者の平均得点は35.09歳であり,丸島・有光 (2009) の対象年齢とは20歳程度の差があるため,再度,クロンバックのα係数による内的整合性を検討した。その結果,創造性ではα = .75,世話ではα = .71,世代継承性ではα = .76であり,丸島・有光 (2009) とほぼ同様の結果が得られた。
2. 世代性関心の発達的変化の検討
性別,世代群について分類し,それぞれについて各下位尺度得点の平均得点とSDを算出した (Table 1)。
性別と世代による影響を検討するため,世代群 (青年期・成人期前期・中年期) と性別の要因による2要因分散分析を行った。その結果,世話において交互作用が有意であった (F (2, 250) = 3.60, p = .03)。単純主効果の検定の結果,中年期女性は,成人期前期女性や青年期女性に比べ得点が高かった (F (2, 168) = 5.96, p = .00)。また,中年期において男性より女性の得点が高かった (F (1, 110) = 10.64, p = .00)。世代群の主効果は,創造性 (F (2, 250) = 3.97, p = .02) および世代継承性 (F (2, 250) = 6.67, p = .00)において有意であった。多重比較の結果,創造性ではどの群においても有意な差は見られなかったが,世代継承性では青年期に比べ中年期の得点が高かった。性別の主効果は創造性において有意であり (F (1, 250) = 13.03, p = .00),女性に比べて男性の得点が高かった。これらの結果から,創造性についてはどの世代群においても男性のほうがより自己発展に努めていること,世話については青年期女性,成人期前期女性に比べ中年期女性,中年期においては女性の方がより次世代の子どもや後輩との直接的なかかわりをしていること,世代継承性においては青年期に比べ中年期により記憶に残る貢献に努めていることが明らかになった。
考 察
本研究では,世代性関心の発達的変化について,青年期,成人期前期,中年期の男女を対象に検討した。その結果,性差はあるものの概ね中年期に向けて世代性が形成されていくことが示唆された。本研究からは,子どもを持った後の世代性については十分に検討されなかったため,今後は,育児中の対象者を加えて検討すること,また個人における変化について縦断的に検討していくことが必要であると考えられる。