[PA19] 協同的な意識・態度と自己調整学習との関係の検討
キーワード:自己調整学習, 協同学習
目 的
学習指導要領の改訂により,主体的・対話的で深い学びが求められている。このことに関連して有用と考えられる心理学上の理論として,自己調整学習の理論があげられる。Schunk & Zimmerman(1998)(塚野州 訳,2007)は,「自己調整」とは,一般的には「学習者が,メタ認知,動機づけ,および行動において,自分自身の学習過程に能動的に関与している事」として捉えている。三輪(2003)によれば,「メタ認知」とは「自分自身の認知的活動に対する認知」のことである。「動機づけ」とは,自己調整学習者が,自分自身を,有能さ,自己効力,自律性を有するものとして認知している事を意味する「行動」については,自己調整学習者が,学習を最適なものにする社会的・物理的環境を自ら選択し,構成し,創造していくことを指している。以上のように,自己調整学習とは,メタ認知,動機づけ,行動の面で,自己調整の機能を働かせながら進められる学習のあり方のことをいう。つまり,自己調整学習は他者からの働きかけによる受動的な学習ではなく,学習者自身により主体的に進められる学習である。
学校教育において,自律性の高い動機づけにもとづき,自らの学習を制御する自己調整学習ができる児童・生徒を育てていくためには,動機づけについての考えとともに,メタ認知についての考えも深める必要がある。三宮(2008)によると,メタ認知的活動は,学習活動の事前段階(課題の困難度を評価し,目標設定,計画立案,方略選択を行う),遂行段階(課題の困難度を再評価,課題遂行や方略の点検,課題達成の予想と実際のズレを感知し,目標修正,計画修正,方略変更を行う),事後段階(課題達成度を評価,成功や失敗の原因分析をし,次回に向けて目標再設定,再計画,方略再選択を行う)の三段階に渡って行われる。したがって,学習計画を立てても遂行できない学習者が,実現性のある学習計画を立案・実行できるように支援するためには,メタ認知を育成する必要があり,そのためには学習活動の全段階におけるメタ認知的活動を促すことが有効であると考えられる。
メタ認知を適切に働かせるためには,他者との協同の視点が重要である。本研究では,協同的な意識や態度と自己調整学習との関係を検討し,自己調整学習の育成において,協同的な学習をどのように取り入れていくべきかについて考察する。
方 法
研究協力者 調査協力者は,H県の公立中学校1校の中学2年生78名(男子42名,女子36名)であった。有効回答者数は76名(男子40名,女子36名)であった。
調査材料 自己調整学習尺度と協同的意識態度尺度を用いた。前者については,皆川(2015)を参考にして,32項目から成る「自己調整学習尺度」を作成した。本尺度は,下記の3つの下位尺度から成る。「動機づけ」は,①内的調整,②同一化調整,③取り入れ的調整,④外的調整の4因子である。「学習方略」は,①リハーサル,②精緻化,③メタ認知,外的リソースの4因子である。後者については,中学生を対象として実施した自由記述による調査の結果をもとに,14項目から成る「協同学習に対する意識・態度尺度」を作成した。この尺度は,下記の2つの因子から成る。①協同志向因子,②協同効用因子の2因子である。
結果および考察
協同的な意識・態度と自己調整学習尺度の相関係数を算出したところ,下記の結果が得られた。
動機づけについては,協同志向と内的調整の間に高い相関があり,同一化調整との間に中程度の相関があった。協同効用因子については,同一化調整との間に高い相関があり,内的調整との間に中程度の相関があった。あった。また,協同志向と取り入れ的調整との間に中程度の相関があり,協同効用と外的調整との間に低い相関があった。
学習方略については,協同志向については,精緻化方略,メタ認知方略および外的リソース方略との間にやや高い相関があった。協同効用については,精緻化方略,メタ認知方略および外的リソース方略との間にやや高い相関があり,リハーサル方略とも低い相関があった。
総合論議
本研究の結果,協同傾向の高低によって生徒の学習の質が異なることが明らかとなった。この結果は,それぞれの動機づけに基づいた指導を実践するにあたり,協同という要素を考慮することの重要性を示唆する。今後は,協同傾向および自己調整学習の進展により動機づけと学習方略がどのように変化するのかを研究していくことに加えて,学習動機に応じた教え方で自己調整学習を修得させる方法と,協同を活用して自己調整学習を深める取り組みについて検討していきたい。
学習指導要領の改訂により,主体的・対話的で深い学びが求められている。このことに関連して有用と考えられる心理学上の理論として,自己調整学習の理論があげられる。Schunk & Zimmerman(1998)(塚野州 訳,2007)は,「自己調整」とは,一般的には「学習者が,メタ認知,動機づけ,および行動において,自分自身の学習過程に能動的に関与している事」として捉えている。三輪(2003)によれば,「メタ認知」とは「自分自身の認知的活動に対する認知」のことである。「動機づけ」とは,自己調整学習者が,自分自身を,有能さ,自己効力,自律性を有するものとして認知している事を意味する「行動」については,自己調整学習者が,学習を最適なものにする社会的・物理的環境を自ら選択し,構成し,創造していくことを指している。以上のように,自己調整学習とは,メタ認知,動機づけ,行動の面で,自己調整の機能を働かせながら進められる学習のあり方のことをいう。つまり,自己調整学習は他者からの働きかけによる受動的な学習ではなく,学習者自身により主体的に進められる学習である。
学校教育において,自律性の高い動機づけにもとづき,自らの学習を制御する自己調整学習ができる児童・生徒を育てていくためには,動機づけについての考えとともに,メタ認知についての考えも深める必要がある。三宮(2008)によると,メタ認知的活動は,学習活動の事前段階(課題の困難度を評価し,目標設定,計画立案,方略選択を行う),遂行段階(課題の困難度を再評価,課題遂行や方略の点検,課題達成の予想と実際のズレを感知し,目標修正,計画修正,方略変更を行う),事後段階(課題達成度を評価,成功や失敗の原因分析をし,次回に向けて目標再設定,再計画,方略再選択を行う)の三段階に渡って行われる。したがって,学習計画を立てても遂行できない学習者が,実現性のある学習計画を立案・実行できるように支援するためには,メタ認知を育成する必要があり,そのためには学習活動の全段階におけるメタ認知的活動を促すことが有効であると考えられる。
メタ認知を適切に働かせるためには,他者との協同の視点が重要である。本研究では,協同的な意識や態度と自己調整学習との関係を検討し,自己調整学習の育成において,協同的な学習をどのように取り入れていくべきかについて考察する。
方 法
研究協力者 調査協力者は,H県の公立中学校1校の中学2年生78名(男子42名,女子36名)であった。有効回答者数は76名(男子40名,女子36名)であった。
調査材料 自己調整学習尺度と協同的意識態度尺度を用いた。前者については,皆川(2015)を参考にして,32項目から成る「自己調整学習尺度」を作成した。本尺度は,下記の3つの下位尺度から成る。「動機づけ」は,①内的調整,②同一化調整,③取り入れ的調整,④外的調整の4因子である。「学習方略」は,①リハーサル,②精緻化,③メタ認知,外的リソースの4因子である。後者については,中学生を対象として実施した自由記述による調査の結果をもとに,14項目から成る「協同学習に対する意識・態度尺度」を作成した。この尺度は,下記の2つの因子から成る。①協同志向因子,②協同効用因子の2因子である。
結果および考察
協同的な意識・態度と自己調整学習尺度の相関係数を算出したところ,下記の結果が得られた。
動機づけについては,協同志向と内的調整の間に高い相関があり,同一化調整との間に中程度の相関があった。協同効用因子については,同一化調整との間に高い相関があり,内的調整との間に中程度の相関があった。あった。また,協同志向と取り入れ的調整との間に中程度の相関があり,協同効用と外的調整との間に低い相関があった。
学習方略については,協同志向については,精緻化方略,メタ認知方略および外的リソース方略との間にやや高い相関があった。協同効用については,精緻化方略,メタ認知方略および外的リソース方略との間にやや高い相関があり,リハーサル方略とも低い相関があった。
総合論議
本研究の結果,協同傾向の高低によって生徒の学習の質が異なることが明らかとなった。この結果は,それぞれの動機づけに基づいた指導を実践するにあたり,協同という要素を考慮することの重要性を示唆する。今後は,協同傾向および自己調整学習の進展により動機づけと学習方略がどのように変化するのかを研究していくことに加えて,学習動機に応じた教え方で自己調整学習を修得させる方法と,協同を活用して自己調整学習を深める取り組みについて検討していきたい。