The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PH(65-88)

ポスター発表 PH(65-88)

Mon. Oct 10, 2016 1:00 PM - 3:00 PM 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PH80] 女子短大生に対するグループワークプログラム実践の試み(4)

松原耕平1, 猪澤歩2, 森際孝司3, 本岡寛子4, 大対香奈子5, 藤田昌也#6, 三田村仰#7, 林敬子8 (1.みどりトータルヘルス研究所, 2.みどりトータルヘルス研究所, 3.京都光華女子大学短期大学部, 4.近畿大学, 5.近畿大学, 6.みどりトータルヘルス研究所, 7.立命館大学, 8.みどりトータルヘルス研究所)

Keywords:キャリア教育, 大学生

問   題
 厚生労働省(2007)は若年者就職基礎能力として意思疎通・協調性・自己表現力の必要性をあげ,より具体的なコミュニケーション能力の育成を求めている。高岡ら(2014)は,女子大学生に対して社会的スキルおよび問題解決を体験的に学ぶグループワークプログラムを実践し,各スキルの向上に役立てた。しかし,高岡ら(2014)はスキルの獲得がどういった適応に影響するのか検討することができておらず,長期的な効果も検討できていない。そこで本研究では,プログラムの長期的な効果と各セッションがストレス反応に及ぼす影響を検討することにした。
方   法
対象者:女子大学生15名(平均年齢18.73歳,SD = 0.59)。
プログラムの概要:本プログラムは各180分,全15回で構成され(高岡ら,2014),X年9月~X+1年1月の講義時間内に実施した。第1回は心理教育を行い,第2回~第9回は社会的スキル,第10回~第15回は問題解決スキルを中心に扱った。
測定尺度:①大学生活充実度(奥田ら,2010),②成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田,2005),③大学生活充実感尺度(坂柳,1997),④Problem Solving Inventory 邦訳版(丸山ら,1995),⑤女子大学生ストレス反応尺度(金子・関根,2006)を使用した。
測定時期:ストレス反応尺度のみ毎セッションに測定を実施し,その他の尺度は第2セッション(介入前)と第15セッション(介入後),プログラム終了3か月後(フォローアップ:FU)に行った。
結   果
1.介入前後とFUのプログラム効果(Table 1)
 分析はFUまでに回答に誤りがなかった9名を対象とした。介入前後とFUの得点をもとにFriedman検定を行った。社会的スキルでは,関係開始,主張性,社会的スキル総得点に有意傾向がみられた(p < .10)。そこで,単純主効果の検定を行ったところ,関係開始は介入後からFUまでに有意に増加する傾向にあり,介入前よりFUの得点は有意に高い傾向にあった(p < .10)。主張性は介入前からFUにかけて有意に増加しており(p < .05),社会的スキル総得点は介入前からFUにかけて有意に増加する傾向にあった。大学生活充実度では下位尺度であるフィット感と不安について有意傾向がみられた(p < .10)。フィット感では介入後からFUにかけて有意に増加する傾向にあり,FUの得点は介入前より有意に高かった(p < .05)。不安の得点は,介入後からFUにかけて有意に減少しており(p < .05),FUの得点は介入前より有意に低い傾向にあった(p < .10)。問題解決と充実感に有意な差はみられなかった。
2.各セッションがストレス反応に及ぼす影響
 分析は欠損値の補正を行った15名を対象とした(Last Observation Carried Forward法, Gillings & Koch, 1991)。
 各セッションのストレス反応の得点をもとにFriedman 検定を行った。抑うつ反応では有意でなかった。意欲減退反応(p < .05)では有意な差がみられ,対人的反応(p < .10)では有意な傾向がみられた。そこで,介入前とそれ以降のセッションの比較を行ったところ,意欲減退反応では第3・13セッション時は介入前より有意に得点が低い傾向にあり(p < .10),第5・7・8・9および第14・15セッションでは介入前より有意に得点が低かった(p < .01-.05)。一方で,対人的反応では,介入前より第12・13セッションは有意に得点が低い傾向にあり(p < .10),第14・15セッションでは有意に得点が低かった(p < .05)。
考   察
 結果から,問題解決と学校充実感に明確な効果はみられなかったが,プログラムによって社会的スキルの向上や大学生活の不安感の解消,フィット感の増加につながることが明らかとなった。また,プログラムは全体を通して,女子学生の意欲の減退を漸減させ,問題解決スキルの向上をねらったセッションでは対人的なストレスを改善させ得ることが示された。しかし,対象者が9名と少ないことから,プログラムの効果がほかの大学生にまで一般化できるか判断するには慎重にならなければならない。