[PE42] 高校生における達成目標,動機づけ調整方略,学習行動の関連
学年差に着目した検討
Keywords:達成目標, 動機づけ調整方略, 高校生
問題と目的
「やる気がおこらないため勉強が進まない」という悩みを挙げる高校生は多い (Benesse教育開発センター, 2015)。このやる気が起こらない原因のひとつとして考えられるのが,やる気の上手な高め方が分からない,つまり動機づけ調整方略の問題であるといえるだろう。
これまで,動機づけ調整方略とメタ認知方略は個別に扱われ,それぞれ達成目標などの動機づけ信念 (Wolters, 2000) および学習の持続性 (梅本・田中, 2012),認知的方略 (Wolters, 1999) との関連が明らかにされている。しかし,現状では動機づけ調整方略とメタ認知方略を「コントロール方略」として並列に扱った研究はほとんどなく,動機づけ信念,コントロール方略が学習行動や認知的方略に影響するプロセスは明らかにされていない。また,動機づけ調整方略に関する知見は少なく,特に高校生を対象とした動機づけ調整方略の研究は国内でなされていない。以上より,本研究では高校生におけるコントロール方略の役割をより詳細にするため,「達成目標―コントロール方略―学習行動・認知的方略」のモデルを学年別に検討することを目的とする。
方 法
対象者 三重県内の高校1,2,3年生913名(男子509名, 女子403名)。
質問紙 ①動機づけ調整方略尺度 伊藤・神藤 (2003) と梅本・田中 (2013) を参考に作成した (26項目)。②メタ認知方略 市原・新井 (2006) の9項目を選択して用いた。③達成目標尺度 田中・山内 (2000) の16項目。④認知的方略 佐藤・新井 (1998) によって作成された「学習方略使用尺度」の「認知的方略」5項目。⑤課題先延ばし行動 藤田・仲澤 (2013) の6項目を選択して用いた。⑦学習時間
結果と考察
尺度構成 動機づけ調整方略尺度26項目に対して,探索的因子分析と信頼性の検討を行い,達成想像方略,興味高揚方略,成績重視方略,協同方略の4因子を採用した。
モデルの検討 全学年に対して,モデルを検証した。モデルの適合度はGFI=.981, AGFI=.949, CFI=.974, RMSEA=.057となり説明率に問題はないと判断した。
学年差の検討 多母集団同時分析モデルの構築によるサンプル群比較を行った。有意でないパスを削除したところ,Figure 1のような結果となった。学年全体でみると成績重視方略は認知的方略や学習行動に影響を及ぼしていなかった。また,メタ認知方略は認知的方略を強く促進していた。学年別に検討すると,高学年になるほど熟達目標から達成想像方略,興味高揚方略,協同方略など動機づけ調整方略へのパス係数の値が有意に高い値 (p<.05) を取っていた。また,高学年になるほど達成想像方略から学習時間,課題先延ばしへのパス係数および,興味高揚方略から認知的方略への値が有意に高い値 (p<.05) を取っていることが示された。高学年ほど自己の成長や課題の深い理解などが着目され,個人内基準である熟達目標が自律的な動機づけ方略を促進し,学習行動に繋がると考えられる。
「やる気がおこらないため勉強が進まない」という悩みを挙げる高校生は多い (Benesse教育開発センター, 2015)。このやる気が起こらない原因のひとつとして考えられるのが,やる気の上手な高め方が分からない,つまり動機づけ調整方略の問題であるといえるだろう。
これまで,動機づけ調整方略とメタ認知方略は個別に扱われ,それぞれ達成目標などの動機づけ信念 (Wolters, 2000) および学習の持続性 (梅本・田中, 2012),認知的方略 (Wolters, 1999) との関連が明らかにされている。しかし,現状では動機づけ調整方略とメタ認知方略を「コントロール方略」として並列に扱った研究はほとんどなく,動機づけ信念,コントロール方略が学習行動や認知的方略に影響するプロセスは明らかにされていない。また,動機づけ調整方略に関する知見は少なく,特に高校生を対象とした動機づけ調整方略の研究は国内でなされていない。以上より,本研究では高校生におけるコントロール方略の役割をより詳細にするため,「達成目標―コントロール方略―学習行動・認知的方略」のモデルを学年別に検討することを目的とする。
方 法
対象者 三重県内の高校1,2,3年生913名(男子509名, 女子403名)。
質問紙 ①動機づけ調整方略尺度 伊藤・神藤 (2003) と梅本・田中 (2013) を参考に作成した (26項目)。②メタ認知方略 市原・新井 (2006) の9項目を選択して用いた。③達成目標尺度 田中・山内 (2000) の16項目。④認知的方略 佐藤・新井 (1998) によって作成された「学習方略使用尺度」の「認知的方略」5項目。⑤課題先延ばし行動 藤田・仲澤 (2013) の6項目を選択して用いた。⑦学習時間
結果と考察
尺度構成 動機づけ調整方略尺度26項目に対して,探索的因子分析と信頼性の検討を行い,達成想像方略,興味高揚方略,成績重視方略,協同方略の4因子を採用した。
モデルの検討 全学年に対して,モデルを検証した。モデルの適合度はGFI=.981, AGFI=.949, CFI=.974, RMSEA=.057となり説明率に問題はないと判断した。
学年差の検討 多母集団同時分析モデルの構築によるサンプル群比較を行った。有意でないパスを削除したところ,Figure 1のような結果となった。学年全体でみると成績重視方略は認知的方略や学習行動に影響を及ぼしていなかった。また,メタ認知方略は認知的方略を強く促進していた。学年別に検討すると,高学年になるほど熟達目標から達成想像方略,興味高揚方略,協同方略など動機づけ調整方略へのパス係数の値が有意に高い値 (p<.05) を取っていた。また,高学年になるほど達成想像方略から学習時間,課題先延ばしへのパス係数および,興味高揚方略から認知的方略への値が有意に高い値 (p<.05) を取っていることが示された。高学年ほど自己の成長や課題の深い理解などが着目され,個人内基準である熟達目標が自律的な動機づけ方略を促進し,学習行動に繋がると考えられる。