10:00 〜 12:00
[PG58] 牛乳嫌いの幼児に対する改善の取り組み1
家庭における保護者の対応
キーワード:牛乳, 偏食, 保護者
はじめに
多くの幼稚園,保育所で,給食やおやつの時間に子どもに牛乳が提供されているが,牛乳が嫌いで飲めない子どもがいる。牛乳は毎日のように出されるものであり,飲めないことで給食やおやつの時間を憂うつに感じている子どもがいる。
そこで本研究では,幼児の中で牛乳嫌いの子どもがどの程度いるのか,牛乳嫌いの理由は何か,牛乳嫌いの子どもに対して家庭で保護者はどのような取り組みを行っているのかなどを明らかにし,牛乳嫌いを改善するための指導プログラムを作成するための基礎的資料を得たいと考えた。
方 法
(1)調査対象者
茨城県内,埼玉県内,栃木県内の各1か所で開催された幼児を持つ保護者を対象にした講演会に参加した416名。なお,調査対象者には牛乳アレルギーの子どもを持つ者を除いた。
(2)調査手続き
無記名による自記式の質問紙調査を実施した。なお,回答は幼稚園, 保育所に通っている幼児(複数いる場合には年長の幼児)1人について答えてもらった。調査時期は,2016年6~7月であった。
結 果
子どもが牛乳を好むかどうかを尋ねたところ,23%(95名)が「嫌い」答えた。牛乳嫌いの子どもをもつ95名を対象に,その子どもの特性として9つの特性のうちであてはまるものを選択してもらった結果,「特に気になることはない」と答えた者は23%のみであり,「牛乳以外の食べ物についても偏食が多い」(36%),「こだわりがある」(31%),「感覚過敏がある」(27%),「いつもと違う状況があると,とまどう」(23%)といった自閉症スペクトラムの子どもにしばしばみられる特徴があると答える者がいた。
牛乳が嫌いな理由を尋ねたところ,「においや味が嫌そう」という回答が71%で最も多かった。「においや味が嫌そう」と答えた者に,子どもに「感覚過敏」の特徴があるかどうかを確認したところ,そのうちの34%が「ある」と答えた。また,「白い飲み物や食べ物が嫌い」という回答が少数ながらあった(6%)。これらのことから,牛乳嫌いの子どもが牛乳を嫌う背景として,自閉症スペクトラムの傾向が関係している可能性があることが示唆された。
牛乳嫌いを改善させるために,家庭でどのようなことを試したかを尋ねたところ,「牛乳を使用した料理(グラタンやホワイトシチューなど)を作って子どもが牛乳の味に慣れるようにした」(68%),「ココア味やイチゴ味などの牛乳調味品を入れた」(63%),「牛乳は身体にいいことを子どもに教えた」(59%),「牛乳をおいしそうに飲む様子を子どもに見せた」(51%)という対応を半数以上の家庭で行っていた。
牛乳嫌いを改善するための対応をした者に対して,それぞれの対応がどの程度の効果があったかを5段階のリッカート尺度で尋ねた(5点に近い方が効果を感じられたことを示す)。その結果,「ココア味やイチゴ味などの牛乳調味品を入れた」対応は,すべての対応のなかで最も得点が高かったが,平均値は3.75にすぎなかった。また,「一口飲むことから練習し,徐々に飲む量を増やした」(M=2.73),「牛乳は身体にいいことを子どもに教えた」(M=2.48),「牛乳をおいしそうに飲む様子を子どもに見せた」(M=2.26),「牛乳を飲むときの容器を変えた」(M=1.60),「味やにおいが比較的気にならない牛乳を探して飲ませた」(M=2.19)といった対応は効果があまり感じられていなかった。
付記:本研究は平成28年度一般社団法人Jミルク「食と教育学術研究」の助成を受けて行った。
多くの幼稚園,保育所で,給食やおやつの時間に子どもに牛乳が提供されているが,牛乳が嫌いで飲めない子どもがいる。牛乳は毎日のように出されるものであり,飲めないことで給食やおやつの時間を憂うつに感じている子どもがいる。
そこで本研究では,幼児の中で牛乳嫌いの子どもがどの程度いるのか,牛乳嫌いの理由は何か,牛乳嫌いの子どもに対して家庭で保護者はどのような取り組みを行っているのかなどを明らかにし,牛乳嫌いを改善するための指導プログラムを作成するための基礎的資料を得たいと考えた。
方 法
(1)調査対象者
茨城県内,埼玉県内,栃木県内の各1か所で開催された幼児を持つ保護者を対象にした講演会に参加した416名。なお,調査対象者には牛乳アレルギーの子どもを持つ者を除いた。
(2)調査手続き
無記名による自記式の質問紙調査を実施した。なお,回答は幼稚園, 保育所に通っている幼児(複数いる場合には年長の幼児)1人について答えてもらった。調査時期は,2016年6~7月であった。
結 果
子どもが牛乳を好むかどうかを尋ねたところ,23%(95名)が「嫌い」答えた。牛乳嫌いの子どもをもつ95名を対象に,その子どもの特性として9つの特性のうちであてはまるものを選択してもらった結果,「特に気になることはない」と答えた者は23%のみであり,「牛乳以外の食べ物についても偏食が多い」(36%),「こだわりがある」(31%),「感覚過敏がある」(27%),「いつもと違う状況があると,とまどう」(23%)といった自閉症スペクトラムの子どもにしばしばみられる特徴があると答える者がいた。
牛乳が嫌いな理由を尋ねたところ,「においや味が嫌そう」という回答が71%で最も多かった。「においや味が嫌そう」と答えた者に,子どもに「感覚過敏」の特徴があるかどうかを確認したところ,そのうちの34%が「ある」と答えた。また,「白い飲み物や食べ物が嫌い」という回答が少数ながらあった(6%)。これらのことから,牛乳嫌いの子どもが牛乳を嫌う背景として,自閉症スペクトラムの傾向が関係している可能性があることが示唆された。
牛乳嫌いを改善させるために,家庭でどのようなことを試したかを尋ねたところ,「牛乳を使用した料理(グラタンやホワイトシチューなど)を作って子どもが牛乳の味に慣れるようにした」(68%),「ココア味やイチゴ味などの牛乳調味品を入れた」(63%),「牛乳は身体にいいことを子どもに教えた」(59%),「牛乳をおいしそうに飲む様子を子どもに見せた」(51%)という対応を半数以上の家庭で行っていた。
牛乳嫌いを改善するための対応をした者に対して,それぞれの対応がどの程度の効果があったかを5段階のリッカート尺度で尋ねた(5点に近い方が効果を感じられたことを示す)。その結果,「ココア味やイチゴ味などの牛乳調味品を入れた」対応は,すべての対応のなかで最も得点が高かったが,平均値は3.75にすぎなかった。また,「一口飲むことから練習し,徐々に飲む量を増やした」(M=2.73),「牛乳は身体にいいことを子どもに教えた」(M=2.48),「牛乳をおいしそうに飲む様子を子どもに見せた」(M=2.26),「牛乳を飲むときの容器を変えた」(M=1.60),「味やにおいが比較的気にならない牛乳を探して飲ませた」(M=2.19)といった対応は効果があまり感じられていなかった。
付記:本研究は平成28年度一般社団法人Jミルク「食と教育学術研究」の助成を受けて行った。