[PD56] 父親の子育て参加(2)
成育歴が現在の育児に与える影響
Keywords:夫婦, ずれ, 養育
目 的
父親の子育て参加(1)で父母は成育歴によって現在の育児に違いがあることが明らかになった。そこで,夫婦間の育児にずれがあるか,またそのずれは成育歴とどう関連しているか明確にする。
方 法
A県B市C幼稚園の保護者305名C幼稚園の保護者213名計519名に質問紙調査を実施し分析した。
質問紙の構成:子育て観について(子ども観尺度 11問)成育歴について(親の養育態度尺度・親子関係認知尺度 17問)現在している育児について(11問)子どもの態度について(17問)の計56問を4件法で行った。父母の成育歴を高中低に分け,9通りの組み合わせをつくり,その組み合わせごとの夫婦の現在の育児と認識のずれ(父親の得点-母親の得点)について,父親と母親の2要因参加者間分散分析を行った。
結果と考察
現在の育児の叱責に関して,父親の成育歴の主効果が有意となり(F=4.29,df=2/207,p<.01),父親の成育歴得点が中程度であると父親の叱責は母親の評価以上であるが,父親の成育歴得点が低いと父親の叱責は母親の評価以下になることが分かった。(図1)
子どもへの受容に関して,父母の成育歴の交互作用が有意となり(F=10.05,df=2/207,p<.01),下位検定の結果,母親の成育歴得点が低程度のとき,父親の成育歴得点が高程度であると,父親の受容は母親の評価以上であり,父親の成育歴得点が中・低程度であると,母親の評価以下になる(F=4.33,df=4/207,p<.05)(図2)。一方,子どもへのしつけに関しては,父親の成育歴の主効果が有意となり,父親の成育歴得点が高程度であると,母親の評価以上であることが示された(F=8.94,df=2/207,p<.01)。(図3)
このことから,男性は自分が受けた養育が現在の育児に大きく影響する為,成育歴得点が高いと自分が受けた養育そのままで満足してしまうと推測される。自分が受けた養育を自分の子どもに行うことで「自分は十分良い育児をしている」と思ってしまうのではないかと考えられる。家庭における育児がストレスなく遂行されるためには,父親の成育歴得点が高い場合,受けた成育上の経験を同じように子どもに与えるのではなく,目の前にいる自分の子どもにはどんな養育が向いているか,父親が「母親と同じ立場」で育児することを意識することで,夫婦のずれの解消が図れるのかもしれない。そのために3つのことがいえると考えられる。1つ目は,父親が経験以外の知識をつけること。2つ目は,新しく得た知識を含め,パートナーと十分に話し合うこと。3つ目は,母親が父親を信頼して育児を任せることである。
父親の子育て参加(1)で父母は成育歴によって現在の育児に違いがあることが明らかになった。そこで,夫婦間の育児にずれがあるか,またそのずれは成育歴とどう関連しているか明確にする。
方 法
A県B市C幼稚園の保護者305名C幼稚園の保護者213名計519名に質問紙調査を実施し分析した。
質問紙の構成:子育て観について(子ども観尺度 11問)成育歴について(親の養育態度尺度・親子関係認知尺度 17問)現在している育児について(11問)子どもの態度について(17問)の計56問を4件法で行った。父母の成育歴を高中低に分け,9通りの組み合わせをつくり,その組み合わせごとの夫婦の現在の育児と認識のずれ(父親の得点-母親の得点)について,父親と母親の2要因参加者間分散分析を行った。
結果と考察
現在の育児の叱責に関して,父親の成育歴の主効果が有意となり(F=4.29,df=2/207,p<.01),父親の成育歴得点が中程度であると父親の叱責は母親の評価以上であるが,父親の成育歴得点が低いと父親の叱責は母親の評価以下になることが分かった。(図1)
子どもへの受容に関して,父母の成育歴の交互作用が有意となり(F=10.05,df=2/207,p<.01),下位検定の結果,母親の成育歴得点が低程度のとき,父親の成育歴得点が高程度であると,父親の受容は母親の評価以上であり,父親の成育歴得点が中・低程度であると,母親の評価以下になる(F=4.33,df=4/207,p<.05)(図2)。一方,子どもへのしつけに関しては,父親の成育歴の主効果が有意となり,父親の成育歴得点が高程度であると,母親の評価以上であることが示された(F=8.94,df=2/207,p<.01)。(図3)
このことから,男性は自分が受けた養育が現在の育児に大きく影響する為,成育歴得点が高いと自分が受けた養育そのままで満足してしまうと推測される。自分が受けた養育を自分の子どもに行うことで「自分は十分良い育児をしている」と思ってしまうのではないかと考えられる。家庭における育児がストレスなく遂行されるためには,父親の成育歴得点が高い場合,受けた成育上の経験を同じように子どもに与えるのではなく,目の前にいる自分の子どもにはどんな養育が向いているか,父親が「母親と同じ立場」で育児することを意識することで,夫婦のずれの解消が図れるのかもしれない。そのために3つのことがいえると考えられる。1つ目は,父親が経験以外の知識をつけること。2つ目は,新しく得た知識を含め,パートナーと十分に話し合うこと。3つ目は,母親が父親を信頼して育児を任せることである。