[PH44] Gritが学習活動に及ぼす影響
Keywords:Grit, 達成目標理論, 自己調整学習方略
問題と目的
近年,個人が目標を達成するために必要な特性として注目されているGritという概念がある。Duckworth et al(2007)によるとGritとは物事に対する情熱を持ち,目標を達成するために長期間,継続的に根気を持って努力する傾向性のことであり,Gritが高い人は様々な分野で高い成果を修めることがわかっている。しかし,Gritの高い人が実際にどのような活動に取り組み,成果を上げるのかに焦点を当てた研究はこれまでなされていない。本研究では,学業場面に限定し,Gritの高さによって学習活動にどのような影響を与え,学業成績に影響を及ぼすかを検討する。
学習活動への影響を考える為に,動機づけとの関連を考える。中でも,目標に関する研究の枠組みである達成目標理論との関連を検討する。Dweck (1986)の先行研究などから、達成目標理論で定義される能力の上達や習得を目指すマスタリー目標指向性とGritの関連があると予想できる。しかし,Gritが学業成績に及ぼす影響を考える為にはGritと達成目標理論の検討だけでは不十分である。速水・伊藤・吉岡(1989)によると,達成目標理論における目標指向性が学業成績に直接影響を与えるのではなく,学習方略を媒介として学業成績に影響を与えることを明らかにした。つまり,目標指向性と学業成績の関係は,目標指向性→学習方略→学業成績と考えるべきであるとした。
そこで,Gritが学業成績に影響を及ぼす過程を,達成目標理論と学習方略との関連から検討する。
方 法
調査対象:2015年12月に,大学生156名に対して質問紙調査をおこなった。
調査内容:①フェイスシート:年齢,性別,学年を尋ねた。②短縮版Grit尺度(西川・奥上・雨宮,2014):「Perseverance of Effort」(4項目),「Consistency of Interest(関心への一貫性)」(4項目)各5件法③目標志向性尺度(光浪,2010):「マスタリー目標志向」(6項目),「遂行接近目標志向」(8項目),「遂行回避目標志向」(3項目)各4件法④自己調整学習方略尺度の邦訳版(伊藤, 1996):「理解・想起方略」(5項目),「復習・まとめ方略」(5項目),「リハーサル方略」(2項目),「注意集中方略」(4項目),「関係づけ方略」(2項目)各5件法
結果と考察
まず,Gritと目標指向性と自己調整学習方略の間の相関係数を算出した。そして先行研究及び,Grit,目標指向性,自己調整学習方略の相関関係から有意であると考えるパスを想定し,パス解析を実施した結果Figureのようなモデル図が得られ,モデルの適合度指標は十分な値を示した。これによって,Gritは自己調整学習方略に対して,直接効果および,マスタリー目標志向性を媒介として間接効果を与えることがわかった。
これらの結果から,Gritが高い人は学業場面において,他者の成績などを気にせず自らの能力を高めるために勉強するという動機づけが高く,実際に勉強するときには多くの学習方略を使用することで学習内容の理解を促進し,学業成績を上げていることがわかった。
近年,個人が目標を達成するために必要な特性として注目されているGritという概念がある。Duckworth et al(2007)によるとGritとは物事に対する情熱を持ち,目標を達成するために長期間,継続的に根気を持って努力する傾向性のことであり,Gritが高い人は様々な分野で高い成果を修めることがわかっている。しかし,Gritの高い人が実際にどのような活動に取り組み,成果を上げるのかに焦点を当てた研究はこれまでなされていない。本研究では,学業場面に限定し,Gritの高さによって学習活動にどのような影響を与え,学業成績に影響を及ぼすかを検討する。
学習活動への影響を考える為に,動機づけとの関連を考える。中でも,目標に関する研究の枠組みである達成目標理論との関連を検討する。Dweck (1986)の先行研究などから、達成目標理論で定義される能力の上達や習得を目指すマスタリー目標指向性とGritの関連があると予想できる。しかし,Gritが学業成績に及ぼす影響を考える為にはGritと達成目標理論の検討だけでは不十分である。速水・伊藤・吉岡(1989)によると,達成目標理論における目標指向性が学業成績に直接影響を与えるのではなく,学習方略を媒介として学業成績に影響を与えることを明らかにした。つまり,目標指向性と学業成績の関係は,目標指向性→学習方略→学業成績と考えるべきであるとした。
そこで,Gritが学業成績に影響を及ぼす過程を,達成目標理論と学習方略との関連から検討する。
方 法
調査対象:2015年12月に,大学生156名に対して質問紙調査をおこなった。
調査内容:①フェイスシート:年齢,性別,学年を尋ねた。②短縮版Grit尺度(西川・奥上・雨宮,2014):「Perseverance of Effort」(4項目),「Consistency of Interest(関心への一貫性)」(4項目)各5件法③目標志向性尺度(光浪,2010):「マスタリー目標志向」(6項目),「遂行接近目標志向」(8項目),「遂行回避目標志向」(3項目)各4件法④自己調整学習方略尺度の邦訳版(伊藤, 1996):「理解・想起方略」(5項目),「復習・まとめ方略」(5項目),「リハーサル方略」(2項目),「注意集中方略」(4項目),「関係づけ方略」(2項目)各5件法
結果と考察
まず,Gritと目標指向性と自己調整学習方略の間の相関係数を算出した。そして先行研究及び,Grit,目標指向性,自己調整学習方略の相関関係から有意であると考えるパスを想定し,パス解析を実施した結果Figureのようなモデル図が得られ,モデルの適合度指標は十分な値を示した。これによって,Gritは自己調整学習方略に対して,直接効果および,マスタリー目標志向性を媒介として間接効果を与えることがわかった。
これらの結果から,Gritが高い人は学業場面において,他者の成績などを気にせず自らの能力を高めるために勉強するという動機づけが高く,実際に勉強するときには多くの学習方略を使用することで学習内容の理解を促進し,学業成績を上げていることがわかった。