日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PC

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PC012] 意見文の説得力を規定する要因の検討(2)

事前の立場,認知的評価,情緒的評価との関連

鈴木雅之1, 小野田亮介2 (1.昭和女子大学, 2.東京大学大学院・日本学術振興会)

キーワード:意見文, 説得力, 混合効果モデル

問題と目的
主張が一貫している文章や,論理的で頑健な文章は,意見の説得力を高めると考えられる。その一方で,読み手が意見文の内容に興味がない,あるいは嫌悪感を持った場合には説得力を低く評価する可能性があるように,意見文に対する情緒的反応も説得力評価と関わると考えられる(レビューとして,Haidt, 2001)。そこで本研究では,文章に対する認知的評価(論理性・一貫性・反論困難性)と情緒的評価(公平感・興味・嫌悪感)と説得力評価の関連について検討することを目的とする。また本研究では,意見に対する賛否の立場による,説得力評価の違いについても検討する。
方 法
参加者 国立大学1校,私立大学2校の大学生123名(男性68名,女性55名)が参加した。各参加者は,賛成論だけの文章を読む「反論なし条件」,反論を含む文章を読む「反論条件」,反論とそれに対する再反論を含む文章を読む「再反論条件」のいずれかにランダムに割り当てられた。
ターゲット文章 Wolfe et al. (2009) で使用された35個のテーマから,予備調査を通して18個のテーマを選定して使用した。文章構造は小野田・鈴木(2015)を参照のこと。
評価項目 まず,18のターゲット文章の主張部分を提示し,各文章の主張に対する賛成度を4件法(1:反対だ~4:賛成だ)で求めた。次に,各文章に対して,「論理性(この意見は論理的だ)」,「一貫性(この意見には一貫性がある)」,「反論困難性(この意見に対して反論するのは困難だ)」,「公平感(この意見は公平だ)」,「興味(この意見は興味深い)」,「嫌悪感(この意見には嫌悪感をもつ)」,「説得力(この意見は説得的だ)」の7項目について,5件法(1:まったくそう思わない~5:とてもそう思う)で回答を求めた。
結果と考察
本研究では,混合効果モデルを用いて分析を行った。なお,文章構造によって,いずれの評価得点にも差はなかったことから,分析では文章構造の影響を考慮しなかった。
まず,説得力評価と事前の賛否,認知的評価,情緒的評価の関連にテーマ間差と個人間差があるかを検討した結果,これらの関連にテーマ間差はないが,個人間差はあることが示された。そのため,関連に個人間変動があることを仮定したモデルで分析を行った(Table 1・2)。分析の結果,主張に賛成の立場を示す場合や,論理性や一貫性,反論困難性が高い文章,公平感や興味を感じる文章ほど説得力が高いと評価される傾向にあることが示された。さらに,嫌悪感のある文章ほど説得力が低いと評価される傾向にあることが示された。