[PF43] Project Based Learningにおける成長点の分析
大学生の21世紀型スキル育成をめざして
キーワード:PBL, 21世紀型スキル
目 的
高度情報化社会になり,これからの社会人には21世紀型スキル(ACT21s, 2012)が求められるようになった。大学では,そのようなスキルを身に付けるために学生を主体的に学びへ向かわせるための環境をどう作るのかが課題となっており,近年では日本の大学においてもPBL(Problem based learning, Project based learning)が注目されている。湯浅ら(2011)によると,Problem based learningは,学習プロセスが明確に定義されているのに対し,Project based learningは,個別の実践に委ねられているという。しかし,Project based learningの効果には,「自立心の成長,学習態度の改善,高度な思考力,問題解決能力,共同作業,コミュニケーションなどの複雑なスキルを伸ばす可能性(湯浅ら2012, p.19)」が示唆されている。そこで,著者らも21世紀型スキルの育成を目指すPBL(project based learning)を考案し,実践した。本稿では,著者らが実践したPBLを通して学生の21世紀型スキルが育成されたかを検証することを目的とする。
方 法
授業の実践は,近畿地方の私立大学と四国地方の国立大学において行われた。PBLの実施方法,データの収集および分析方法は以下のとおりである。
近畿地方の私立大学 参加者は6名(2年次生4名/3年次生1名/4年次生1名,男4名/女2名),実施時期は2015年4月~2016年1月である。プロジェクト内容は,地域の課題解決のため,大学近隣地域からの要請に応えた紙芝居を作成し,読み聞かせ活動を行うことであった。
四国地方の国立大学 参加者は6名(修士課程2年次生6名,男4名/女2名),実施時期は2015年9月〜2016年1月である。プロジェクト内容は,近郊の小学校において国語模擬授業を行うために,作者の意図が伝わりやすい紙芝居を作成し,授業計画を立て,実践を行うことであった。
データの収集方法 PBLの全活動が終了した後に,参加者にPBLを振り返り,話し合ってもらった。話し合いの前にその材料として,PBLを通して成長することが予想される21世紀型スキルを自己評価するために著者らが作成したルーブリックに応え,それを参考にして,学生が自身の成長点,と改善点などを記述することを求めた。欠席者1名,留学生1名を除く10名を対象に分析を行った。
分析方法 日本語の内容分析を目的に設計されたKH Coder(樋口, 2004)を用いて,テキストマイニングを行い,本PBLにおける成長点に関する記述の共起ネットワーク分析を行った。
結 果
全10ケースから総抽出語数706語,異なり語数215語が抽出された。このうち,出現数が2回以上であった43語を対象に,類似性の指標であるJaccard係数0.2以上の共起関係とし,分析を行った。その結果,図1の結果を得た。円の大きさは出現数の多さ,線の太さは共起関係の強さを意味し,クラスターが濃淡で表されている。
考察と今後の課題
この結果から,「個人の問題をチームで解決する能力」,「自ら行動した」,「人と関わる機会が多く,社会貢献ができた」,「自分の考えや感じたことを発言した」,「他者との議論において意見を伝えた」,「役割に対する責任から自律しようとした」など7クラスターが成長点として抽出された。これらは順に,21世紀型スキルの思考の方法(問題解決,意思決定),働く方法(コミュニケーション,チームワーク),世界の中で生きる(シチズンシップ,個人の責任と社会的責任)に関連しており,21世紀型スキルが育成された可能性を示唆している。今後,改善点などの分析,量的分析も行い,この結果と合わせてさらに検討を重ねる必要がある。
高度情報化社会になり,これからの社会人には21世紀型スキル(ACT21s, 2012)が求められるようになった。大学では,そのようなスキルを身に付けるために学生を主体的に学びへ向かわせるための環境をどう作るのかが課題となっており,近年では日本の大学においてもPBL(Problem based learning, Project based learning)が注目されている。湯浅ら(2011)によると,Problem based learningは,学習プロセスが明確に定義されているのに対し,Project based learningは,個別の実践に委ねられているという。しかし,Project based learningの効果には,「自立心の成長,学習態度の改善,高度な思考力,問題解決能力,共同作業,コミュニケーションなどの複雑なスキルを伸ばす可能性(湯浅ら2012, p.19)」が示唆されている。そこで,著者らも21世紀型スキルの育成を目指すPBL(project based learning)を考案し,実践した。本稿では,著者らが実践したPBLを通して学生の21世紀型スキルが育成されたかを検証することを目的とする。
方 法
授業の実践は,近畿地方の私立大学と四国地方の国立大学において行われた。PBLの実施方法,データの収集および分析方法は以下のとおりである。
近畿地方の私立大学 参加者は6名(2年次生4名/3年次生1名/4年次生1名,男4名/女2名),実施時期は2015年4月~2016年1月である。プロジェクト内容は,地域の課題解決のため,大学近隣地域からの要請に応えた紙芝居を作成し,読み聞かせ活動を行うことであった。
四国地方の国立大学 参加者は6名(修士課程2年次生6名,男4名/女2名),実施時期は2015年9月〜2016年1月である。プロジェクト内容は,近郊の小学校において国語模擬授業を行うために,作者の意図が伝わりやすい紙芝居を作成し,授業計画を立て,実践を行うことであった。
データの収集方法 PBLの全活動が終了した後に,参加者にPBLを振り返り,話し合ってもらった。話し合いの前にその材料として,PBLを通して成長することが予想される21世紀型スキルを自己評価するために著者らが作成したルーブリックに応え,それを参考にして,学生が自身の成長点,と改善点などを記述することを求めた。欠席者1名,留学生1名を除く10名を対象に分析を行った。
分析方法 日本語の内容分析を目的に設計されたKH Coder(樋口, 2004)を用いて,テキストマイニングを行い,本PBLにおける成長点に関する記述の共起ネットワーク分析を行った。
結 果
全10ケースから総抽出語数706語,異なり語数215語が抽出された。このうち,出現数が2回以上であった43語を対象に,類似性の指標であるJaccard係数0.2以上の共起関係とし,分析を行った。その結果,図1の結果を得た。円の大きさは出現数の多さ,線の太さは共起関係の強さを意味し,クラスターが濃淡で表されている。
考察と今後の課題
この結果から,「個人の問題をチームで解決する能力」,「自ら行動した」,「人と関わる機会が多く,社会貢献ができた」,「自分の考えや感じたことを発言した」,「他者との議論において意見を伝えた」,「役割に対する責任から自律しようとした」など7クラスターが成長点として抽出された。これらは順に,21世紀型スキルの思考の方法(問題解決,意思決定),働く方法(コミュニケーション,チームワーク),世界の中で生きる(シチズンシップ,個人の責任と社会的責任)に関連しており,21世紀型スキルが育成された可能性を示唆している。今後,改善点などの分析,量的分析も行い,この結果と合わせてさらに検討を重ねる必要がある。