The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD(65-89)

ポスター発表 PD(65-89)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PD70] 発達障害のある子どもの学習・行動・情緒面のつまずきの検討

玉木宗久 ((独)国立特別支援教育総合研究所)

Keywords:発達障害, つまずき, 通級

はじめに
 LD,ADHDの発達障害のある子どもが,通級による指導(以下,通級と略す)の対象として学校教育法施行規則に規定されてからほぼ10年が経過した。利用者は年々増加し続けており,通級の充実は特別支援教育の重要な課題となっている。
 通級を充実させるためには,子どもの教育的ニーズを的確に把握していくことが重要である。本稿では,通常の学級担任及び通級担当教員への調査からLD,ADHD,ASD等の発達障害のある児童・生徒の学習,行動,情緒面のつまずきについて探索的に検討した。
方   法
1)調査対象 小・中学校の通常の学級担任400名(通常群),発達障害・情緒障害対象通級の担当教員163名(通級群)。全般的な知的発達の遅れがなく,かつ,LD,ADHD,ASDのいずれかの“診断がある”または“傾向がある”子どもをそれぞれLD群,ADHD群,ASD群として集計すると,通級群の内訳はLDが4名(2.5%),ADHDが24名(14.7%),ASDが37名(22.7%),LD+ADHDが24名(14.7%),LD+ASDが12名(7.2%),ADHD+ASDが40名(24.5%),LD+ADHD+ASDが22名(13.5%)となった。
2)手続き 某自治体の発達障害・情緒障害対象通級のあるすべての小・中学校に調査を依頼し (回収率約72%),通常の学級担任410名,通級担当教員190名から回答を得た。なお,調査は事前に,個人情報の保護など倫理面の配慮に関して所属機関倫理委員会の審査を受けた。
3)調査内容 調査は子どもの学習,行動,認知,情緒等に関する質問から構成されており,本稿では以下の質問に絞って分析した:“規則的な生活を送っていますか(生活習慣)”,“読み,書き,計算の基礎学力の面でつまずきがみられますか(基礎学力)”,“授業や学校の活動に参加できないことがありますか(活動参加)”,“気分や情緒が不安定になることがありますか(気分・情緒)”
結果・考察
 生活習慣への回答は,通常群では“規則的”が83.3%,“どちらともいえない”が7.1%,“不規則”が6.7%,通級群は“規則的”が74.8%,“どちらともいえない”が17.0%,“不規則”が8.2%。障害群別ではLD+ADHD+ASD群で“規則的”の回答が最も少なかった(54.5%)。基礎学力のつまずきは,通常群では“しばしば”が10.3%,“ときどき”が10.8%,“たまに”が17.5%,“ない”が61.5%に対し,通級群は“しばしば”が31.3%,“ときどき”が19.6%,“たまに”が22.1%,“ない”が27.0%であった。障害群別ではLD及びADHDのある群でつまずきのあるものが多く,反対にASD群では“しばしば”と“ときどき”を合わせても16.2%で,通常群と違いがないことが示唆された。活動参加のつまずきは,通常群の多く(85.8%)は“ない”であったが,通級群は“しばしば”が22.1%,“ときどき”が16.0%,“たまに”が23.3%であった。いずれの障害群も通常群よりつまずくものの割合が高かったが,ADHD群やADHD+ASD群の割合が最も高かった(“しばしば”と“ときどき”で46-53%)。気分・情緒のつまずきについては,通常群の59.5%が“ない”であったが,通級群では,“しばしば”が28.8%,“ときどき”が42.9%,“たまに”が20.2%で,また,いずれの障害群も“しばしば”と“ときどき”を合わせたものの割合が60%を超えており,高いニーズがあることが示唆された。