日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PC

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PC015] 中学・高校生の学習の態度プロフィールと学習の悩みの連関

プロフィールの個人間差・個人内差に着目して

児玉裕巳1, 石隈利紀2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:中学・高校生, 学習の態度, 学習の悩み

問題と目的
児童・生徒への調査(例えば,内閣府,2013)から,学習の悩みは認知・行動・情緒の3側面にわたる不適応であり,特に中学・高校生において悩みが大きいことがわかる。そこで児玉・石隈(印刷中)は悩みの実態を捉えることを意図して,中学・高校生を対象に3側面からなる学習に対する「態度」尺度を作成し計9因子を見出した(認知面では関与肯定・コスト受容・遂行目標の重視,行動面では習慣的な積極行動・テスト課題対処・対処回避,情緒面では充実感・統制感・学習の不安であった)。その上で本研究では学習の態度プロフィールと学習の悩みとの連関について質的に検討することを目的とした。
方法
2012年12月~2014年7月に同意が得られた中学生(N=8)と高校生(N=8)に学習の態度尺度に回答してもらい個人プロフィールを作成した。その上で,個人間差(基準値:z得点±0.68)で高い・低いを,個人内差(有意水準15%)で強い・弱いを調べ,さらにこれらの結果に「学習の様子」「学習の悩み」を加味して,個人の態度プロフィールと悩みとの連関,および考えられる援助法について考察した。
結果と考察
ケース例1:中学1年aさん(個人プロフィールはFigure 1-a) 普段の学習は,わからないところを母親が教えることがあるが,どうしても理解できないことが多い。頑張るように促しても長続きせず,集中力も悪い。悩みとして「勉強がわからない,全然面白いと思えないし,どうやったらいいのかとても心配である」があった。以上より,勉強がうまく理解できないことから,学習を大変なものだと考え,それが対処回避やポジティブ感情の低さに表れている。特に,「うまくできない」という統制感の弱さが顕著であり,自己評価の低さが推察される。一方で,学習に関わることを肯定的に捉える傾向はaさんの中では強く,また習慣的な積極行動・テスト課題対処は平均程度であるので,真面目に取り組もうとしている姿勢があると考えられる。aさんなりの適切なレベルの課題や方法を具体的に提示しポジティブ感情を上げることが必要ではないか。
ケース例2:高校2年Cさん(個人プロフィールはFigure 1-b)普段の学習は,まったく関心がもてず,家では勉強している姿を見たことがない。好きな趣味のこと以外は放置している感じである。悩みとして「成績は大事だと思うけど,勉強が人間にとって大事だとは思えない。大学受験がどうなるのか心配」があった。以上より,学習の態度は全体的に大変ネガティブである一方で,Cさんの中では学習に対するポジティブな考え(関与肯定とコスト受容)は強いことから,真面目に関わらなければと思いつつ行動や気持ちが伴わないので,とても不安定な状態であり,学習性無力感に陥っていると考えられる。このような状態についてのフィードバックを行うことが状況の改善の動機づけとなり,また具体的解決策を考える足がかりになるのではないか。