[PF17] 中学生の食生活と家族関係および精神的健康との関連
短期縦断研究による因果関係の検討(1波の報告)
キーワード:食生活, 家族関係, 精神的健康
問題と目的
近年,家族と一緒に食事をする共食への関心が高まっている。2011年に発表された「第2次食育推進基本計画」では,重点課題の1つとして「家庭における共食を通じた子どもへの食育の推進」を挙げ,家族の共食を奨励している(内閣府,2011)。その背景には,核家族化や共働きなど生活スタイルの変化に伴い,家族全員が集まる時間が十分に持てない家庭が増加している中で,子どもと親とのコミュニケーションの機会という観点からは,食卓の持つウエイトが相対的に大きくなっていることが考えられる。
子どもの食生活に関する研究は,食生活が子どもの心身の健康や学校不適応傾向に関連しており,その背景には家族関係や養育態度などが反映されていることを示唆している(Elger et al.,2012;加曽利,2005)。中でも,Franko,Thompson,Affenito,Barton,& Striegel-Moore(2008)は,家族関係を変数として取り上げ,縦断研究を行うことにより,家族との共食頻度(family meals)が家族の凝集性を媒介して心身の健康に影響することを明らかにした。また,江崎(2015)は,中学生の食生活(献立数,共食人数,手伝い)は,食事中の会話と共食感を媒介して食に関するQOLと関連することを明らかにした。ここで用いられた「共食感」とは,「食事を家族と一緒に摂ることに対する気持ち」と定義されていることから,「共食感」は食事場面における子どもの主観的な家族関係を表していると考えられる。以上の結果から,家族関係を構築するプロセスにおいて,食生活の在り方が家族の良好な関係に貢献しうると考えられる。
そこで本研究では,中学生を対象に短期縦断研究を実施することにより,食生活が家族関係を媒介して精神的健康および学校不適応傾向に影響するとの因果関係が成立するかどうかを検証する。
方 法
〈調査対象者〉岐阜県内の2校の公立中学校に通う生徒に質問紙による調査を実施し,668名(1年生男子112名・女子115名,2年生男子122名・女子107名,3年生男子115名・女子97名)を分析対象者とした。
〈調査内容〉食生活については,平日の朝食と夕食に関する献立内容,共食状況,手伝い,会話についての回答を求めた。食に関するQOLについては,武見(2001)と會退・赤松・林・武見(2012)を改変し,「食欲があった」「食事の時間が待ち遠しかった」「食事の雰囲気は明るかった」「食事がおいしく食べられた」「食事時間が楽しかった」「食事に満足した」の6項目を5件法で尋ねた。共食感については,足立(2010)を改変し,「家族と一緒に食事をすることは楽しい」「できるだけ家族と一緒に食事がしたい」の2項目を4件法で尋ねた。家族関係については,家族機能測定尺度(草田・岡堂,1993)のうちの凝集性尺度10項目の回答を求めた。精神的健康に関しては,子ども版自己記入式抑うつ尺度CDSS(村田・清水・森・大島,1996)の18項目と生活満足度(吉武,2010)の7項目の回答を求めた。学校不適応傾向については,登校回避感情測定尺度(渡辺・小石,2000)の26項目の回答を求めた。
今回の報告では,短期縦断研究の1波について,仮説モデルに基づいて共分散構造分析によって解析した結果について発表する。
引用文献
Elger,F. J.,Craig,W.,& Trites,S. J.(2012). Family dinners,communication,and mental health in Canadian adolescents. Journal of Adolescent Health,52,433-438.
江崎由里香(2015).中学生の食生活要因と共食感および食生活QOLとの関連 日本家政学会中部支部第60回大会要旨集,44.
Franko,D. L.,Thompson,D.,Affenito,S. G., Barton,B. A.,& Striegel-Moore,R. H.(2008). What mediates the relationship between family meals and adolescent health issues ? Health Psychology,27,109-117.
加曽利岳美(2005).中学生の抑うつ傾向および学校不適応傾向と食行動との関連 心理臨床学研究,23,350-360.
近年,家族と一緒に食事をする共食への関心が高まっている。2011年に発表された「第2次食育推進基本計画」では,重点課題の1つとして「家庭における共食を通じた子どもへの食育の推進」を挙げ,家族の共食を奨励している(内閣府,2011)。その背景には,核家族化や共働きなど生活スタイルの変化に伴い,家族全員が集まる時間が十分に持てない家庭が増加している中で,子どもと親とのコミュニケーションの機会という観点からは,食卓の持つウエイトが相対的に大きくなっていることが考えられる。
子どもの食生活に関する研究は,食生活が子どもの心身の健康や学校不適応傾向に関連しており,その背景には家族関係や養育態度などが反映されていることを示唆している(Elger et al.,2012;加曽利,2005)。中でも,Franko,Thompson,Affenito,Barton,& Striegel-Moore(2008)は,家族関係を変数として取り上げ,縦断研究を行うことにより,家族との共食頻度(family meals)が家族の凝集性を媒介して心身の健康に影響することを明らかにした。また,江崎(2015)は,中学生の食生活(献立数,共食人数,手伝い)は,食事中の会話と共食感を媒介して食に関するQOLと関連することを明らかにした。ここで用いられた「共食感」とは,「食事を家族と一緒に摂ることに対する気持ち」と定義されていることから,「共食感」は食事場面における子どもの主観的な家族関係を表していると考えられる。以上の結果から,家族関係を構築するプロセスにおいて,食生活の在り方が家族の良好な関係に貢献しうると考えられる。
そこで本研究では,中学生を対象に短期縦断研究を実施することにより,食生活が家族関係を媒介して精神的健康および学校不適応傾向に影響するとの因果関係が成立するかどうかを検証する。
方 法
〈調査対象者〉岐阜県内の2校の公立中学校に通う生徒に質問紙による調査を実施し,668名(1年生男子112名・女子115名,2年生男子122名・女子107名,3年生男子115名・女子97名)を分析対象者とした。
〈調査内容〉食生活については,平日の朝食と夕食に関する献立内容,共食状況,手伝い,会話についての回答を求めた。食に関するQOLについては,武見(2001)と會退・赤松・林・武見(2012)を改変し,「食欲があった」「食事の時間が待ち遠しかった」「食事の雰囲気は明るかった」「食事がおいしく食べられた」「食事時間が楽しかった」「食事に満足した」の6項目を5件法で尋ねた。共食感については,足立(2010)を改変し,「家族と一緒に食事をすることは楽しい」「できるだけ家族と一緒に食事がしたい」の2項目を4件法で尋ねた。家族関係については,家族機能測定尺度(草田・岡堂,1993)のうちの凝集性尺度10項目の回答を求めた。精神的健康に関しては,子ども版自己記入式抑うつ尺度CDSS(村田・清水・森・大島,1996)の18項目と生活満足度(吉武,2010)の7項目の回答を求めた。学校不適応傾向については,登校回避感情測定尺度(渡辺・小石,2000)の26項目の回答を求めた。
今回の報告では,短期縦断研究の1波について,仮説モデルに基づいて共分散構造分析によって解析した結果について発表する。
引用文献
Elger,F. J.,Craig,W.,& Trites,S. J.(2012). Family dinners,communication,and mental health in Canadian adolescents. Journal of Adolescent Health,52,433-438.
江崎由里香(2015).中学生の食生活要因と共食感および食生活QOLとの関連 日本家政学会中部支部第60回大会要旨集,44.
Franko,D. L.,Thompson,D.,Affenito,S. G., Barton,B. A.,& Striegel-Moore,R. H.(2008). What mediates the relationship between family meals and adolescent health issues ? Health Psychology,27,109-117.
加曽利岳美(2005).中学生の抑うつ傾向および学校不適応傾向と食行動との関連 心理臨床学研究,23,350-360.