日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PB(01-83)

ポスター発表 PB(01-83)

2017年10月7日(土) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PB27] 中学校での協同学習が自己効力感並びに友人との学習活動に及ぼす影響

内的作業モデルから見た効果検証

川野敬子1, 鎌田次郎2, 谷向みつえ3 (1.関西福祉科学大学, 2.関西福祉科学大学, 3.関西福祉科学大学)

キーワード:協同学習, 自己効力感, 内的作業モデル

目   的
 近年,子どもたちにとって学力の低下以上に深刻なのは学習意欲や学習スキルなど学習力の低下と指摘されている(市川2004)。中学校では不登校や自殺,いじめや学級崩壊,行動問題などの問題が山積し,生徒の自己効力感の低下も懸念されている。本研究では友人との協同学習が自己効力感の向上の一助になると考え効果を検証する。また,その効果はIWM(内的作業モデル)の関係性の質に影響を受けるかについても検討する。
方   法
1.調査対象及び手続き:A公立中学校1年生4クラス(N=127)の内,2クラスに一斉授業(国語)を,他の2クラスに協同学習(ペア思考や対話的交流を導入したグループと一斉授業のスイッチ型)を研究者が9回ずつ実施した。9回の授業の前後に,全員を対象に質問紙調査を行った。
2.調査内容:(1)友人との学習活動尺度(岡田,2008),(2)児童用一般性セルフ・エフィカシー尺度(福井,2008),(3)中学生用内的作業モデル(IWM)尺度(粕谷・河村,2005)。
結   果
1.協同学習群と一斉学習群との効果の違い 
 協同学習群と一斉学習群に,9回授業の前後で学習活動尺度と自己効力感尺度の平均値に差があるかどうかを検討したところ,一斉授業群は全ての尺度において変化はなかった。一方,協同学習群は学習活動の「援助要請」(t(65)=-3.54, p<.01)と「提供」(t(65)=-3.47, p<.01)に有意差が認められた。また,自己効力感の「チャレンジ精神」(t(65)=-2.23, p<.05)と「総合点」(t(65)=-2.13, p<.05)でも有意差が認められた。
2.自己効力感・学習活動と内的作業モデルの相関
 IWM尺度と,友人との学習活動,自己効力感の相関分析を行った〈Table1・Table2〉。IWM安定
得点は,友人との学習尺度とも自己効力感尺度とも有意な相関が認められた。
 アンビバレント得点は,友人との学習活動尺度とは相関は認められなかったが,自己効力感とは何れも負の相関が認められた。
 回避得点は,友人との学習活動の「援助要請」,および自己効力感の「総合点」,「安心感」に負の相関が認められたが,「チャレンジ精神」には認められなかった。
考   察
 一斉学習に比して協同学習は,友人との援助的関わりが促進され,自己効力感が高まる効果が認められた。また,IWM安定得点が高いと,友人との学習活動が積極的で,自己効力感も高い傾向が示された。一方,アンビバレント得点が高いと安心感やチャレンジ精神など自己効力感が全般に低くなる傾向が示された。さらに回避得点が高いと友人との学習活動において援助要請が低く,自己効力感の安心感や総得点も低くなる傾向が示された。