15:30 〜 17:30
[PC08] 児童期の情動発達とその特異性に関する研究3
「気になる」児童の行動特性と表情および言葉による情動表現との関連
キーワード:情動発達, 児童, 「気になる」子
問題と目的
本研究は,幼児期・児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。本報告では,小学生の情動発達とその特異性に関する調査の結果に基づき,「気になる」児童の行動特性と表情および言葉による情動表現との関連を明らかにすることを目的とした。
方 法
1.調査対象:研究1に同じ。このうち,本報告では「気になる」児童1071名(男児848名,女児223名)のデータを分析した。
2.調査時期:研究1に同じ。
3.調査内容:(1)情動発達:研究1に同じ。このうち,〈表情による表現〉は「喜んでいることを表情で表現する」「怒っていることを表情で表現する」「悲しんでいることを表情で表現する」の3項目だった。〈言葉による表現〉は「喜んでいることを言葉で表現する」「怒っていることを言葉で表現する」「悲しんでいることを言葉で表現する」の3項目だった。(2)行動特性:研究1に同じ。このうち,本報告では研究2で抽出された3つの因子(【行動調整の困難さ】【ASD傾向】【学校適応の困難さ】)の項目を用いて,各因子の項目の平均得点が3未満を低群,3以上を高群として群分けを行った。
結果と考察
1.行動調整の困難さの程度と表情による表現との関連:〈表情による表現〉の得点について,行動調整の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,行動調整の困難さの程度の主効果であり(p<.001),低群よりも高群のほうが〈表情による表現〉の得点が高かった。
2.行動調整の困難さの程度と言葉による表現との関連:〈言葉による表現〉の得点について,行動調整の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,行動調整の困難さの程度の主効果が有意であり(p<.001),低群よりも高群のほうが〈言葉による表現〉の得点が高かった。
3.ASD傾向の程度と表情による表現との関連:〈表情による表現〉の得点について,ASD傾向の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,ASD傾向の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)がそれぞれ有意であり,〈表情による表現〉の得点は高群よりも低群のほうが高く,また女児よりも男児のほうが高かった。
4.ASD傾向の程度と言葉による表現との関連:〈言葉による表現〉の得点について,ASD傾向の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,ASD傾向の程度の主効果(p<.001)および性の主効果(p<.01)がそれぞれ有意だった。また,ASD傾向の程度と性の交互作用も有意だった(p<.05)。単純主効果検定の結果,高群では女児よりも男児のほうが〈言葉による表現〉の得点が有意に高かったのに対して,低群では性差はみられなかった。
5.学校適応の困難さの程度と表情による表現との関連:〈表情による表現〉の得点について,学校適応の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,学校適応の困難さの程度(p<.05)および性の主効果(p<.01),学校適応の困難さの程度と性の交互作用(p<.05)がそれぞれ有意だった。単純主効果検定の結果,高群では女児よりも男児のほうが〈表情による表現〉の得点が有意に高かったのに対して,低群では性差はみられなかった。また,女児では高群よりも低群のほうが有意に高かったのに対して,男児では群による差はみられなかった。
6.学校適応の困難さの程度と言葉による表現との関連:〈言葉による表現〉の得点について,学校適応の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,性の主効果(p<.05)が有意であり,〈言葉による表現〉の得点は女児よりも男児のほうが有意に高かった。
*なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。
本研究は,幼児期・児童期における情動発達のアセスメント・スケールを開発することを目的とした研究の一部である。本報告では,小学生の情動発達とその特異性に関する調査の結果に基づき,「気になる」児童の行動特性と表情および言葉による情動表現との関連を明らかにすることを目的とした。
方 法
1.調査対象:研究1に同じ。このうち,本報告では「気になる」児童1071名(男児848名,女児223名)のデータを分析した。
2.調査時期:研究1に同じ。
3.調査内容:(1)情動発達:研究1に同じ。このうち,〈表情による表現〉は「喜んでいることを表情で表現する」「怒っていることを表情で表現する」「悲しんでいることを表情で表現する」の3項目だった。〈言葉による表現〉は「喜んでいることを言葉で表現する」「怒っていることを言葉で表現する」「悲しんでいることを言葉で表現する」の3項目だった。(2)行動特性:研究1に同じ。このうち,本報告では研究2で抽出された3つの因子(【行動調整の困難さ】【ASD傾向】【学校適応の困難さ】)の項目を用いて,各因子の項目の平均得点が3未満を低群,3以上を高群として群分けを行った。
結果と考察
1.行動調整の困難さの程度と表情による表現との関連:〈表情による表現〉の得点について,行動調整の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,行動調整の困難さの程度の主効果であり(p<.001),低群よりも高群のほうが〈表情による表現〉の得点が高かった。
2.行動調整の困難さの程度と言葉による表現との関連:〈言葉による表現〉の得点について,行動調整の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,行動調整の困難さの程度の主効果が有意であり(p<.001),低群よりも高群のほうが〈言葉による表現〉の得点が高かった。
3.ASD傾向の程度と表情による表現との関連:〈表情による表現〉の得点について,ASD傾向の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,ASD傾向の程度の主効果(p<.01)および性の主効果(p<.01)がそれぞれ有意であり,〈表情による表現〉の得点は高群よりも低群のほうが高く,また女児よりも男児のほうが高かった。
4.ASD傾向の程度と言葉による表現との関連:〈言葉による表現〉の得点について,ASD傾向の程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,ASD傾向の程度の主効果(p<.001)および性の主効果(p<.01)がそれぞれ有意だった。また,ASD傾向の程度と性の交互作用も有意だった(p<.05)。単純主効果検定の結果,高群では女児よりも男児のほうが〈言葉による表現〉の得点が有意に高かったのに対して,低群では性差はみられなかった。
5.学校適応の困難さの程度と表情による表現との関連:〈表情による表現〉の得点について,学校適応の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,学校適応の困難さの程度(p<.05)および性の主効果(p<.01),学校適応の困難さの程度と性の交互作用(p<.05)がそれぞれ有意だった。単純主効果検定の結果,高群では女児よりも男児のほうが〈表情による表現〉の得点が有意に高かったのに対して,低群では性差はみられなかった。また,女児では高群よりも低群のほうが有意に高かったのに対して,男児では群による差はみられなかった。
6.学校適応の困難さの程度と言葉による表現との関連:〈言葉による表現〉の得点について,学校適応の困難さの程度(2)×性(2)の2要因の分散分析を行った。その結果,性の主効果(p<.05)が有意であり,〈言葉による表現〉の得点は女児よりも男児のほうが有意に高かった。
*なお,本研究は科学研究費補助金(基盤研究B)「幼児期・児童期の情動発達アセスメント・スケールの開発と保育・教育への応用」(研究代表:本郷一夫)の助成を受けて行われた。