The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(01-64)

ポスター発表 PH(01-64)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PH46] 理科の実験場面における児童のグループでの話し合い参加を促す要因の検討

話し合いの有効性認知・コスト認知・好みに着目して

河口美穂 (香川大学大学院)

Keywords:話し合い, 認知, 発話頻度

問題と目的
 文部科学省(2014)では,児童が判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べることについての課題があることを指摘しており,この課題への取り組みとして,アクティブラーニングを挙げている。アクティブラーニングは,受動的な学習を超えた能動的な学習のことをいい,能動的な学習には,書く・話す・発表するなどの活動への関与とそこで生じる認知プロセスの外化と伴うと定義されている(松下,2015)。本研究では,アクティブラーニングの1つとして,話し合いに注目することとする。佐藤(1998)は,学習方略の使用が学習方略の有効性の認知・コストの認知・好みが学習法略に影響を与えることを明らかにしているが,個人での学習を行う際の方略について注目されており,他者と学習を行う話し合いについて検討する必要があると考えられる。
 以上をふまえ,本研究ではグループでの話し合い参加の指標として発話頻度を取り上げ,グループでの話し合い参加の要因を明らかにすることを目的とする。話し合い参加の要因として話し合いの有効性認知・コスト認知・好みに着目する。
方   法
対象者 小学校6年生の2学級の児童74名のうち,授業観察日に欠席していた者,機材の不具合や誤操作により発話の採取が困難であった者を除いた52名(男子22名,女子30名)を分析対象とした。
発話の採取方法 4,5名のグループごとに,ビデオカメラとICレコーダーを設置し発話を採取した。採取した映像と音声をもとにトランスクリプトを作成し,教師の指示により開始されたグループでの話し合い場面における児童の発話を分析対象とした。
発話のカテゴリ分析 本研究では,グル―プの話し合い場面における発話の内容を検討するため,町・中谷(2014)の「グループ学習における発話分類カテゴリ」をもとに1発話単位ごとに分類を行なった。
授業観察 2015年度の12月から2月にかけて行われた小学6年生理科の単元「水溶液の性質」,「電気と私たちの生活」を理科の担当教員が行った授業を対象とした。
質問紙 話し合いの有効性認知・コスト認知・好み:佐藤(1998)を参考に,予想・実験作業・考察のそれぞれの場面における話し合いを「役に立つと思うか」,「大変であると思うか」,「好きだと思うか」について,5件法で尋ねた。
結果と考察
 町・中谷(2014)に倣い,授業中の発話を,自分の考えを詳しく説明したり相手に説明を求める「深い学習関連」,意見を発表したり単純な質問を行なう「浅い学習関連」,意見を聞こうなど話し合いの成立のための注意や指示を行なう「グループ学習運営・維持関連」,ふざけや独り言などの「非学習関連」に分類した。本研究では実験を行なう授業であったため,実験器具の使い方に関する発話である「実験作業関連」を新たに追加した。
 児童の話し合いの認知が,実際の学習活動にどのような影響を与えているのかを調べるために,児童の話し合いの認知と発話頻度の相関係数を算出した(Table 1)。その結果,有効性認知と非学習関連に負の相関が見られ,好みと非学習関連にも,負の相関が見られた。実験場面において,話し合いの有効性認知や好みが高い児童ほど,非学習関連の発話が少なかった。佐藤(1998)では,学習方略に関して,学習方略の有効性を認知し,好んでいる学習者ほど使用が多いことを明らかにしており,話し合いでも,学習とは関係のない発話を行うというのは,話し合いを効果的に使用していないと考えられる。質の高い話し合い参加を促すためには,話し合いが学習者にとって有効であり,好んでいると認知させるような授業を教師が行う必要があることが示唆される。今回の授業観察では,実験作業の場面の発話を対象としたため,今後,予想場面や考察場面での話し合いを対象とすることも必要である。