[PG030] 共同による学習環境デザインの実際(2)
小学生の自然科学領域の概念発達に基づく授業デザイン
Keywords:概念発達, 理科教育, 共同学習
1. 問題と目的
2008年に改訂された学習指導要により「言語活動の充実」が求められるようになり,理科教育においては「考察」と「科学概念」の習得と活用を盛り込んだ学習活動が進められている。ヴィゴツキー(2001)は,自覚性と随意性を科学的概念構築の指標として捉えることができるとしている。このような科学的概念の活用の特徴を具体化した学習として,生活的な問題を科学的に解決する問題解決学習が考えられる(森本ら, 2010)。小学校学習指導要領理科編では,問題解決学習の流れの中で,子供たちが身の回りの事象に対して問題意識を持ち,それを解決するために既有知識を自覚的・随意的に活用して予想や仮説を設定し,検証するための実験・観察を計画・実行し,得られた結果の考察をもとに科学的概念としての結論を導くことを目指している。つまり,子供は授業において,身の回りの事象に関する生活的概念と科学的概念の間の理論的関係の確立を行うことになる。
本研究では,小学校理科の授業において,子供が生活的概念と科学的概念をどのように相互に結びつけているのかを,授業中の教師と児童の発言及び黒板・ノートへの記述を分析することで,その実態を把握することを目的とする。
2. 方法
調査対象は,A地方の公立小学校で平成26年7月から平成27年2月の間に行われた3,4,6年生の理科の授業とした。授業観察を行い,教師の発言・板書と児童の発言・ノートへの記述を記録し,データとして処理した。
3. 結果
それぞれの学年について,科学的概念を活用するように教師が児童に行っている働きかけの具体例を以下の表1に示す。
教師は身の回りの事象について科学的に説明できるように,生活的概念と科学的概念の結び付けを行っていることが分かった。
次に,それぞれの学年の児童の予想・仮説とその理由について記述もしくは発言の具体例を以下の表2に示す。
3年生では経験をもとに,4年生では経験のみではなく復習の内容をもとに予想を立てていた。6年生では,既習事項を用いた仮説を立てていた。
4. 考察
3年生では経験をもとに予想を立て,生活的概念のみを活用したと推察する。そのため,生活と身近な実験を行い,数値化させて生活的概念と科学的概念を結び付けていると考える。また,この段階では両概念の結び付けにより科学的概念を構築している考察する。4年生では既習事項を活用したことから,授業冒頭の復習により児童が活用すべき知識を自覚したのではないかと推察する。しかし,生活的概念を用いた予想も立てており,教師の提示がない部分については自覚的に科学的概念を用いることができないと考えられる。6年生では専門的な用語を用い,既習事項を児童自ら活用することができ,科学的概念を自覚的に活用した仮説を立てたと推察する。しかし,光合成のように言葉のみで内容理解が不十分なものあり,科学的概念の構築はまだ途中段階であると考えられる。また教師の働きかけによって,様々な事象に対して科学的概念を自覚的に活用できるように,授業内容以外の身近な事象と結び付けられていると考察する。しかし,学年が上がるにつれ生活への振り返りが減るため,科学的概念にリアリティを回復させることも大切であると考えらえる。
2008年に改訂された学習指導要により「言語活動の充実」が求められるようになり,理科教育においては「考察」と「科学概念」の習得と活用を盛り込んだ学習活動が進められている。ヴィゴツキー(2001)は,自覚性と随意性を科学的概念構築の指標として捉えることができるとしている。このような科学的概念の活用の特徴を具体化した学習として,生活的な問題を科学的に解決する問題解決学習が考えられる(森本ら, 2010)。小学校学習指導要領理科編では,問題解決学習の流れの中で,子供たちが身の回りの事象に対して問題意識を持ち,それを解決するために既有知識を自覚的・随意的に活用して予想や仮説を設定し,検証するための実験・観察を計画・実行し,得られた結果の考察をもとに科学的概念としての結論を導くことを目指している。つまり,子供は授業において,身の回りの事象に関する生活的概念と科学的概念の間の理論的関係の確立を行うことになる。
本研究では,小学校理科の授業において,子供が生活的概念と科学的概念をどのように相互に結びつけているのかを,授業中の教師と児童の発言及び黒板・ノートへの記述を分析することで,その実態を把握することを目的とする。
2. 方法
調査対象は,A地方の公立小学校で平成26年7月から平成27年2月の間に行われた3,4,6年生の理科の授業とした。授業観察を行い,教師の発言・板書と児童の発言・ノートへの記述を記録し,データとして処理した。
3. 結果
それぞれの学年について,科学的概念を活用するように教師が児童に行っている働きかけの具体例を以下の表1に示す。
教師は身の回りの事象について科学的に説明できるように,生活的概念と科学的概念の結び付けを行っていることが分かった。
次に,それぞれの学年の児童の予想・仮説とその理由について記述もしくは発言の具体例を以下の表2に示す。
3年生では経験をもとに,4年生では経験のみではなく復習の内容をもとに予想を立てていた。6年生では,既習事項を用いた仮説を立てていた。
4. 考察
3年生では経験をもとに予想を立て,生活的概念のみを活用したと推察する。そのため,生活と身近な実験を行い,数値化させて生活的概念と科学的概念を結び付けていると考える。また,この段階では両概念の結び付けにより科学的概念を構築している考察する。4年生では既習事項を活用したことから,授業冒頭の復習により児童が活用すべき知識を自覚したのではないかと推察する。しかし,生活的概念を用いた予想も立てており,教師の提示がない部分については自覚的に科学的概念を用いることができないと考えられる。6年生では専門的な用語を用い,既習事項を児童自ら活用することができ,科学的概念を自覚的に活用した仮説を立てたと推察する。しかし,光合成のように言葉のみで内容理解が不十分なものあり,科学的概念の構築はまだ途中段階であると考えられる。また教師の働きかけによって,様々な事象に対して科学的概念を自覚的に活用できるように,授業内容以外の身近な事象と結び付けられていると考察する。しかし,学年が上がるにつれ生活への振り返りが減るため,科学的概念にリアリティを回復させることも大切であると考えらえる。