日本教育心理学会第59回総会

講演情報

ポスター発表 PH(01-78)

ポスター発表 PH(01-78)

2017年10月9日(月) 13:00 〜 15:00 白鳥ホールB (4号館1階)

13:00 〜 15:00

[PH06] 幼児初期における「じぶん」の認識について

鏡像反応の縦断的分析から(その2)

高木玉江 (大阪健康福祉短期大学)

キーワード:鏡像反応, 自己認識, 発達

 乳幼児時期に自己を認識していくことについての研究はこれまでにマークテストと言う手法が行われてきた(百合本,木下,加藤)。鏡に映った自分「自己」の認識の研究は,3か月~24か月までの子どもを追跡調査した研究がある。それは,1歳前半に,鏡像を傾ける傾向が現れ,18か月頃に,自分の体に向かった反応がようやく現れる。その後,鏡像と自己とを同一視していることが認められた。そして,2歳までにはほぼ75%の割合で認識できマークをとることができた。また,鏡像での自己認知が段階的に進むことも明らかにしている(Gallp,1970:Zazzo1993)。しかし,鏡像反応がどのような経過を経て認知していくということは未だ研究も少ない。鏡に映る「じぶん」に気づいていくということは1歳をすぎ頃から,鏡を注視するだけでなく探索する時期をすぎ,1歳半から,2歳にかけて鏡映像を「じぶん」であると認知し,何度も振り返るなど意識する時期である。そこで,横断研究(高木2016)を行い検証した。方法として鏡像反応を5つのパターンに分け分析を行った。パターン分析を行った結果パターン2とパターン3の反応間に多様な反応が見られ,質的な変化があった。これを基に今回の研究は,個人の鏡像反応の経過を検証する為,生活年齢を追い縦断的に実験を行った。
目   的
 自己の存在の認知が始まる1歳前半から実験を始め,特に変化があるといわれる18か月から24か月を中心に実験回数を増やし,31か月までの自己認知の変化と鏡像反応との関連性について焦点をあて縦断的に実験を行った。
方法:縦断的に数回実験を行った
対象児童:保育園在籍の14か月から31か月までの6名
手 続 き
 児童の額に赤いシールを貼り行動反応を記録。VHSで行動回数と試行数,発声言語を録画し,データを作成して分析した。
場所:京都市内の保育園で1人20分程度の実験を行った。認知発達との相関をみるため新版K式発達検査2001の課題も行った。
結   果
 鏡像反応を5パターンに分け分析した。鏡像反応をパターン分析する際,注視は15秒以上鏡を見ていることを条件とした。H児の23か月の時の反応は鏡を見るが注視ではなく,鏡を見て直ぐに鏡を避けるが,再び鏡を触る行動が見られた。
注視反応が無く,パターン分析の中に位置づかない行動もみられたため,注視行動が無いパターン5と鏡を叩くことが見られたパターン4との間に位置づけ,Table1に示したようにP4とP5の間に反応パターンとしてパターン4.5とした。パターン反応が見られ,尚且つ鏡を避ける反応を示した
パターンは★マークをFig.1に示した。
1歳前半ではパターン(以降Pで示す)P4,P3の反応が同じ割合で多くP5もあるが少ない反応パターンになった。しかし,18か月から20か月ではP3が8割の反応を示した。18か月でP5の反応があったが,1歳前半のP5の反応とは違い,わざと鏡を避ける行為であるため反応がないP5だった。21か月から23か月では,P4からP1の反応だった。この時期,多様なパターン反応と鏡を避ける反応が多かった。24か月から29か月まではP3とP5になった30か月以降はP1でマークを取る反応が示された。縦断の経過として,P4→P5→P4.5★→P1またはP3→P3→P1とP5→P1の方に進んでいく反応があった。H児,M児,MA児は,月齢が進むにつれ,反応が増えるが,一旦減る反応があり,また増えていく反応があった。
考   察
 生活年齢が進むと,鏡像反応のパターン5からパターン1の方に進む傾向があり,鏡を避け
る反応後は,パターンの変化がみられる傾向がある。同じ1歳後半であっても多様なパターンが見られた。鏡像反応には個人差がかなりあり,パターンが変化するスピードも個人差があることが分かった。これは,社会的経験と発達年齢との関連性が大きいのではないかと思われる。