[PF27] 学生が作成したルーブリックによる自己評価が学生の自律的学習動機づけに与える影響
Keywords:自律的学習動機づけ, ルーブリック, 自己評価
目 的
リハビリテーション教育では専門的技能の習得が重要で,その技能の評価方法にOSCEがある。シミュレーションテストであるOSCEはパフォーマンス評価であり,その評価基準にルーブリックがある(松下,2012)。ルーブリックを学生と作成する利点として,課題内容の理解促進と動機づけが高まること(Stevens & Levi,2014),学習目標が明確になること(塚本・清水,2006),オープンエンドな課題の動機づけが向上すること(山本・植野,2015)が報告されている。また,学生と作成したルーブリックによる自己評価が,自分の課題把握の手がかりになる(寺嶋・林,2006),自律的学習動機づけを促す可能性がある(西片・石田,2015)といわれている。言語聴覚士の技能の1つである「スクリーニング検査の遂行」を習得目標に,先行研究を参考にして授業を計画し,実施した。①ルーブリックによる技能評価,②学生によるルーブリック作成,③録画された自分の実技を見ての自己評価,④自己評価と教員評価を用いたフィードバックが特徴で,期待された効果の1つが自律的学習動機づけ(Ryan & Deci,2000)の促進であった。本研究の目的は,この授業の実施が自律的学習動機づけを促進したかの検討である。
方 法
対象者 専門学校生(言語聴覚士課程)37名(男性20名,女性17名)平均年齢29.8歳(SD:5.48)。
手続き
自律的学習動機づけ 岡田・中谷(2006)の大学生用学習動機づけ尺度(14項目,5件法)を,今回の授業を対象とするように一部変更し,実技試験の前後に質問紙調査をした。
実技試験 ルーブリックの評価次元を学生が考え,集約された10項目の内容の適切さを教員2名が確認した。記述語を筆者が作成して教員2名が添削した。ルーブリックは事前に呈示した。筆者が模擬患者を演じ,採点をした。学生は録画された自分の実技試験の映像を見て採点した。
実技テスト観 鈴木(2012)のテスト観尺度(18項目,5件法)を実技試験に適した用語に変更して,実技試験後に質問紙調査をした。
授業の感想 西片・石田(2015)のアンケート結果から質問紙(8項目,7件法)を作成し,実技試験後に質問紙調査をした。
結 果
自律的学習動機づけ 因子分析(プロマックス回転)を行い,「内的調整」「同一化的調整」「取り入れ的調整」「外的調整」を抽出した。全体の評定平均値の実技試験前後差をみるためにt検定したが有意差はなかった。クラスター分析して3群に分け(表1),各群の実技試験前後の評定平均値をt検定した。自律性 (高) 群は同一化(前4.64,後4.85)が有意に高く(t(20)=3.53, p<.01),同一化 (高) 群は内的(前1.88,後2.75)が有意に高く(t(7)=2.23, p<.05),外的 (中) 群は外的(前3.08,後2.17)が有意に低くなった(t(7)=2.23, p<.05)。
自律的学習動機づけ(後)と授業の感想との相関
内的調整は「ルーブリックを考えたのが良かった(.36*)」と,同一化的調整は「ルーブリックを考えたのが良かった(.55**)」「録画で自分を客観的に見られて良かった(.50**)」「自己採点が良かった(.59**)」「自己採点と教員採点の比較が良かった(.41*)」と正の相関がみられた。外的調整は「録画で自分の表情や話し方,態度を見られて良かった(-.47**)」「録画で自分を客観的に見られて良かった(-.40*)」「自己採点と教員採点の比較が良かった(-.46**)」と負の相関がみられた。
実技テスト観 因子分析(プロマックス回転)を行い,「改善」「誘導」「比較」「強制」を抽出した。
自律的学習動機づけ(後)と実技テスト観との相関
同一化的調整は「誘導(.53**)」と正の相関,「比較(-.41**)」と負の相関がみられた。外的調整は「強制(.52**)」と正の相関がみられた。
考 察
授業実施後に自律性(高)群の同一化的調整がより高くなった。「学生がルーブリックを作成し,録画された自分を客観的に見て自己評価し,教員評価と比較できた」ことが自律性の高い学生の動機づけに良い影響を与えたといえる。一方,外的(中)群は外的調整が低くなった。外的調整は実技テスト観の強制と相関があり,「録画された自分の表情や話し方,態度を客観的に見て自己評価し,教員評価と比較できた」ことが“やらされているわけではない”いう意識に繋がったと考えられる。
リハビリテーション教育では専門的技能の習得が重要で,その技能の評価方法にOSCEがある。シミュレーションテストであるOSCEはパフォーマンス評価であり,その評価基準にルーブリックがある(松下,2012)。ルーブリックを学生と作成する利点として,課題内容の理解促進と動機づけが高まること(Stevens & Levi,2014),学習目標が明確になること(塚本・清水,2006),オープンエンドな課題の動機づけが向上すること(山本・植野,2015)が報告されている。また,学生と作成したルーブリックによる自己評価が,自分の課題把握の手がかりになる(寺嶋・林,2006),自律的学習動機づけを促す可能性がある(西片・石田,2015)といわれている。言語聴覚士の技能の1つである「スクリーニング検査の遂行」を習得目標に,先行研究を参考にして授業を計画し,実施した。①ルーブリックによる技能評価,②学生によるルーブリック作成,③録画された自分の実技を見ての自己評価,④自己評価と教員評価を用いたフィードバックが特徴で,期待された効果の1つが自律的学習動機づけ(Ryan & Deci,2000)の促進であった。本研究の目的は,この授業の実施が自律的学習動機づけを促進したかの検討である。
方 法
対象者 専門学校生(言語聴覚士課程)37名(男性20名,女性17名)平均年齢29.8歳(SD:5.48)。
手続き
自律的学習動機づけ 岡田・中谷(2006)の大学生用学習動機づけ尺度(14項目,5件法)を,今回の授業を対象とするように一部変更し,実技試験の前後に質問紙調査をした。
実技試験 ルーブリックの評価次元を学生が考え,集約された10項目の内容の適切さを教員2名が確認した。記述語を筆者が作成して教員2名が添削した。ルーブリックは事前に呈示した。筆者が模擬患者を演じ,採点をした。学生は録画された自分の実技試験の映像を見て採点した。
実技テスト観 鈴木(2012)のテスト観尺度(18項目,5件法)を実技試験に適した用語に変更して,実技試験後に質問紙調査をした。
授業の感想 西片・石田(2015)のアンケート結果から質問紙(8項目,7件法)を作成し,実技試験後に質問紙調査をした。
結 果
自律的学習動機づけ 因子分析(プロマックス回転)を行い,「内的調整」「同一化的調整」「取り入れ的調整」「外的調整」を抽出した。全体の評定平均値の実技試験前後差をみるためにt検定したが有意差はなかった。クラスター分析して3群に分け(表1),各群の実技試験前後の評定平均値をt検定した。自律性 (高) 群は同一化(前4.64,後4.85)が有意に高く(t(20)=3.53, p<.01),同一化 (高) 群は内的(前1.88,後2.75)が有意に高く(t(7)=2.23, p<.05),外的 (中) 群は外的(前3.08,後2.17)が有意に低くなった(t(7)=2.23, p<.05)。
自律的学習動機づけ(後)と授業の感想との相関
内的調整は「ルーブリックを考えたのが良かった(.36*)」と,同一化的調整は「ルーブリックを考えたのが良かった(.55**)」「録画で自分を客観的に見られて良かった(.50**)」「自己採点が良かった(.59**)」「自己採点と教員採点の比較が良かった(.41*)」と正の相関がみられた。外的調整は「録画で自分の表情や話し方,態度を見られて良かった(-.47**)」「録画で自分を客観的に見られて良かった(-.40*)」「自己採点と教員採点の比較が良かった(-.46**)」と負の相関がみられた。
実技テスト観 因子分析(プロマックス回転)を行い,「改善」「誘導」「比較」「強制」を抽出した。
自律的学習動機づけ(後)と実技テスト観との相関
同一化的調整は「誘導(.53**)」と正の相関,「比較(-.41**)」と負の相関がみられた。外的調整は「強制(.52**)」と正の相関がみられた。
考 察
授業実施後に自律性(高)群の同一化的調整がより高くなった。「学生がルーブリックを作成し,録画された自分を客観的に見て自己評価し,教員評価と比較できた」ことが自律性の高い学生の動機づけに良い影響を与えたといえる。一方,外的(中)群は外的調整が低くなった。外的調整は実技テスト観の強制と相関があり,「録画された自分の表情や話し方,態度を客観的に見て自己評価し,教員評価と比較できた」ことが“やらされているわけではない”いう意識に繋がったと考えられる。