[PF24] 漢字の書字練習量とテスト得点の時系列分析(3)
キーワード:漢字, 書字, 意欲
目 的
本研究では,漢字の書字練習量と漢字テスト得点の2変数の一年間の変動を見る時系列分析モデルを構成し,両者の関係について分析する。具体的には,ある回 (n回目) の練習量とテスト得点が前回までの練習量とテスト得点からどのような影響を受けているか,VARモデルを用いて分析する。
方 法
対象者 2010-2014年までの公立小学校4-6年生。
課題 児童に漢字ドリルを配布し,ドリルに載っている漢字問題(「ちちとこうたいする」「じょうけいをあらわすことば」などの下線部を漢字に直す問題)を指定したノートに書き込みの練習をさせた。テストはいずれの年も毎週金曜日,指定範囲の漢字について行った。年間のテスト回数は37―43回。 テストまでに練習した漢字の字数(書字練習量)と正解数/出題字数で定義したテスト得点を求め,さらに両変数の回毎のクラス平均を求めた。さらに年間全ての回(約10か月)の書字練習量,テストについて時間軸上での標準得点を求めた。
尚,漢字テストの範囲指定は回毎に異なり,間違えた漢字に対してはテスト返却後,一定数の書き取り練習をする事後課題を与えた。
結 果
標準得点化した書字練習量とテスト得点について,VARモデルの推定を行った。VARモデルの結果を示したものがFigureである。回帰係数の高いものに着目すると,1)2010年の書字練習量は前回の書字練習量の影響を受け(回帰係数0.7),2)2014年のテスト得点は前回のテスト得点の影響を受け(回帰係数0.49),また,マイナスの係数について見ると,3)2013年のテスト得点は前回の書字練習量の影響を受け(回帰係数-0.35),4)2010年の書字練習量は,前回のテスト得点の影響を受ける(回帰係数-0.3)ことが示された。
考 察
結果1) 書字練習量は,前回の書字練習量との関係が最も強く係数に表れた。これは,n-1回目で書字練習量が高かった場合は,n回目においても高い書字練習量を持続させていたためと考えられる。
結果2) 前回のテスト得点が高いと感じれば,動機付けが高まり,それに影響を受けて次回のテスト得点も高く,前回のテスト得点が低いと感じれば,逆のことが起こると考えられる。
結果3) 前回の書字練習量が高かった場合,次回のテスト得点が低く,前回の書字練習量が低かった場合は逆の結果が出ている。稀なケースと考えられるが,児童は,テスト前まで空書やドリルを見つめる行動をとる。書字練習量が少なかった児童は危機を感じてテスト寸前まで集中してドリルを目視し,書字練習量が多かった児童はテスト寸前で動機づけが低下(油断)してそのままテストを受けたと考えられる。
結果4) 前回のテスト得点が高かったことによって動機づけが低下(油断)し,低かった場合は,テスト得点が低かったことにより,次回のテストの得点を上げるための動機づけが増大したものと考えられる。
年度毎の回帰係数について
2011-2012年,2013-2014年の児童はそれぞれ同じ児童である。いずれも初年度はn-1回目やn-2回目までの回帰係数に影響を受けており,翌年度はn-1回目までの回帰係数のみに影響を受けている。これは,初年度で始めた学習習慣が次年度で定着してきたためと考えられる。1年間継続して「書字練習-テスト-固定時期のテスト返却-事後練習」というサイクルを続けた結果,児童は,前回の結果のみを意識し,次回への意欲につなげるようになったと考えられる。これより継続した学習やテストを行うことで,安定した学習意欲の維持を図れる可能性が示唆される。
本研究では,漢字の書字練習量と漢字テスト得点の2変数の一年間の変動を見る時系列分析モデルを構成し,両者の関係について分析する。具体的には,ある回 (n回目) の練習量とテスト得点が前回までの練習量とテスト得点からどのような影響を受けているか,VARモデルを用いて分析する。
方 法
対象者 2010-2014年までの公立小学校4-6年生。
課題 児童に漢字ドリルを配布し,ドリルに載っている漢字問題(「ちちとこうたいする」「じょうけいをあらわすことば」などの下線部を漢字に直す問題)を指定したノートに書き込みの練習をさせた。テストはいずれの年も毎週金曜日,指定範囲の漢字について行った。年間のテスト回数は37―43回。 テストまでに練習した漢字の字数(書字練習量)と正解数/出題字数で定義したテスト得点を求め,さらに両変数の回毎のクラス平均を求めた。さらに年間全ての回(約10か月)の書字練習量,テストについて時間軸上での標準得点を求めた。
尚,漢字テストの範囲指定は回毎に異なり,間違えた漢字に対してはテスト返却後,一定数の書き取り練習をする事後課題を与えた。
結 果
標準得点化した書字練習量とテスト得点について,VARモデルの推定を行った。VARモデルの結果を示したものがFigureである。回帰係数の高いものに着目すると,1)2010年の書字練習量は前回の書字練習量の影響を受け(回帰係数0.7),2)2014年のテスト得点は前回のテスト得点の影響を受け(回帰係数0.49),また,マイナスの係数について見ると,3)2013年のテスト得点は前回の書字練習量の影響を受け(回帰係数-0.35),4)2010年の書字練習量は,前回のテスト得点の影響を受ける(回帰係数-0.3)ことが示された。
考 察
結果1) 書字練習量は,前回の書字練習量との関係が最も強く係数に表れた。これは,n-1回目で書字練習量が高かった場合は,n回目においても高い書字練習量を持続させていたためと考えられる。
結果2) 前回のテスト得点が高いと感じれば,動機付けが高まり,それに影響を受けて次回のテスト得点も高く,前回のテスト得点が低いと感じれば,逆のことが起こると考えられる。
結果3) 前回の書字練習量が高かった場合,次回のテスト得点が低く,前回の書字練習量が低かった場合は逆の結果が出ている。稀なケースと考えられるが,児童は,テスト前まで空書やドリルを見つめる行動をとる。書字練習量が少なかった児童は危機を感じてテスト寸前まで集中してドリルを目視し,書字練習量が多かった児童はテスト寸前で動機づけが低下(油断)してそのままテストを受けたと考えられる。
結果4) 前回のテスト得点が高かったことによって動機づけが低下(油断)し,低かった場合は,テスト得点が低かったことにより,次回のテストの得点を上げるための動機づけが増大したものと考えられる。
年度毎の回帰係数について
2011-2012年,2013-2014年の児童はそれぞれ同じ児童である。いずれも初年度はn-1回目やn-2回目までの回帰係数に影響を受けており,翌年度はn-1回目までの回帰係数のみに影響を受けている。これは,初年度で始めた学習習慣が次年度で定着してきたためと考えられる。1年間継続して「書字練習-テスト-固定時期のテスト返却-事後練習」というサイクルを続けた結果,児童は,前回の結果のみを意識し,次回への意欲につなげるようになったと考えられる。これより継続した学習やテストを行うことで,安定した学習意欲の維持を図れる可能性が示唆される。