The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 4:00 PM - 6:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PF19] 大学生の情報検索スキルに関する検討

情報源の評価に焦点を当てて

阪脇孝子1, 大津嘉代子2 (1.早稲田大学, 2.早稲田大学)

Keywords:情報検索, 大学生, 情報の信頼性評価

問   題
 近年,インターネットの普及に伴い,多くの情報が検索エンジンによる検索で容易に入手できるようになった。しかし,インターネット上で入手できる情報には,匿名性の高い情報,正確性が保証されない情報も少なくない。そのような中で大学生でも情報源の信頼性を確認するための方法を指摘することができない者がいることも報告されている (後藤, 2006)。このような点を考慮し,本研究では大学生が公的目的のために使用する情報の検索時,私的目的での検索とは区別して適切な情報源を選択しているのかどうか検討を行った。
方   法
 大学生59名を対象とし, インターネット上に様々な観点からの意見や分析が存在する問題として,「コーヒーの健康への影響」および「緑茶の健康への影響」を調べる課題を提示した。
 対象者には,事前に実験者が選択した8つのサイトを一覧として提示し,その中から必要と思われるサイトを閲覧した上でPC上に設けた回答フォームに回答や,回答の際に参考になったサイトの番号を1つ~最大3つまで入力すること等を求めた。課題実施中のPCモニター画面を録画し,実際にどのサイトを閲覧したか事後的に確認した。
 提示したサイトは以下のとおりである。
サイトの分類1:Q&Aサイト,まとめサイトなど情報の提供者の匿名性が高いものを3種類
サイトの分類2:コーヒーあるいは緑茶に関連した企業・団体などのサイトで情報の提供者が明確であるが特定の観点からの情報提供がなされていると考えられるものを2種類
サイトの分類3:大学や公共機関などの提供による公共性の高いサイトを3種類
各課題でほぼ同質のサイトになるよう配慮した。
 また,課題の実施目的として
公式的目的:大学の情報紙に掲載するために情報を調べるという場面設定で課題を実施
非公式的目的:友達と話している時にちょっと話題になったので調べてみるという場面設定で課題を実施 の2パターンを設けた。
各参加者はコーヒー課題と緑茶課題の両方を実施し,一方を公式的目的,もう一方を非公式的目的で検索を行った。課題の実施順序はカウンターバランスを取った。また本研究の分析対象とは別の2課題と本研究の2課題とを交互に実施した。
結   果
 対象者が回答の際の参考になったとして選択したサイトに基づき,以下の5水準に分類した。
水準1:分類1のサイトのみを挙げたもの。
水準2:分類1と分類2,もしくは分類2のサイトのみを挙げ分類3が含まれないもの。
水準3:分類1と分類3のサイトの両方を挙げているもの。これらに加え,分類2のサイトを挙げている場合もここに含めた。
水準4:分類2と分類3のみ,もしくは分類3のみを挙げているもののうち,分類3の中で最も広い観点から情報をまとめてあるサイト8を含まないもの。
水準5:水準4と同様だがサイト8を含めたもの。
 課題実施目的ごとに各水準に分類された人数と割合をTable 1に示す。分析の際,実際の閲覧サイトと参考サイトの齟齬など誤記が疑われ参考サイトを特定しきれなかった3名を除外した。
 符号検定の結果,実施目的により水準に有意差があり (z=-3.359, p<.01),公式的目的で実施した場合に高い水準のサイト参照を行っていた。少なくとも事前に実験者が選んだサイトの範囲内であれば課題の実施目的に応じてより適切なサイトを選択する傾向にあったことが示唆される。
 一方,公式的目的で水準1,水準2の対象者について詳細を検討してみると,これら15名のうち3名 (20.0%) は分類3のサイトを閲覧したが参考サイトとして選択せず,残りの12名 (80.0%) はそもそも分類3のサイトを閲覧していなかった。分類1,2のサイトはサイト一覧のより上位に位置しており,これらの対象者はサイトの信頼性を評価するよりも種市・逸村 (2006) の報告のように上位のサイトを優先した可能性がある。また公式的目的で水準3の対象者11名のうちサイト8を参考として挙げたのは4名 (36.4%) のみであるなど詳細をみるとサイトの評価が充分だとはいえず,何らかの働きかけを検討する必要性も考えられる。