[PF41] 大学授業における発表のルーブリック評価に対する学生の受け止め方
達成目標とルーブリック評価に対する評価との関連
Keywords:ルーブリック, 達成目標
問題と目的
本研究は,大学の授業内における班活動での発表の評価方法としてルーブリックを用い,学生に対してルーブリック評価基準表に対する有効性の認知やコスト感などの評価を求めるものである。今回は,学生のルーブリックに対する評価と,実際に発表前にルーブリック評価基準表を確認した程度,および授業に対する達成目標志向との関連について明らかにする。達成目標志向に関しては,授業の初回と最終回の二回で測定し,その差分とルーブリック評価基準表への評価との関連についても検討する。
方 法
調査対象となった授業 私立大学の心理学科1年生を対象とした「基礎ゼミ」で実施された。この授業では,秋学期(後期)に班活動を行い,二回の発表が評価の対象となった。
分析対象者 初回の授業および最終回の授業に参加し,本研究で用いた全ての質問紙に回答した50名を分析対象とした。
質問紙 (a) 達成目標 田中・藤田(2007)が作成した授業に対する四つの達成目標(マスタリー接近・マスタリー回避・パフォーマンス接近・パフォーマンス回避)に関する17項目からなる質問紙を用いて,秋学期(後期)の初回授業および最終回授業で測定した。項目は6件法で評価された。
(b) ルーブリックに対する評価 ルーブリックは,授業内の発表に対する評価の観点として2回目の発表前に配付され,事前に自己評価するように教示された。ルーブリック評価基準表に対する有効性(e.g., 評価基準表は役に立つ,発表の改善に有効),コスト感(e.g., 評価基準表を見るのは面倒),妥当性(e.g., 発表の成果を適切に評価できる,納得できる,評価基準表は明確)を尋ねる6項目に対し,発表終了後に6段階で評定。
(c) ルーブリック確認回数 発表前の準備の際にルーブリックをどの程度確認したかに関する,確認のタイミング3 (レジュメ準備/レジュメ作成中/発表練習中) ×確認主体人数2 (一人/班) の6項目からなり,同じく6段階で回答するものであった。
結果と考察
尺度の構成 達成目標の17項目に対して,秋学期初回・最終回別に因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行ったところ,ともにマスタリー・パフォーマンスの2因子が抽出された。初回と最終回で共通の因子に含まれた,マスタリー7項目 (M),パフォーマンス8項目 (P) の初回・最終回時の平均評定値を尺度得点とした。これらの得点および学期中の増加差分(秋学期最終回-初回)の平均,SDと,ルーブリックに対する評価,確認回数との相関係数の一部を表1に示す。
評価と達成目標間の相関 ルーブリックへの評価と達成目標の相関係数を算出した結果,特に「評価表は役に立つ」の項目において,マスタリー・パフォーマンスとも秋学期初回,最終回において有意な正の相関が得られた(ps<.05)。
確認回数と達成目標間の相関 ルーブリックの確認回数と達成目標間の相関係数を算出したところ,マスタリー・パフォーマンスとも初回,最終回で有意な相関はほとんど見られなかったが,パフォーマンス得点の差分において,「レジュメ作成準備段階 (一人)」「レジュメ作成中 (一人)」の項目と有意な正の相関が見られた。いずれも一人で確認する項目であり,パフォーマンス得点は個人で確認する行動との関連は見られるが,班での確認とはあまり関連がないということが示された。
本研究は,大学の授業内における班活動での発表の評価方法としてルーブリックを用い,学生に対してルーブリック評価基準表に対する有効性の認知やコスト感などの評価を求めるものである。今回は,学生のルーブリックに対する評価と,実際に発表前にルーブリック評価基準表を確認した程度,および授業に対する達成目標志向との関連について明らかにする。達成目標志向に関しては,授業の初回と最終回の二回で測定し,その差分とルーブリック評価基準表への評価との関連についても検討する。
方 法
調査対象となった授業 私立大学の心理学科1年生を対象とした「基礎ゼミ」で実施された。この授業では,秋学期(後期)に班活動を行い,二回の発表が評価の対象となった。
分析対象者 初回の授業および最終回の授業に参加し,本研究で用いた全ての質問紙に回答した50名を分析対象とした。
質問紙 (a) 達成目標 田中・藤田(2007)が作成した授業に対する四つの達成目標(マスタリー接近・マスタリー回避・パフォーマンス接近・パフォーマンス回避)に関する17項目からなる質問紙を用いて,秋学期(後期)の初回授業および最終回授業で測定した。項目は6件法で評価された。
(b) ルーブリックに対する評価 ルーブリックは,授業内の発表に対する評価の観点として2回目の発表前に配付され,事前に自己評価するように教示された。ルーブリック評価基準表に対する有効性(e.g., 評価基準表は役に立つ,発表の改善に有効),コスト感(e.g., 評価基準表を見るのは面倒),妥当性(e.g., 発表の成果を適切に評価できる,納得できる,評価基準表は明確)を尋ねる6項目に対し,発表終了後に6段階で評定。
(c) ルーブリック確認回数 発表前の準備の際にルーブリックをどの程度確認したかに関する,確認のタイミング3 (レジュメ準備/レジュメ作成中/発表練習中) ×確認主体人数2 (一人/班) の6項目からなり,同じく6段階で回答するものであった。
結果と考察
尺度の構成 達成目標の17項目に対して,秋学期初回・最終回別に因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行ったところ,ともにマスタリー・パフォーマンスの2因子が抽出された。初回と最終回で共通の因子に含まれた,マスタリー7項目 (M),パフォーマンス8項目 (P) の初回・最終回時の平均評定値を尺度得点とした。これらの得点および学期中の増加差分(秋学期最終回-初回)の平均,SDと,ルーブリックに対する評価,確認回数との相関係数の一部を表1に示す。
評価と達成目標間の相関 ルーブリックへの評価と達成目標の相関係数を算出した結果,特に「評価表は役に立つ」の項目において,マスタリー・パフォーマンスとも秋学期初回,最終回において有意な正の相関が得られた(ps<.05)。
確認回数と達成目標間の相関 ルーブリックの確認回数と達成目標間の相関係数を算出したところ,マスタリー・パフォーマンスとも初回,最終回で有意な相関はほとんど見られなかったが,パフォーマンス得点の差分において,「レジュメ作成準備段階 (一人)」「レジュメ作成中 (一人)」の項目と有意な正の相関が見られた。いずれも一人で確認する項目であり,パフォーマンス得点は個人で確認する行動との関連は見られるが,班での確認とはあまり関連がないということが示された。