[PA16] 科学技術の社会問題に対する公共的な提言を目指した授業の評価
スギ花粉症緩和米の是非をめぐる意見の協調に着目して
キーワード:科学技術の社会問題, 公共的な提言, 意見の協調
問題・目的
現在,科学技術の社会問題を導入した教育が,科学リテラシー育成の観点から注目されている。多様な立場が関与する社会問題では,様々な賛否の意見を俯瞰的に捉え,合意を目指した意見の協調を行うことが必要である。本研究では,意見の協調に注目し,科学技術の社会問題に対する公共的な提言を目指した授業の成果を評価する。
方 法
参加者:文系大学生12名(男性7名,女性5名)。
実験授業:科学技術の社会問題に対する公共的な提言の創出を目指した。遺伝子組換えによるスギ花粉症緩和米をテーマに,賛否の意見を比較し,論点を抽出して対立構造を解明し,意見の協調に向けた解決策を考案した。3年次配当,全14回。
課題:社会に向けた提案を行うとの設定で,スギ花粉症緩和米についての意見文を自由記述させた。授業の開始時と最終回に,集団で実施した。
分析:まず,意見文の各セグメントが,賛否の意見に含まれる7つの論点(治療法,遺伝子組換え技術の利用,環境,医療費,副作用,経済的利益,地域活性化)のどれに言及しているものかを同定した。続いて,論点ごとに,Table 1の定義に従って意見の協調のレベルを評定し,もっとも高いレベルを分析データとした。
結果・考察
1.意見文で扱われた論点
プレ,ポストテストにおける各論点への言及率をFigure 1に示す。参加者が記述した論点数の平均値は,プレテスト3.9(SD=1.08),ポストテスト4.9(SD=.90)であり,授業の前後で有意に増加した(t(11)=3.07, p<.05)。
2.意見の協調
各テストでのレベル分布をTable 2に示す。ポストテストでは,参加者全体で,方向性8件,賛成のための条件5件,代替策11件が記述された(平均2.0件(SD=1.04)/人)。授業の前後でレベルの有意な向上が認められ(T=78.00, p<.01),参加者の意見文が,持論補強型の記述から意見の協調を目指した提言型の記述に変化したことが示された。
3.結論
実験授業を通し,参加者は,当該テーマに対して,より多角的な視点から思考するとともに,賛否の意見を協調させて合意を目指すような意見文を記述できるようになり,授業の効果が示された。
付 記
JSPS科研費(17H01979,15K12381)の助成ならびに所属の研究倫理審査委員会の承認を受けた。
現在,科学技術の社会問題を導入した教育が,科学リテラシー育成の観点から注目されている。多様な立場が関与する社会問題では,様々な賛否の意見を俯瞰的に捉え,合意を目指した意見の協調を行うことが必要である。本研究では,意見の協調に注目し,科学技術の社会問題に対する公共的な提言を目指した授業の成果を評価する。
方 法
参加者:文系大学生12名(男性7名,女性5名)。
実験授業:科学技術の社会問題に対する公共的な提言の創出を目指した。遺伝子組換えによるスギ花粉症緩和米をテーマに,賛否の意見を比較し,論点を抽出して対立構造を解明し,意見の協調に向けた解決策を考案した。3年次配当,全14回。
課題:社会に向けた提案を行うとの設定で,スギ花粉症緩和米についての意見文を自由記述させた。授業の開始時と最終回に,集団で実施した。
分析:まず,意見文の各セグメントが,賛否の意見に含まれる7つの論点(治療法,遺伝子組換え技術の利用,環境,医療費,副作用,経済的利益,地域活性化)のどれに言及しているものかを同定した。続いて,論点ごとに,Table 1の定義に従って意見の協調のレベルを評定し,もっとも高いレベルを分析データとした。
結果・考察
1.意見文で扱われた論点
プレ,ポストテストにおける各論点への言及率をFigure 1に示す。参加者が記述した論点数の平均値は,プレテスト3.9(SD=1.08),ポストテスト4.9(SD=.90)であり,授業の前後で有意に増加した(t(11)=3.07, p<.05)。
2.意見の協調
各テストでのレベル分布をTable 2に示す。ポストテストでは,参加者全体で,方向性8件,賛成のための条件5件,代替策11件が記述された(平均2.0件(SD=1.04)/人)。授業の前後でレベルの有意な向上が認められ(T=78.00, p<.01),参加者の意見文が,持論補強型の記述から意見の協調を目指した提言型の記述に変化したことが示された。
3.結論
実験授業を通し,参加者は,当該テーマに対して,より多角的な視点から思考するとともに,賛否の意見を協調させて合意を目指すような意見文を記述できるようになり,授業の効果が示された。
付 記
JSPS科研費(17H01979,15K12381)の助成ならびに所属の研究倫理審査委員会の承認を受けた。