The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 4:00 PM - 6:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PF16] 高校生の進路決定とアイデンティティ発達・友人関係との関連

藤井三和子1, 中間玲子2 (1.兵庫県立北須磨高等学校, 2.兵庫教育大学大学院)

Keywords:進路決定, アイデンティティ発達, 友人関係

問題と目的
 高校生は,中学段階よりも広い視野において卒業後の進路を決定するという課題に取り組むこととなる。従来,職業選択は,青年のアイデンティティを考える上で重要な領域とされてきた。現在,多くの中学生・高校生が,各学校段階で進路決定の課題に直面する。この課題も,職業選択に類似する,アイデンティティ発達を促す要素を含むのではないかと予想される。
 だが,青年期延長説が説かれて久しく,中学生や高校生(特に進学校)の進路決定は,とりあえず次の進学先を決めるという作業に過ぎず,職業選択や生き方に直面する作業は先延ばしされているという可能性も指摘されてきた。
 では実際に,進路決定という作業は,アイデンティティ発達とどのように関連するのだろうか。本研究ではこの点について検討する。さらに友人関係との関連も検討し,進路決定という作業に取り組む中で,個人内の発達のみならず,関係性の面でも何らかの変化が生じるのかを検討する。
方   法
手続き 高等学校での質問紙調査。
対象 公立高等学校2校の高校2年生の生徒394名(男子159名 女子235名) 
調査内容 ①卒業後の進路決定の有無について「決めている」「決めていない」の2件法。②多次元アイデンティティ発達尺度(DIDS-J)中間・杉村・畑野・溝上・都筑(2015)による24項目(本来25項目だが不備による),5件法。③対友人態度尺度 56項目,5件法。友人に対する働きかけや思いを測定することを目的として作成した尺度で「従来型」「一人志向型」「モデル型」「気遣い型」「依存型」「つながり型」「友だち希求型」「表層型」「寛容型」の9因子からなる。
結   果
 アイデンティティ発達の様相を従属変数に,進路決定の有無を独立変数,DIDSの各下位尺度得点を従属変数とした一要因分散分析を行った(Table 1)。その結果,反芻的探求を除くすべての下位尺度において,進路決定している者がしていない者よりも有意に高い得点を示した。反芻的探求に関しては,進路決定していない者の得点が有意に高かった。
 友人関係については進路選択の有無と共に性差も要因とした二要因分散分析を行った。その結果,「モデル型」における交互作用(F(1,358)=6.63,p <.05),「依存型」における性の主効果(F(1,358)=3.95,p <.05)が有意であったが,進路選択の主効果は見られなかった。モデル型における単純主効果の検討を行ったところ,進路決定条件における性の単純主効果(F(1,358)=12.75,p <.001; 男子<女子)および,女子における進路決定の単純主効果(F(1,358)=4.04,p <.05; 決定>未決定)であった。
考   察
 進路決定の有無によるアイデンティティ発達の違いが見られたことから,どんな進路が適しているか心の中で自問自答することは,コミットメントの探求や形成と連動していると考えられた。女子においてのみ,その過程で友人をモデルとしてとらえる態度も増加するようであった。