[PH038] 看護学生のコミュニケーション技術の変化の検討(3)
看護における個人目標の縦断的調査から
キーワード:個人目標, コミュニケーション技術, 自己効力感
目 的
看護教育において,コミュニケーション技術の育成は最も重要な課題の1つであろう。本研究は,技術習得のための行動を動機づける目標の性質を探るため,学生が自由記述した看護に対する個人目標について以下の三点を検討する。1.学生はコミュニケーションに関する目標を持つのか,2.コミュニケーションに関連する目標を持つのはどのような学生か,3.コミュニケーションに関する目標の性質は年次による変化があるか。
方 法
調査対象と時期 大阪府内の私立A短期大学看護学科27名(女性,平均年齢22.9歳)を対象とした。2010年12月(1年次),2012年2月(2年次),2013年1月(3年次)に同一の調査を実施した。
質問紙 1.看護における個人目標 看護において個人が目標としていることを自由記述として2つ記入させた。また,その目標の遠隔性(vs.近接性),目標の困難性(vs.容易性),目標の接近性(vs.回避性)について10cmのスケール上に印を入れる方式て回答を求め,1cmを1点として10点満点で得点化した。2.上野(2004)のコミュニケーション技術評価スケール 「コミュニケーション基本技術」(13項目),「非言語的コミュニケーション技術」(3項目),「クライエントの感情の明確化」(3項目)について5件法て回答を求めた。下位尺度ごとに合計点を項目数で割り尺度得点とした。3.坂野・東條(1986)の一般性セルフ・エフィカシー尺度 「行動の積極性」(7項目),「失敗に対する不安」(5項目),「能力の社会的位置つけ」(4項目)についてYes,Noで回答を求め,下位尺度得点を合計したものを学生の自己効力感得点とした。
結果と考察
1.コミュニケーションに関する目標の出現頻度
2つの目標のうち,コミュニケーションに関連する記述(例:患者に信頼されるようになること)が1つでもあったのは,1年次は15名(55.6%),2年次は12名(44.4%),3年次は13名(48.1%)で,学生にとって特に優先度が高い目標ではないことがわかった。他には学業に関する目標(例:専門的知識を増やす)がコミュニケーションと同程度あり,国家試験合格に関する目標が1,2年次(6名)と比べ3年次は倍になった(12名)。
2.コミュニケーションに関する目標を持つ学生の特徴
2つの目標のうち1つでもコミュニケーションに関する目標を報告した学生とそうでない学生で,コミュニケーション技術下位尺度と自己効力感の得点を比較した(Table 1)。1年次は自己効力感が低い学生,2年次は非言語的コミュニケーション技術が低い学生,3年次は逆に非言語的コミュニケーション技術が高い学生がコミュニケーション関連目標を持つ傾向があった。1・2年次と比較して3年次は,自分の不足点を補うためだけでなくより高い水準を目指す目標としてコミュニケーション関連目標を持つのかもしれない。
3.コミュニケーションに関する目標の変化
1年次から3年次にかけてのコミュニケーションに関連する目標の3つの次元の得点(SD)は,遠隔性が5.17 (2.39), 4.92 (2.84), 4.62 (1.39),困難性が5.87 (2.69), 6.96 (2.62), 5.49 (1.84),接近性が7.87 (2.07), 7.29 (2.09), 8.49 (1.76) だった。次にコミュニケーション技術,自己効力感との相関を年次別に算出した(Table 2)。2年次のコミュニケーション関連目標には困難性の低さ(容易性の高さ)と,3年次については接近性の高さとコミュニケーション技術や自己効力感との相関があり,目標内容の年次による質的な違いを示唆する結果となった。
看護教育において,コミュニケーション技術の育成は最も重要な課題の1つであろう。本研究は,技術習得のための行動を動機づける目標の性質を探るため,学生が自由記述した看護に対する個人目標について以下の三点を検討する。1.学生はコミュニケーションに関する目標を持つのか,2.コミュニケーションに関連する目標を持つのはどのような学生か,3.コミュニケーションに関する目標の性質は年次による変化があるか。
方 法
調査対象と時期 大阪府内の私立A短期大学看護学科27名(女性,平均年齢22.9歳)を対象とした。2010年12月(1年次),2012年2月(2年次),2013年1月(3年次)に同一の調査を実施した。
質問紙 1.看護における個人目標 看護において個人が目標としていることを自由記述として2つ記入させた。また,その目標の遠隔性(vs.近接性),目標の困難性(vs.容易性),目標の接近性(vs.回避性)について10cmのスケール上に印を入れる方式て回答を求め,1cmを1点として10点満点で得点化した。2.上野(2004)のコミュニケーション技術評価スケール 「コミュニケーション基本技術」(13項目),「非言語的コミュニケーション技術」(3項目),「クライエントの感情の明確化」(3項目)について5件法て回答を求めた。下位尺度ごとに合計点を項目数で割り尺度得点とした。3.坂野・東條(1986)の一般性セルフ・エフィカシー尺度 「行動の積極性」(7項目),「失敗に対する不安」(5項目),「能力の社会的位置つけ」(4項目)についてYes,Noで回答を求め,下位尺度得点を合計したものを学生の自己効力感得点とした。
結果と考察
1.コミュニケーションに関する目標の出現頻度
2つの目標のうち,コミュニケーションに関連する記述(例:患者に信頼されるようになること)が1つでもあったのは,1年次は15名(55.6%),2年次は12名(44.4%),3年次は13名(48.1%)で,学生にとって特に優先度が高い目標ではないことがわかった。他には学業に関する目標(例:専門的知識を増やす)がコミュニケーションと同程度あり,国家試験合格に関する目標が1,2年次(6名)と比べ3年次は倍になった(12名)。
2.コミュニケーションに関する目標を持つ学生の特徴
2つの目標のうち1つでもコミュニケーションに関する目標を報告した学生とそうでない学生で,コミュニケーション技術下位尺度と自己効力感の得点を比較した(Table 1)。1年次は自己効力感が低い学生,2年次は非言語的コミュニケーション技術が低い学生,3年次は逆に非言語的コミュニケーション技術が高い学生がコミュニケーション関連目標を持つ傾向があった。1・2年次と比較して3年次は,自分の不足点を補うためだけでなくより高い水準を目指す目標としてコミュニケーション関連目標を持つのかもしれない。
3.コミュニケーションに関する目標の変化
1年次から3年次にかけてのコミュニケーションに関連する目標の3つの次元の得点(SD)は,遠隔性が5.17 (2.39), 4.92 (2.84), 4.62 (1.39),困難性が5.87 (2.69), 6.96 (2.62), 5.49 (1.84),接近性が7.87 (2.07), 7.29 (2.09), 8.49 (1.76) だった。次にコミュニケーション技術,自己効力感との相関を年次別に算出した(Table 2)。2年次のコミュニケーション関連目標には困難性の低さ(容易性の高さ)と,3年次については接近性の高さとコミュニケーション技術や自己効力感との相関があり,目標内容の年次による質的な違いを示唆する結果となった。