[PH62] コラージュ制作による気分変化についての検討
コラージュ親和性および性差,切片数との関連から
キーワード:コラージュ, 気分, 多面的感情状態尺度
問題と目的
コラージュ(collage)とは,素材を切り貼りして作る美術技法の一つである。近年では臨床場面においてコラージュを利用した研究が進められており,また,健常者を対象とした研究においてはコラージュ制作により好ましい気分の変化が見られたとの報告もある(井上,2011)。本研究においては,コラージュ制作による気分の変化に影響を与える要因として,従来の研究では素材が統一されていなかった点を修正し予備研究により今回の研究では同一素材を用いて検討した。また,コラージュへの親和性に着目し,参加者のコラージュ親和性の程度が,コラージュ制作後の気分変化に及ぼす影響を検討した。さらに,従来の研究において検討が不十分と考えられる性差や,コラージュ制作に使用した切り抜き数(以下,切片数),制作したコラージュに対する参加者の評価(以下,出来)が気分変化にどのような影響を与えるかについて検討することにした。
方 法
参加者 心身に異常のない健常な大学生33名(男:16名,女:17名)を対象とした。
予備調査 コラージュ素材の選定に当たって宮澤(2003)の研究を参考にし,予備調査を行った。7つのカテゴリー,計140枚の画像について,岡田(1984)の研究において用いられたSD法による評価を行った。収集したデータはカテゴリーごとに因子分析を行い,各カテゴリーにおいて因子説明率が高い画像10枚ずつ,計70枚を本研究の素材として使用することにした。
材料 ハサミ,のり,台紙(B4相当の画用紙)および,予備調査で選定した画像70枚を実験材料として使用した。
質問紙 多面的感情尺度短縮版(寺崎他,1991)によって気分変化を測定した。また,コラージュ親和性,制作したコラージュに関する評価項目を作成し測定した。
手続き 実験はH大学文学部心理学科の倫理委員会の承認の得た上で行った(承認番号:15-0056)。すべての実験は個別に行い,実験時間は約60分であった。コラージュ制作にあたっては,参加者に事前にいくつかのコラージュ作品を例示しながら説明教示を行った。質問紙測定はコラージュ制作前後に行った。制作前には性別・年齢,コラージュ親和性,多面的感情尺度短縮版を測定し,制作後には,制作したコラージュに対する出来,多面的感情尺度短縮版の再度の測定を行った。
分析 SPSS Ver.23(日本IBM)を使用し,因子分析,分散分析を行った。
結 果
因子分析によって多面的感情状態尺度を構成する8因子を抽出した。抽出した因子の因子得点を従属変数(制作前・後),コラージュ親和性(高・低),切片数(多・少),出来(高・低),性別(男・女)を独立変数にし,2要因混合の分散分析を行った。分析の結果,いずれも活動的快,親和,敵意,抑うつ・不安因子の制作前後の主効果が認められ,活動的快,親和はコラージュ制作によって有意に上昇,敵意,抑うつ・不安,非活動的快は有意に低下することが分かった(p<.05)。また,切片数の分析では非活動的快のみ交互作用が示され,切片数多群のみコラージュ制作によって非活動的快得点の有意な低下することが示され(p<.01),出来の分析においては,活動的快,倦怠因子において出来の主効果が認められ,活動的快は出来の高群の得点が高く,倦怠は出来の低群の得点が高い結果となった(p<.01)。
考 察
本研究ではコラージュ制作によって,ポジティブ,ネガティブな気分要因が有意に変化することが明らかになった。しかし,性別,出来,コラージュ親和性,切片数が,コラージュ制作による気分変化に与える影響を十分に説明することはできなかった。臨床場面のみならず健常者の教育や生活場面でのコラージュ制作は,ポジティブ気分の向上やネガティブ気分の低下に応用できると考えられる。
コラージュ(collage)とは,素材を切り貼りして作る美術技法の一つである。近年では臨床場面においてコラージュを利用した研究が進められており,また,健常者を対象とした研究においてはコラージュ制作により好ましい気分の変化が見られたとの報告もある(井上,2011)。本研究においては,コラージュ制作による気分の変化に影響を与える要因として,従来の研究では素材が統一されていなかった点を修正し予備研究により今回の研究では同一素材を用いて検討した。また,コラージュへの親和性に着目し,参加者のコラージュ親和性の程度が,コラージュ制作後の気分変化に及ぼす影響を検討した。さらに,従来の研究において検討が不十分と考えられる性差や,コラージュ制作に使用した切り抜き数(以下,切片数),制作したコラージュに対する参加者の評価(以下,出来)が気分変化にどのような影響を与えるかについて検討することにした。
方 法
参加者 心身に異常のない健常な大学生33名(男:16名,女:17名)を対象とした。
予備調査 コラージュ素材の選定に当たって宮澤(2003)の研究を参考にし,予備調査を行った。7つのカテゴリー,計140枚の画像について,岡田(1984)の研究において用いられたSD法による評価を行った。収集したデータはカテゴリーごとに因子分析を行い,各カテゴリーにおいて因子説明率が高い画像10枚ずつ,計70枚を本研究の素材として使用することにした。
材料 ハサミ,のり,台紙(B4相当の画用紙)および,予備調査で選定した画像70枚を実験材料として使用した。
質問紙 多面的感情尺度短縮版(寺崎他,1991)によって気分変化を測定した。また,コラージュ親和性,制作したコラージュに関する評価項目を作成し測定した。
手続き 実験はH大学文学部心理学科の倫理委員会の承認の得た上で行った(承認番号:15-0056)。すべての実験は個別に行い,実験時間は約60分であった。コラージュ制作にあたっては,参加者に事前にいくつかのコラージュ作品を例示しながら説明教示を行った。質問紙測定はコラージュ制作前後に行った。制作前には性別・年齢,コラージュ親和性,多面的感情尺度短縮版を測定し,制作後には,制作したコラージュに対する出来,多面的感情尺度短縮版の再度の測定を行った。
分析 SPSS Ver.23(日本IBM)を使用し,因子分析,分散分析を行った。
結 果
因子分析によって多面的感情状態尺度を構成する8因子を抽出した。抽出した因子の因子得点を従属変数(制作前・後),コラージュ親和性(高・低),切片数(多・少),出来(高・低),性別(男・女)を独立変数にし,2要因混合の分散分析を行った。分析の結果,いずれも活動的快,親和,敵意,抑うつ・不安因子の制作前後の主効果が認められ,活動的快,親和はコラージュ制作によって有意に上昇,敵意,抑うつ・不安,非活動的快は有意に低下することが分かった(p<.05)。また,切片数の分析では非活動的快のみ交互作用が示され,切片数多群のみコラージュ制作によって非活動的快得点の有意な低下することが示され(p<.01),出来の分析においては,活動的快,倦怠因子において出来の主効果が認められ,活動的快は出来の高群の得点が高く,倦怠は出来の低群の得点が高い結果となった(p<.01)。
考 察
本研究ではコラージュ制作によって,ポジティブ,ネガティブな気分要因が有意に変化することが明らかになった。しかし,性別,出来,コラージュ親和性,切片数が,コラージュ制作による気分変化に与える影響を十分に説明することはできなかった。臨床場面のみならず健常者の教育や生活場面でのコラージュ制作は,ポジティブ気分の向上やネガティブ気分の低下に応用できると考えられる。