The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PC

Wed. Aug 26, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PC013] メタ認知活動と学習指導の関係性について

読解指導を中心として

片岡実1, 井上弥2 (1.広島大学大学院, 2.広島大学)

Keywords:読解方略, メタ認知, 段階的な指導

問題と目的
現在学校現場で行なわれている学習指導は,問題解決型の学習が主であるが,知識習得におわれメタ認知機能の伸長を図ることが授業内で実施されにくいと推察される。
清川・犬塚(2002)は,モニター役を設定することで,読解過程中に一人でおこなわれる内的なメタ認知活動を外化することにより,指導の経過に伴って理解が深まることから,読解内容を整理したり要旨を掴んだりすることに,メタ認知が有効に機能することを明らかにしている。しかし,対象となった生徒は1名であり,その学業成績は学校内の位置で上位4分の1程度であることや読解過程に関する知識の指導時間が1単位時間のみであったことから,メタ認知活動を外化する指導の有効性を詳細に検討する必要があると考えられる。
そこで本研究では,McNamaraら(2007)が作成した読解方略使用モデルをもとに,児童・生徒が読解方略(①読む準備②文章中の単語・文・情報を解釈する③文章を組織化・再構造化・統合すること)を精緻化するにあたり,指導者が読解方略の指導とメタ認知の獲得を段階的に進めることで児童の読解方略の理解が促進することを確認する。
方 法
対象者:広島県内の中学2年生8名。このうち,事前事後ともデータの揃っていた6名(男子2名,女子4名)を分析対象とした。
説明文教材:西江雅之著「伝え合い」を用いた読解指導の授業を行なった。
学習手続き:授業時間は全12単位時間である。(1日分の授業時間数は1単位時間を45分間と設定し,2単位時間を指導した。)この指導を1週間に2日の割合で設定し,3週間実施した。
指導の中では,メタ認知の活性化のためのステップとして,①生徒の学習経験を聞くことで読解の状況を確認し,意欲を高めておく段階,②2段落までをつぶやき読みをし,作者の置かれた場の状況を理解し,考えながら読む読み方の練習をする段階,③教師の要約する様子を観察する段階, ④生徒1名が教師と対話しながら要約をする様子を観察する段階,⑤学習ガイドを利用し生徒同士で話し合いながら要約をする段階,⑥学習ガイドを利用しながら生徒一人で要約をする段階,⑦読み取った内容から作者の主張について考える段階を設定した。
読解力診断:自作のテスト問題と佐藤・新井(1998)のメタ認知尺度,吉野(2008)の学習方略使用尺度を用い,授業の前後の変化を測定し,評価を行なった。
結果と考察
実験授業の前後に行なった読解テスト,メタ認知・読解方略の使用の結果をTable 1に示した。
それぞれの事前事後の変化について対応のあるt検定を行った。読解テスト得点に有意な変化はみられなかった。次に,メタ認知のモニタリング得点,コントロール得点,反省的モニタリング得点のいずれにも有意な変化はみられなかった。
読解方略の作業方略は有意に高くなっていた(t(5)=2.64, p<.05)。また,柔軟的方略(t(5)= 2.03, p<.10)とプランニング方略(t(5)=2.32, p<.10)は高くなる傾向がみられた。
これらの結果から,読解方略は使用するようになったと考えられる。メタ認知に関しては,有意ではないが平均得点そのものは高くなっていることを考えれば,十分ではないが,メタ認知の使用が高まり始めていたとも考えられよう。しかし,読解テストの得点に反映されるまでの効果はみられなかった。
本研究の段階的メタ認知使用の手続きは,ある程度の効果があると思われる。