日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA073] 児童期の母親の言葉かけが子どもの感情状態や情動表現スタイルの形成に与える影響

森下正康 (京都女子大学)

キーワード:言葉かけ, 信頼関係, 情動表現スタイル

【目 的】
本研究は,児童期の母親のふだんの言葉かけが,その後の子どもの感情状態や情動表現スタイル(emotional expressivity)の形成にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。
【方 法】
女子大学生を対象とし,児童期の母親の養育態度と言葉かけ,現在の感情状態や情動表現スタイルの特徴,および母親との信頼関係について質問紙調査をおこなった。記入漏れのない276名のデータを分析の対象とした。
【結果と考察】
因子分析を行い,尺度を作成し信頼性を確認した。パス解析の結果,次のことが明らかとなった。(1)母親の「受容的」養育態度は「信頼の言葉かけ」や「共感の言葉かけ」を高めていた。それに対して,「統制的」態度は「否定的な言葉かけ」を高めるとともに,直接「否定的情動表現」を高めていた。(2)児童期の「信頼の言葉かけ」や「共感の言葉かけ」のような肯定的な言葉かけは,直接的に,または母親との「信頼関係」と「肯定的感情」状態を介して間接的に「親和的情動表現」を高めていた。(3)それとは対照的に,児童期の「否定的な言葉かけ」は,「否定的感情」状態を介して間接的に「うろたえ情動表現」と「否定的情動表現」を高めていた。(4)母親との「信頼関係」は,子どもの「肯定的感情」を高めそれを介して「親和的情動表現」を高めていた。以上,児童期の母親の言葉かけは,直接的,間接的に子どもの情動表現スタイルの形成に影響することが示唆された。
また,分散分析の結果,(5)母親が「受容的」でなく「共感の言葉かけ」も少ない群は,「否定的情動表現」が多いのに対して,「受容的」でなくても母親から「共感の言葉かけ」が多い群は,「否定的情動表現」が少ないということが明らかとなった(図2)。
(本研究は,稲葉春果との共同研究である)
キーワード:養育態度,言葉かけ,信頼関係,情動表現スタイル